自己破産の費用が払えないとき|分割・積立・法テラスの使い分け
この記事のもくじ
自己破産の費用が一括で払えなくても、手続きを進める道はあります。道は3つで、弁護士に依頼して返済が止まっている間に費用を積み立てる、法テラスの立替えを使う、裁判所に納める予納金は、納め方を申立先の裁判所に確かめるです。どれが合うかは、毎月の収入と預貯金などの資産で決まります。この記事では、状況別に選び方を表にし、積立の組み方と、法テラスの基準の例、予納金の分納を扱う裁判所があるかの確かめ方を示します。
費用が払えないとき、まず切り分けること
「払えない」は2つの場面に分かれます。弁護士に払う分と、裁判所に納める分です。必要になる時期も、使える手も違います。
| 払えない費用 | 必要になる時期 | 主な手 |
|---|---|---|
| 弁護士に払う分(着手金・報酬金・実費) | 依頼のとき、手続きの途中 | 受任後の積立、分割払い、法テラスの立替え |
| 裁判所に納める分(印紙・予納金・郵便切手) | 申立てのとき | 生活保護を受けている人の管財事件は法テラスの立替え(東京地裁の令和8年1月の通知)。それ以外の人の予納金は法テラスの立替えの対象外なので、弁護士に管財事件になる見込みを確かめ、納め方は申立先の裁判所で確かめる |
破産法は、申立てのときに裁判所の定める金額の予納を求め(22条)、予納がなければ原則として破産手続開始の決定をしないと定めています(30条1項1号)。ただし、裁判所は、申立人の資力などを考えて特に必要と認めるときは、手続きの費用を仮に国庫から支弁できると定めています(23条1項)。この仮の支弁を実際にどの場面で使うかは裁判所の運用で、条文だけでは分かりません。当てにして計画を立てず、申立てを担当する弁護士や申立先の裁判所の窓口で聞く事項として扱います。
弁護士費用と裁判所に納める額の内訳は、自己破産の弁護士費用の内訳|着手金・報酬・分割払いと見積書にまとめています。
収入と資産の状況別に見る、選べる道
次の表は、自分の状況から、先に当たる手を探すためのものです。
| 状況 | 先に当たる手 | 確かめること |
|---|---|---|
| 毎月の収入があり、返済に回していた額がある | 弁護士に依頼して受任通知を出し、返済に回していた額を積み立てる | 積立の額・期間・申立ての時期 |
| 収入が少なく、預貯金も少ない | 法テラスの無料相談と、弁護士・司法書士費用の立替え | 世帯の収入と資産が基準内か、毎月の返済額。予納金は立替えの対象外 |
| 収入がほとんどない(無職など) | 法テラスの立替え(弁護士・司法書士費用)、自治体の自立相談支援機関 | 収入の見込み、管財事件になった場合の予納金の見通し |
| 生活保護を受けている | 福祉事務所に伝えたうえで法テラスの立替え | 管財事件の引継予納金なども立替えの対象。償還の猶予・免除の扱い |
| 不動産などの資産があり、管財事件になりそう | 弁護士に、管財事件になった場合の予納金の額と納め方を確認 | 予納金の額、一括で納めるか、納める時期 |
無職や収入のない人の進め方は無職でも自己破産できる?収入がないときの費用と手続き、生活保護を受けている人は生活保護を受けていても自己破産できる?費用の扱いと流れで扱います。
返済が止まっている間に、弁護士費用を積み立てる
弁護士が依頼を受けて債権者に受任通知を出すと、貸金業者は、正当な理由なく本人に電話や訪問で請求することが禁じられます(貸金業法21条1項9号)。これまで返済に回していたお金が手元に残るので、そこを弁護士費用の積立にあてます。
積立の額を決める式は次のとおりです。弁護士に払う分の総額(見積書の額)から、依頼のときに払う額を引き、積立の月数で割ります。
計算の練習(仮の数字で、実際の料金ではありません。筆者の計算):弁護士に払う分の総額が30万円、依頼のときに払う額が5万円、積立の期間が10か月なら、毎月の積立は(30万円-5万円)÷10か月=2万5,000円。これに、裁判所に納める分の積立を足します。
返済に回していた月額が6万円だったなら、積立を月2万5,000円にしても、残りの3万5,000円が手元に残る計算です。この残りは、積立の期間中の家賃や光熱費、受任通知で止まらない支払いにあてます。家賃、税金、国民健康保険料の督促は、貸金業法21条の対象ではないため、同じようには止まりません。止まる範囲は債務整理の受任通知とは?督促が止まる仕組みと止まらない支払いで確かめます。
積立を選ぶときは、次の点を契約の前に聞きます。
- 積立が終わってから申立てをするのか、途中で申立てをするのか
- 積立の期間中に、裁判所の手続きで何が起きるのか
- 払えなくなったとき、契約はどうなるのか。受け取った金額の精算はどうなるのか
法テラスの立替えを使う場合の基準と返し方
収入と資産が一定の基準以下なら、法テラスの民事法律扶助が使えます。法務省の資料は、基準の例として、手取り月額が単身者で18万2000円以下、4人家族で29万9000円以下、預貯金等が単身者で180万円以下、4人家族で300万円以下を挙げています。法務省の広報誌には、2人家族の例として、月収(賞与を含む)251,000円以下、預貯金等250万円以下の記載があります。どちらも例で、世帯の人数や住んでいる地域で変わるため、自分の数字はサポートダイヤルで確かめます。窓口の番号と受付時間は借金の公的な相談窓口の早見表にあります。
