無職で借金が返せないときの選択肢|収入がない間の連絡と手続き
この記事のもくじ
無職になって借金が返せないときは、①収入を補う制度を申請する、②払う支出を減らす手続きをする、③借りている業者に返済の相談をする、の3つを同時に進めます。そのうえで、収入が戻る見込みが数か月で立つなら返済条件の相談や任意整理、見込みが立たないなら自己破産を考え、費用が払えなければ法テラス(日本司法支援センター)を使います。いちばん避けたいのは、返済のために新しく借りることと、連絡をせずに放っておくことです。
無職になったらまず申請する制度|収入を補う・支出を減らす
借金の返済をどうするか考える前に、生活の土台を作ります。次の制度は、どれも申請しないと始まりません。
| 制度 | 対象の目安 | 内容 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険の基本手当(失業給付) | 離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上(倒産・解雇などは1年間に6か月以上) | 賃金のおよそ50〜80%を、90日〜360日の間で決まる日数分受け取れる | 住所地のハローワーク |
| 住居確保給付金 | 離職・廃業から2年以内など。世帯の収入・預貯金が基準以下で、求職活動をする | 家賃相当額(上限あり)を自治体が家主に直接払う。期間は生活費が足りないときの公的な相談先で確かめる | 自立相談支援機関 |
| 国民健康保険料の軽減 | 倒産・解雇・雇止めなどで離職した人(雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者) | 前年の給与所得を100分の30として保険料を計算(離職の翌年度末まで) | 市区町村の国保の窓口 |
| 国民年金保険料の免除・納付猶予(失業の特例) | 失業・倒産などが確認できる人 | 前年の所得にかかわらず免除・納付猶予を受けられる特例 | 市区町村の国民年金窓口・年金事務所 |
| 生活困窮者の自立相談支援・家計改善支援 | 仕事・住まい・家計に困っている人 | 支援員が一緒に支援プランを作り、家計の見直しや関係機関へのつなぎをする | 自立相談支援機関 |
基本手当は、ハローワークで求職の申込みをし、離職票を出してから始まります。申込みの後、失業の状態にある7日間は支給されない待期期間があり、原則4週間に1度、失業の認定を受けに行きます。正当な理由のない自己都合退職などでは、待期の後さらに1か月以上3か月以内でハローワークが定める期間、支給されない給付制限があります(雇用保険法33条)。期間の長さは離職の理由や時期で変わるので、離職票の離職理由の欄を持ってハローワークで確かめます。受け取れるのは原則として離職の翌日から1年間なので、離職したらすぐに手続きします。
住民税は前の年の所得にかかるため、無職になった年も前年の収入を基準にした額が来ます。給料から引かれていた住民税(特別徴収)は、退職の時期で扱いが分かれます。1月から4月に退職すると、5月までの残りが最後の給料や退職手当から一括で引かれることがあり、6月から12月の退職では、残りを自分で納める方法(普通徴収)に切り替わるのが基本です(地方税法321条の5)。どの扱いになるかは勤め先に確かめ、払えない月が出そうなら、納期限の前に市区町村の納税課へ行き、分けて払う相談をします。
自立相談支援機関は市区町村ごとにあり、住居確保給付金の申請もここで受け付けます。どこにあるかは生活費が足りないときの公的な相談先(家計改善支援と住居確保給付金)で探し方を説明しています。
借りている業者への連絡|返済の相談で伝えること
制度の申請と並行して、返済日が来る前に、借りている業者に連絡します。返済が遅れると遅延損害金が付き、督促が始まり、延滞が続けば信用情報に記録されます。先に連絡しておけば、返済日や月の返済額について相談に乗ってもらえることがあります。応じるかどうか、どんな条件かは業者の判断です。
電話の前に、次の4つをメモにしておきます。
- 離職した日と理由(会社都合か自己都合か)
- 基本手当などの受給予定と、その金額・時期
- 次の仕事の見込み(応募中、内定の時期など)
- いま毎月払える額(0円なら0円と書く)
伝え方の例:「〇月〇日に会社の都合で離職し、いま求職中です。雇用保険の手続きをしていて、受給が始まるのは〇月の見込みです。今月の返済日に約定の〇円は払えませんが、〇円なら払えます。仕事が決まるまでの間の返し方を相談させてください。」
払える額を少なめに伝えるのは、約束した額を次の月も守るためです。守れない約束を重ねると、話し合いが続けにくくなります。業者ごとの連絡の文例は借金の返済ができないときの業者への連絡の仕方と伝える文例にまとめています。
収入が戻る見込み別の分かれ道
業者に連絡した後の進め方は、収入がいつ戻るかで変わります。
| 収入が戻る見込み | 考える選択肢 | ポイント |
|---|---|---|
| 数か月以内に再就職できそう(内定がある、応募が進んでいる) | 業者と返済日や月の返済額を相談し、再就職まで乗り切る | 基本手当と制度で生活費を確保し、約束した額を守る |
| 半年〜1年はかかりそう。再就職後は返せそう | 任意整理(弁護士・司法書士が業者と分割の和解をめざす) | 和解後の返済には収入が要るので、再就職の見込みも含めて相談する |
| 見込みが立たない(病気、年齢、家族の介護など) | 自己破産 | 収入がなくても申し立てられる。費用は法テラスの立替えを使える場合がある |
