個人再生のメリット|家や財産を残せる条件と、デメリットとの分かれ目
個人再生のメリットは、次の5つです。住宅ローンを払い続けて家を残せる場合があること、財産を原則として手放さずに進められること、借金の額が大きいほど減る割合が大きいこと、自己破産のような資格の制限が条文上ないこと、借金の理由が浪費やギャンブルでも不認可事由に挙がっていないことです。一方で、収入が続くことが前提で、官報に載るなどの負担もあります。この記事では、残せるものを中心に、それぞれの条件と限界を整理します。
個人再生のメリット5つ
1. 住宅ローンを払い続けて、家を残せる場合がある。 住宅資金特別条項を定めると、住宅ローンは約束どおり払いながら、ほかの借金だけを減らす計画を立てられます。裁判所も、この計画が認められ、それに従って返済すれば住宅を手放さずに済むと説明しています(民事再生法196条〜199条、裁判所「民事事件Q&A」)。自己破産では、持ち家は原則として手放す対象になります。
2. 財産を手放さずに手続きを進められる。 個人再生は、財産を売って配当する手続きではありません。その代わり、財産を処分した場合の額(清算価値)以上を返す決まりがあります。預金や保険を解約して配当に回さなくても、手続きを進められます(財産が多い人は返す額が増えます)。
3. 借金の額が大きいほど、減る幅が大きい。 返す額の下限が、借金の額に応じた最低弁済額で決まるためです。次の節で数字を見ます。
4. 資格の制限が少ない。 警備業法3条1号(警備員は14条1項でこれを引いています)や宅地建物取引業法18条1項2号(宅地建物取引士の登録)が制限の理由とするのは、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」で、再生手続は挙げていません。ただし、資格ごとに根拠の法令が違うので、就いている仕事の法令を確かめてください。
5. 借金の理由が、不認可事由にならない。 自己破産には、浪費や賭博で財産を著しく減らしたことなどの免責不許可事由があります(破産法252条1項)。再生計画の不認可事由を定める民事再生法174条2項・231条2項・241条2項には、そうした事由は挙がっていません。ただし、これは使える保証ではありません。裁判所は収支や返済の見込みを個別に見ますし、財産を隠す、一部の債権者だけに返すといった行為は、別に問題になります。
さらに、手続きを始めると取り立てや差押えの状況が変わる点もあります。開始決定があると、借金に基づく強制執行などの申立てはできなくなり、すでにされているものは中止されます(民事再生法39条1項)。申立てから開始決定までの間は、裁判所が必要と認めれば中止を命じる制度があります(26条1項2号)。給料の差押えは申立てだけでは自動で止まらず、このどちらかが必要です。
借金はどれくらい減る?|圧縮の幅(筆者の計算)
返す額の下限は、住宅ローンなどを除いた借金の額で決まります(民事再生法231条2項3号・4号)。減る割合の目安を表にしました。清算価値が最低弁済額より小さい場合の計算です。
| 対象の借金 | 返す額の下限 | 返す割合 | 減る額 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 50万円 | 全額(減らない) | 0円 |
| 300万円 | 100万円 | 約33% | 200万円 |
| 500万円 | 100万円 | 20% | 400万円 |
| 1,000万円 | 200万円 | 20% | 800万円 |
| 2,000万円 | 300万円 | 15% | 1,700万円 |
| 5,000万円 | 500万円 | 10% | 4,500万円 |
借金が100万円未満なら減りません。100万円以上500万円以下の人は、借金が小さいほど返す割合が高くなります。財産が多い人は、清算価値が下限を上回って返す額が増えます。借金額ごとの早見表は個人再生の最低弁済額の早見表|借金額ごとの返済総額と計算の仕方にあります。
自己破産・任意整理と比べた、残せるものの違い
| 比べる点 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
|---|---|---|---|
| 持ち家 | 住宅ローンを外せば残せる | 特別条項で残せる場合がある | 原則として手放す |
| 預金・保険などの財産 | 手放さない | 手放さないが清算価値以上を返す | 一定額を超えると換価される |
| 借金の理由 | 問われない | 不認可事由に浪費などは挙がっていない | 浪費・賭博などは免責不許可事由になりうる |
借金が減る幅、収入の要件、資格の制限などを含めた詳しい比べ方は、自己破産とは自己破産と個人再生の違い|家・仕事・返済額で選ぶ判断材料、任意整理とは任意整理と個人再生の違い|借金額・収入・住宅で選ぶ分かれ道にあります。
メリットが生きる人と、生きにくい人
メリットは、次の条件に当てはまるほど大きくなります。
- 毎月の収入があり、減らした借金を3年(最長5年)で返せる見通しがある
- 住宅ローンの付いた家に、住み続けたい事情がある
- 住宅ローン以外の借金が、500万円を超えるなど大きい
- 預金や保険などの財産が、最低弁済額を上回るほど多くない
逆に、メリットが生きにくいのは次の場合です。
- 収入の見込みが立たない:個人再生は、継続的または反復した収入の見込みが要件です(民事再生法221条1項)。見込みがなければ自己破産が候補になります
- 借金が小さい:100万円未満は減りません。500万円以下でも返す額は一律に100万円の下限があり、費用に見合う減り方かを試算する必要があります
- 給与所得者等再生を選びたいが、可処分所得が大きい:返す額の下限が、可処分所得の2年分まで上がる場合があります(241条2項7号)
メリットだけで決めず、失うものも合わせて確かめてください。全体の仕組みは個人再生とは?いくら減るかの決まり方と家を残す条件・流れにあります。
比べたうえで、相談に進むときの準備
個人再生が合うかどうかは、収入・借金の額・財産・家の事情で決まります。個別の見立ては、書類を見せて弁護士に聞くのが現実的です。依頼を考えるときは、見積書で報酬の総額と内訳を示してもらい、個人再生以外の手続きとの比較も説明してくれるかを確かめます。
相談の前に、借入先ごとの会社名・残高・毎月の返済額と、収入・財産の資料をそろえておきます。次に読むなら、失うものと手続きの負担を表で確かめられる個人再生のデメリット|失うもの・手続きの負担・家族への影響が続きです。返す額の下限は個人再生の最低弁済額の早見表にあります。
よくある質問
Q. 個人再生は借金の理由がギャンブルや浪費でも使えますか?
使える保証はありません。再生計画の不認可事由を定める民事再生法174条2項・231条2項・241条2項には、自己破産の免責不許可事由(破産法252条1項)のような、浪費や賭博で財産を減らしたことは挙がっていません。ただし、認可されるかどうかは裁判所が個別に判断します。
Q. 個人再生のメリットはどんな人に大きいですか?
継続的な収入があり、住宅ローンの付いた家を手放したくない人、借金が数百万円以上で任意整理では3〜5年で返しきれない人です。住宅資金特別条項を使えば、住宅ローンを払いながらほかの借金だけを減らせる場合があります。
出典・参考にした公的な情報
- 民事再生法 第26条・第39条・第174条・第196条〜第199条・第221条・第229条・第231条・第239条・第241条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個人再生手続(裁判所)(最高裁判所)
- 裁判手続 民事事件Q&A(個人再生手続・住宅ローンの特則)(最高裁判所)
- 破産法 第252条・第255条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 警備業法 第3条・第14条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法 第18条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。