立替えの対象は、弁護士・司法書士の着手金と実費です。法テラスのよくある質問は、生活保護を受けている人を除き、自己破産事件の予納金は立替えの対象にならないと案内しています。返し方は、法務省の資料によると、援助の開始決定の後、事件の進行中から返し始め、原則3年以内に払い終える金額で、月々5,000円から1万円程度に分けます。生活保護を受けている人などは、返すことの猶予や免除が認められる場合があります。立替えの条件と流れは自己破産の費用は法テラスで立て替えできる?条件と流れに、任意整理の場合は任意整理の費用が払えないとき|分割払いと法テラスの立替にあります。
裁判所に納める予納金が払えないとき
管財事件になると、東京地方裁判所の令和8年1月1日現在の一覧では、個人の予納金は最低20万円と、1件につき20,397円です。同時廃止なら13,046円です。まとまった額なので、払えるか不安になる人が多い費用です。法テラスのよくある質問は、生活保護を受けている人を除き、自己破産の予納金は立替えの対象にならないと案内しています。生活保護を受けている人の管財事件は、東京地方裁判所が破産管財人あてに出した令和8年1月の通知で、法テラスが引継予納金20万円、官報公告費、印紙・郵券費用を立て替える制度があると周知されています。受給していない人は、次の順で道を探します。
- **管財事件になる見込みを、依頼前の相談で弁護士に確かめる。**予納金が20万円からになるか、1万円台で済むかで、必要な準備が10倍以上違います。通帳、保険、車、退職金の見込みなどの資料を持って、同時廃止か管財事件かの見通しを聞きます。分かれ目は自己破産の同時廃止と管財事件の違いにあります。
- **管財事件になりそうなら、予納金の積立の期間を見積書に入れてもらう。**弁護士費用の積立が終わっても、予納金の分が足りないままでは申立てが進みません。「弁護士費用の積立」と「予納金の積立」を分けて、いつまでにいくら貯めるかを書面にします。
- **申立先の裁判所で、納め方を確かめる。**予納金を分けて納められるかは裁判所ごとに違い、千葉地裁・札幌地裁・東京地裁の書き方の違いは自己破産の予納金とは?に表でまとめています。申立てを担当する弁護士に聞くのが早いですが、自分で裁判所の窓口に聞く場合は、申立先の公表ページを先に読みます。
- **仮の支弁(破産法23条)は、当てにしない。**条文は、資力などを考えて特に必要と認めるときに国庫から支弁できるとしますが、どの場面で使われるかは裁判所の運用です。弁護士に「この裁判所で使われた例があるか」を聞く程度にとどめます。
弁護士に聞くときの文例です。
文例(弁護士への質問):「私の財産の状況だと、同時廃止と管財事件のどちらになりそうですか。管財事件になった場合の予納金は、申立先の裁判所でいくらで、一括で納める必要がありますか。納めるのが難しい場合に、申立てを待つ方法はありますか。」
予納金が用意できないまま申立てを急ぐ必要はありません。受任通知が出ている間は貸金業者の直接の請求が止まるので、その間に積み立てる計画を立てます。
費用を用意するために、してはいけないこと
費用の工面に焦ると、免責の判断に響く行動をとりがちです。
- 支払えない状態を隠して新たに借りる、カードで買い物をして換金する:破産法252条1項2号や5号の免責不許可事由に当たる場合があります。
- 親族や知人にだけ先に返す:債権者を平等に扱う手続きの目的に反し、免責の審理で問題にされることがあります。
- ヤミ金や個人間融資で費用を借りる:被害が広がります。被害にあったときの窓口は闇金の被害は警察に相談できる?連絡が来たときの対応と相談先にまとめています。
- 申立て前に財産を移す、隠す:自己破産で嘘はバレる?申立て前にしてはいけない財産の移動と返済で、条文の事実を確かめてください。
費用が足りないという事情は、手続きの相談を始めてよい理由になります。費用の用意を理由に相談を先延ばしにすると、その間も督促や延滞金が進むことがあります。弁護士に依頼するなら、受任する弁護士本人と面談できるか、総額を書面で示してもらえるか、分割や積立の条件と、払えなくなったときの扱いを確かめてから選びます。
よくある質問
Q. 費用を用意できるまで、自己破産の申立ては待つしかありませんか?
待つだけではありません。弁護士に依頼して受任通知が出ると、貸金業者からの本人への直接の請求が止まり、返済に回していたお金を費用の積立にあてられます。収入と資産が法テラスの基準内なら、弁護士費用の立替えという道もあります。まず相談の予約を取り、積立か立替えかを決めてください。
Q. 費用が払えないときに、新しく借りて払ってもよいですか?
避けてください。支払えない状態を隠して新たに借りると、免責が許可されない事由に当たる場合があります(破産法252条1項)。ヤミ金や個人間融資に手を出すと、被害が広がります。公的な相談窓口と、法テラスの立替えを先に当たってください。
出典・参考にした公的な情報
- 民事法律扶助の諸課題について(資料2)(法務省)
- 破産法(第23条・第30条・第252条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法(第21条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産事件の手続費用一覧(令和8年1月1日現在)(東京地方裁判所 民事第20部)
- 法テラスによる引継予納金(管財人費用)等の立替えについて(令和8年1月)(東京地方裁判所 民事第20部)
- 破産事件の手続費用一覧(予納金の分割納付の記載)(千葉地方裁判所)
- 破産・免責申立書の書き方と留意事項(令和6年1月)(札幌地方裁判所)
- 無料法律相談の利用要件(あかれんが Vol.82)(法務省)
- 民事法律扶助 立替制度のよくある質問(法テラス)(日本司法支援センター(法テラス))
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。