| 再就職して安定した収入はあるが、借金が多すぎる | 個人再生 | 継続した収入の見込みが要件なので、就職後に考える |
求職中の任意整理の進め方は求職中や無職でも任意整理はできる?収入が戻るまでの選択肢、無職の間の自己破産は無職でも自己破産できる?収入がないときの費用と手続きで詳しく扱っています。
個人再生は、将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあることが要件です(民事再生法221条1項)。無職の間は選びにくく、再就職して収入が落ち着いてから検討する手続きになります。
収入の見込みが立たないとき|自己破産と法テラスの使い方
収入の見込みが立たず、制度の給付で生活費をまかなうのがやっとなら、返済を続ける前提で考えるのをやめ、自己破産を含めて相談します。裁判所は中立の立場なので、申立ての相談には応じていません。相談先は弁護士・司法書士、費用が払えない人は法テラスです。
法テラスでは、収入や資産が一定の基準以下などの条件を満たすと、無料の法律相談を受けられ、弁護士・司法書士の費用を立て替えてもらえる場合があります。条件に当てはまるかは、法テラスのサポートダイヤルで確かめます。番号と受付時間は借金の公的な相談窓口と受付時間の一覧に載せています。
相談の日までに、次のものを集めておくと話が早く進みます。
- 借入先ごとの残高・月の返済額・最後に払った日の一覧
- 離職票、雇用保険の受給資格者証(受け取っていれば)
- 通帳、家計の収支のメモ(家賃・光熱費・通信費・保険料)
- 届いている督促状や、裁判所から届いた書類
無職の間にやってはいけないこと
- 返済のために新しく借りる。 無職の状態で貸してくれるところを探すと、審査の甘さをうたうヤミ金(ヤミ金融)や、給料の買取りをうたう業者に行き着きやすくなります。借りる前に頼れる公的な制度は無職でお金を借りるのは危険?審査の仕組みと先に頼れる公的制度で整理しています。
- 連絡を絶つ。 電話に出ない、郵便を開けないでいると、一括での請求や裁判の手続きに進んだことに気づくのが遅れます。届いた封筒は開けて、差出人と期限を確かめます。
- 家族や友人にだけ先に返す。 後で自己破産や個人再生をするときに、一部の相手にだけ返したことが問題になることがあります。返す順番は相談先に伝えてから決めます。
- 一人で抱え込む。 「死にたい」と感じるほど追い詰められているときは、借金の相談より先に、24時間つながる相談先に連絡してください。窓口は借金で死にたいと思ったときの相談先にまとめています。
病気で働けないことが無職の理由なら、傷病手当金や障害年金など、先に確かめる給付があります。給付と返済の相談の仕方は病気で借金が返せないとき|使える給付と返済の相談の仕方で整理しています。生活保護を受けながら債務整理をする場合は生活保護を受けながら債務整理する方法|法テラスの費用の扱いを読んでください。
よくある質問
Q. 失業手当(基本手当)を借金の返済のために差し押さえられることはありますか?
雇用保険法11条は、失業等給付を受ける権利は譲り渡したり、担保にしたり、差し押さえたりできないと定めています。ただし、この条文が決めているのは「給付を受ける権利」の扱いです。口座に振り込まれた後の預金について差し押さえの心配があるときは、法テラスや弁護士に事情を伝えて相談してください。
Q. 無職の間は、借金の返済を止めてもらえますか?
返済を止めるかどうか、どの程度待つかは、借りている業者が決めることで、法律で一律に止まる仕組みはありません。遅れる前に連絡し、失業した事実、次の収入の見込み、いま払える額を伝えて相談します。弁護士・司法書士に債務整理を依頼して受任通知が届いた後は、貸金業者が本人に直接請求することは貸金業法で制限されます。
Q. 無職でも自己破産はできますか?
収入がないことは、自己破産を申し立てられない理由にはなりません。自己破産は、収入や財産から見て返済ができない状態かを裁判所が判断する手続きです。一方で個人再生は、継続して収入を得る見込みが要件なので、無職の間は選びにくい手続きです。申立ての費用や生活の見通しは、無職での自己破産を扱った記事で整理しています。
出典・参考にした公的な情報
- 基本手当について(ハローワークインターネットサービス)(厚生労働省)
- 雇用保険の手続きのご案内(ハローワークインターネットサービス)(厚生労働省)
- 雇用保険法 第11条・第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 住居確保給付金(厚生労働省)
- 生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)
- 国民健康保険の保険料・保険税について(厚生労働省)
- 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(日本年金機構)
- 地方税法 第321条の5(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法 第21条第1項第9号(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第221条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産・再生(手続の説明)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。