自己破産 / Q&A

無職でも自己破産できる?収入がないときの費用と手続き

この記事のもくじ
  1. 収入がなくても自己破産ができる理由と、他の手続きとの違い
  2. 無職の人が用意する費用:裁判所に納める分と弁護士・司法書士の分
  3. 費用を用意する方法:法テラス・積立・家族の援助
  4. 生活保護の申請と並行して進める流れ
  5. 無職の間にしてはいけないことと、相談のときの伝え方

無職でも、収入がなくても、自己破産はできます。破産手続を始める原因は「支払不能」(支払能力を欠き、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態)で、収入があることは条件ではありません。収入が要件になるのは個人再生のほうで、無職の人が使える手続きは自己破産が中心になります。課題になるのは、手続きに要る費用をどう用意するかです。この記事では、費用の中身、法テラスと家族の援助の扱い、生活保護の申請と並行して進める流れを順に説明します。

収入がなくても自己破産ができる理由と、他の手続きとの違い

破産法15条1項は、債務者が支払不能にあるときに、裁判所が破産手続開始の決定をする、と定めています。2条11項の定義は「支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」です。収入の有無や、借金の額の下限は、条文に出てきません。判断は、収入、財産、借金の額と返済の見通しをあわせて裁判所がします。

無職の人の目で、4つの手続きを並べます。

比較表:収入がないときに使える手続き
手続き 収入がないとき 根拠・説明
自己破産 申立てできる 開始の原因は支払不能で、収入は要件でない(破産法15条)
個人再生 収入の見込みがなければ使えない 将来にわたって継続的または反復して収入を得る見込みが要件(民事再生法221条1項)
特定調停 返済の原資が要る 毎月一定額を払える原資がないと債権者の納得を得にくい。家族の援助が見込めるなどの場合は別(大分地方裁判所のQ&A)
任意整理 返済の原資が要る 和解後の分割払いを続ける収入が前提

収入がないと、残る道は自己破産になりやすい、というのが全体の姿です。ただ、仕事が見つかりそうな人や、失業給付などを受けられる人は、先に収入を立て直す道もあります。収入を補う制度と、業者に返済の猶予を頼む連絡は無職で借金が返せないときの選択肢|収入がない間の連絡と手続きで整理しています。

アルバイトやパートの収入がある場合も、自己破産の要件には関係しません。働き方は、個人再生を使えるか(継続的または反復して収入を得る見込みがあるか)を考える材料になります。

申立ての後に就職した場合の給料も、心配は要りません。破産財団になるのは、破産手続開始の時に持っている財産です(破産法34条1項)。開始の後に働いて得た給料は、原則として財団に入らず、本人のものです。

無職の人が用意する費用:裁判所に納める分と弁護士・司法書士の分

自己破産の費用は、大きく2つに分かれます。

裁判所に納める分:破産手続開始の申立ての手数料は収入印紙1,000円分、免責許可の申立ては500円分です(裁判所)。このほかに、連絡用の郵便料と予納金が要ります。予納金は官報公告の費用などで、管財人が選ばれる場合は管財人の費用が加わります。額は裁判所ごとに違います。

東京地方裁判所の令和8年1月1日現在の公表額では、裁判所に納める合計は同時廃止で19,496円、個人の管財事件で226,847円です(筆者の計算。内訳の表は自己破産の費用はいくら?裁判所の費用と弁護士費用の内訳にあります)。額は事案に応じて変わる場合があるので、申立先の地方裁判所のページで最新の額を確かめてください。無職で財産がほとんどないなら、同時廃止になる見込みがありますが、同時廃止にするか管財事件にするかを決めるのは裁判所です。東京地裁は、33万円以上の現金、20万円以上の預貯金や保険の解約返戻金などがある場合、資産の調査が必要な場合、免責の調査を経ることが相当な場合などを、原則として管財事件にするとしています。分かれ目は自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間で、予納金の中身は自己破産の予納金とは?金額の決まり方と納める時期・分納の確認で説明しています。

予納金が納められないと、裁判所は開始の決定をしません(破産法30条1項)。費用の用意は、手続きの入口の条件です。

弁護士・司法書士に払う分:着手金や報酬の額は、事務所ごとに違います。相場の数字は公的な統計がないので、事務所の料金表と見積書で、総額と支払いの時期を確かめます。内訳は自己破産の弁護士費用の内訳|着手金・報酬・分割払いと見積書に、全体の見方は自己破産の費用はいくら?裁判所の費用と弁護士費用の内訳にまとめています。

費用を用意する方法:法テラス・積立・家族の援助

収入がないときの費用の用意は、次の3つが主な道です。

1. 法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助:総合法律支援法30条は、費用を支払う資力がない人などを援助する業務として、代理人の報酬と実費の立替え、裁判所に出す書類の作成を頼む報酬と実費の立替え、法律相談の実施を挙げています。債務整理では、弁護士・司法書士の費用を法テラスが立て替え、あとで分割して返す形です。条文が立替えの対象に挙げているのは、代理人や書類作成者への報酬と実費です。法テラスのよくある質問は、生活保護を受けている人を除き、自己破産事件の予納金は立替えの対象にならないと案内しています。収入がなくても生活保護を受けていなければ、予納金は別に用意することになり、同時廃止なら東京地裁の公表額で13,046円、管財事件なら最低20万円からです。管財事件になりそうなときの進め方は自己破産の費用が払えないときの予納金の節にまとめています。収入と資産の基準、毎月の返済額は自己破産の費用は法テラスで立て替えできる?条件と流れと借金が返せないとき法テラスでできること|無料相談と費用立替の流れで扱っています。

