貸した借金を返さない相手を訴えるには?支払督促と少額訴訟の選び方
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貸したお金を返さない相手には、①内容証明郵便などの書面で請求する、②簡易裁判所に支払督促を申し立てる、③60万円以下なら少額訴訟を起こす、④それ以外は通常の訴訟を起こす、という段階の手段があります。選ぶ目安は、相手が借りたこと自体を争いそうか、金額はいくらか、相手の住所が分かっているかの3つです。どの手続きでも、勝つかどうか以前に、貸した事実を示す証拠と、判決の後に回収する見込みがあるかが結果を左右します。
この記事は、お金を貸した側が相手を訴える話です。自分が訴えられたかもしれない側の人は、先に借金が返せないと裁判になる?訴えられるまでの流れと届く書類で、届いた書類の種類と期限を確かめてください。
借金を訴える前に:4つの手続きの比較
まず、使える手続きを並べます。費用は裁判所の手数料額早見表(2026年5月21日以後に申し立てる事件・書面で申し立てる場合)の額です。2026年5月21日から民事訴訟の手続きが改正され、郵便の費用は手数料に一本化されました。
| 手続き | 使える金額 | 出す先 | 手数料の例(書面) | 相手が争ったら |
|---|---|---|---|---|
| 内容証明郵便での請求 | 制限なし | 郵便局(裁判所ではない) | 郵便の料金 | 強制力はないので、次の手続きへ |
| 支払督促 | 制限なし | 相手の住所地の簡易裁判所の書記官 | 10万円まで3,200円、50万円で5,200円、100万円で7,700円 | 異議が出ると通常の訴訟に移る |
| 少額訴訟 | 60万円以下 | 簡易裁判所 | 訴えの手数料(50万円で7,500円、60万円で8,500円) | 相手は通常の手続きへの移行を求められる |
| 通常の訴訟 | 140万円以下は簡易裁判所、超えると地方裁判所 | 原則として相手の住所地の裁判所 | 50万円で7,500円、100万円で12,500円、140万円で14,500円 | そのまま審理が続く |
支払督促は、裁判所書記官が、申し立てた人の言い分だけを見て、相手に支払いを命じる手続きです(民事訴訟法第382条・第386条)。相手が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、申立てによって仮執行宣言が付き、強制執行ができるようになります。相手が異議を出すと、申し立てた時に訴えがあったものとみなされ、通常の訴訟に移ります(第395条)。
少額訴訟は、60万円以下の金銭の請求で使える手続きで、原則として最初の期日で審理を終え、すぐに判決が出ます(第368条・第370条・第374条)。証拠はその場で調べられるものに限られ、同じ簡易裁判所で使えるのは1人年10回までです。判決に控訴はできず、不服があれば2週間以内に同じ裁判所に異議を出します。裁判所は、相手の資力などを考えて、3年を超えない範囲で分割払いを命じる判決を出すこともあります(第375条)。
手続きの選び方:相手の反応と金額で分ける
どの手続きから始めるかは、次の分かれ道で考えます。
- 相手と連絡が取れ、借りたことを認めている → まず書面で請求し、分割の約束を書面にする話し合いから。合意できたら、強制執行できる公正証書にしておく方法もあります。
- 借りたことは認めているが、払わない・連絡を無視する → 支払督促が向いています。相手が争わなければ、書類のやり取りだけで強制執行できる段階まで進みます。
- 「借りていない」「もらったお金だ」と争いそう → 支払督促を出しても異議で通常の訴訟に移る可能性が高いので、最初から少額訴訟か通常の訴訟を考えます。証拠がそろっているかが分かれ目です。
- 金額が60万円以下で、証拠がそろっていて、1回で決着をつけたい → 少額訴訟。ただし相手が通常の手続きへの移行を求めると、通常の訴訟になります。
- 金額が大きい・争点が多い → 通常の訴訟。140万円を超えると地方裁判所の担当です(裁判所法第33条)。
支払督促は相手の住所地の簡易裁判所に出すので、相手が遠方に住んでいる場合、異議で訴訟に移ると、その地域の裁判所での手続きになりうる点も考えます。申立書の書き方は支払督促の申立書の書き方、各手続きの違いを受け取る側から見た説明は支払督促と通常訴訟・少額訴訟の違いにまとめています。
準備する証拠と、督促状(請求書)のテンプレート
どの手続きでも、「いつ・いくら貸し、いつ返す約束だったか」を示す材料が中心になります。
- 借用書・返済計画書・念書(あれば最も強い材料)
- 振込の記録(通帳や振込明細。現金で渡した場合は、引き出した記録とあわせて)
- LINE・メール・SMSのやり取り(「借りる」「返す」「来月返す」といった文面。日付が分かる形で保存)
- 一部が返ってきた記録(相手が借金を認めていた証拠になる)
- 相手の氏名・住所(書類を届けるために要る)
訴える前に、書面で請求するのが一般的な順番です。内容証明郵便で送ると、いつ・どんな内容の文書を送ったかを郵便局が証明します。民法第150条により、この請求(催告)をすると、その時から6か月は時効が完成しません。ただし時効が振り出しに戻るわけではなく、6か月以内に訴えや支払督促を起こす必要があります。