2. 積立てて申立ての時期を待つ:事務所の中には、依頼したあとに毎月積み立てて、費用がたまってから申立てをする進め方があります。この間も、弁護士・司法書士が受任の通知を貸金業者に出すと、貸金業者は正当な理由なく本人に直接請求できなくなります(貸金業法21条1項9号)。ただし、この規定が及ぶのは貸金業者の請求で、税金や家賃の督促には当たりません。積立てと分割の使い分けは自己破産の費用が払えないとき|分割・積立・法テラスの使い分けにあります。

3. 家族の援助:家族に費用を出してもらう場合は、贈与か貸付かで扱いが変わります。

形 扱い 注意
返さなくてよいお金をもらう(贈与) 費用に使う 受け取った日と使い道を記録し、依頼先に伝える
あとで返す約束で借りる 家族への借金になる 債権者一覧に載せる。載せないと、その請求は免責されず(破産法253条1項6号)、虚偽の債権者名簿として免責不許可事由にもなる(同法252条1項7号)
申立ての前に家族にだけ返す 特定の債権者への返済になる 免責不許可事由(破産法252条1項3号)や、管財人の否認(同法162条)の問題になりうる

家族の援助が見込めるなら、特定調停や任意整理を使う道が開ける場合もあります(大分地方裁判所のQ&A)。収入がなく、援助も期待できない人は、法テラスの立替え(弁護士・司法書士の費用)と、後で説明する生活保護の道を組み合わせて考えます。生活保護を受けている人は、管財事件の引継予納金なども法テラスの立替えの対象になります(東京地裁の令和8年1月の通知。自己破産の費用は法テラスで立て替えできる?)。

依頼するなら、費用の用意の方法も含めて最初の面談で相談できます。選ぶときは、弁護士の登録番号、面談の有無、費用の総額を書面で示してもらえるか、対応地域、法テラスの扶助を使えるかを確かめます。広告の事務所の案内は、次のとおりです。

生活保護の申請と並行して進める流れ

収入がなく、貯えも尽きたときは、生活保護が選択肢になります。生活保護の申請先は、住んでいる地域を所管する福祉事務所の実施機関で、申請書を出します(生活保護法19条・24条)。申請があると、実施機関は14日以内に、保護の要否などを書面で通知します。扶養義務者の調査に日時を要する場合などは30日まで延ばせます(同法24条5項)。

借金があっても申請はできます。保護は、利用できる資産や能力を最低限度の生活の維持に活用することを要件に行われます(同法4条1項)。借金と保護費の関係、保護費を借金の返済に回してよいかは、福祉事務所の担当者に確かめます。

生活保護と自己破産を並行して進めるときの流れを、順に並べます。

  1. 福祉事務所に申請する:借金の状況も伝えます。生活全般の相談先は、自治体の自立相談支援機関です(厚生労働省)。窓口の探し方は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方にあります。
  2. 弁護士・司法書士か法テラスに連絡する:生活保護の申請中や受給中であることを、最初に伝えます。法テラスの立替えの扱いも、このときに確かめます。
  3. 申立ての書類をそろえる:住民票、事情説明書、債権者一覧表、財産目録などです(裁判所Q&A)。保護の決定通知書や、保護費の入金が分かる通帳も、生活状況の説明に使えます。
  4. 自己破産を申し立てる:生活保護法58条は、すでに受けた保護金品や、受ける権利を、差し押さえることができないと定めています。破産法34条3項2号は、差し押さえることができない財産を破産財団に属さないものとしているので、受けた保護金品は財産の換価の対象になりにくい、という関係になります。
  5. 免責の決定を受ける:確定すると、税金や養育費などの非免責債権を除き、支払義務を免れます(破産法253条1項)。

生活保護を受けながらの費用の扱いと流れの詳細は、生活保護を受けていても自己破産できる?費用の扱いと流れと生活保護を受けながら債務整理する方法|法テラスの費用の扱いで説明しています。

無職の間にしてはいけないことと、相談のときの伝え方

無職の期間に起こりやすい失敗を、先に挙げます。

最初の相談のときは、次の内容を伝えると話が早く進みます。

文例:「いま仕事がなく、収入は○円です(失業給付・アルバイトなどがあれば書く)。借入れは○社で、合計は約○万円です。費用を一度に用意できないので、法テラスの立替えが使えるか、積立てや分割ができるか、管財事件になった場合の予納金はどう用意すればよいかを知りたいです。生活保護の申請は、○月に福祉事務所へ行く予定です(または、すでに受けています)」

手続きを選ぶ判断や、免責の見通しは、弁護士・司法書士が事情を聞いたうえでするものです。この記事は、判断の材料を整理したものです。

よくある質問

Q. 無職で収入がなくても、自己破産の申立てを受け付けてもらえますか?

受け付けられます。破産手続開始の原因は「支払不能」で、収入があることは条件ではありません(破産法15条・2条11項)。収入がないことは、むしろ支払不能を示す事情の一つです。ただし、費用を納められないと開始の決定は出ないので(同法30条1項)、費用の用意が先の課題になります。

Q. アルバイトやパートの収入があると、自己破産はできなくなりますか?

できなくなりません。収入の額や働き方は自己破産の要件ではなく、収入がある人も申し立てられます。働き方は、個人再生を使えるか(継続的または反復して収入を得る見込み)や、どの手続きが向くかを考える材料になります。毎月の収入と支出は、申立ての書類で説明します。

Q. 家族にお金を出してもらって費用に充ててもよいですか?

出してもらうこと自体は禁じられていません。ただし、あとで返す約束なら、家族への借金として債権者一覧に載せる必要があります。申立ての前に家族にだけ返すと、免責の判断で問題になることがあります。贈与か貸付かを依頼先に伝えてから受け取ってください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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