督促状の例:「請求書 ○年○月○日 ○○様 私は貴殿に対し、○年○月○日、金○万円を、返済期日を○年○月○日と定めて貸し渡しました。しかし期日を過ぎても返済がありません。つきましては、本書到着後○日以内に、下記口座へ金○万円をお支払いください。期限までにお支払いがない場合は、支払督促など法的な手続きをとることを検討します。(振込先口座)(差出人の住所・氏名)」
書面には、事実と求めることだけを書きます。「会社に知らせる」「家族に払わせる」などの言葉は、相手を追い詰めるだけでなく、脅しと受け取られるおそれがあるので書きません。
判決や支払督促の後:回収するための強制執行
判決や、仮執行宣言の付いた支払督促は「債務名義」と呼ばれ、これがあると相手の財産に強制執行(差押え)を申し立てられます(民事執行法第22条)。ただし、相手が払わない限り、お金は自動では戻ってきません。差し押さえる財産を自分で特定して申し立てる必要があります。
| 差し押さえる財産 | 知っておくこと |
|---|---|
| 給料 | 差し押さえられるのは原則として給料の4分の1まで。月額44万円を超えるときは、33万円を除いた額まで(第152条・裁判所Q&A) |
| 預金 | 銀行と支店を特定して申し立てる。第207条の手続きで、銀行等から預金の情報を取ることもできる |
| 勤務先が分からない | 市区町村などから勤務先の情報を取る手続き(第206条)は、養育費などの債権に限られ、貸したお金では使えない |
| 財産が分からない | 財産開示手続(第197条)で、相手を裁判所に呼んで財産を述べさせる手続きがある |
判決や支払督促で確定した権利の時効は10年になります(民法第169条)。手続きの流れと止め方の全体像は強制執行とは何かで扱っています。相手に財産も収入もない場合は、勝っても回収できないことがあるため、訴える前に相手の勤め先や口座の手がかりを確かめておきます。
自分で進めるか、弁護士・司法書士に頼むか
支払督促や少額訴訟は、裁判所が書式を公開しており、弁護士・司法書士に頼まず本人が申し立てることもできる手続きです。書式は裁判所のサイトの「申立て等で使う書類」にあり、支払督促の申立書は2026年5月の改正に合わせた版になっています。一方、相手が争って通常の訴訟になると、主張と証拠を書面で整理する作業が増えます。
依頼を考えるときは、140万円以下の簡易裁判所の事件なら認定司法書士も代理でき、それを超える場合や地方裁判所の事件は弁護士の担当になる、という線を目安にします。費用を払う余裕がない場合は、収入・資産が一定以下などの条件で、法テラス(日本司法支援センター)の無料相談や費用の立替えを使えます。窓口は借金の公的な相談窓口と受付時間で探せます。
訴える前に、強制執行できる公正証書を作って分割で返してもらう方法もあります。仕組みは借金の公正証書とはで、借りた側の話し合いの進め方は個人間の借金が返せないときで扱っています。相手の言い分を知ることは、どの手続きを選ぶかを決めるうえでも役に立ちます。
よくある質問
Q. 相手の住所が分からなくても、訴えることはできますか?
訴えは原則として相手の住所地の裁判所に起こし、書類は相手に届ける(送達する)必要があります。住所が分からない場合、通常の訴訟には裁判所の掲示による公示送達という方法がありますが、支払督促は公示送達によらずに送達できる場合に限られます。住所を調べる方法や手続きの選び方は、弁護士・司法書士に相談します。
Q. 支払督促と少額訴訟は、どちらが早く終わりますか?
支払督促は、相手が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、申立てによって仮執行宣言が付き、裁判所に行かずに書類だけで強制執行できる段階まで進みます。少額訴訟は、原則として1回の期日で審理を終え、その日のうちに判決が出ます。相手が異議を出したり通常の手続きへの移行を求めたりすると、どちらも通常の訴訟に移ります。
Q. 貸した日から何年たつと請求できなくなりますか?
2020年4月1日以後の貸し借りは、民法第166条により、請求できることを知った時から5年、請求できる時から10年で時効になります。それより前の貸し借りは改正前の決まりが使われます。時効が近いときは、訴えや支払督促を起こすと、手続きが終わるまで時効は完成しません(第147条)。
出典・参考にした公的な情報
- 民事訴訟法 第368条〜第380条・第382条〜第396条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟費用等に関する法律 別表第一・別表第二(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 手数料額早見表(令和8年9月15日改訂)(裁判所)
- 裁判手続 簡易裁判所の民事事件Q&A(裁判所)
- 改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要(裁判所)
- 民法 第147条・第150条・第166条・第169条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法 第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法 第22条・第152条・第197条・第206条・第207条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。