借金が返せないと裁判になる?訴えられるまでの流れと届く書類
借金を返せないまま滞納が続くと、裁判になることがあります。督促と一括請求に応じないでいると、債権者が裁判所に支払督促を申し立てるか、訴えを起こすことがあるからです。裁判所からの書類は「特別送達」と書かれた封筒で届き、支払督促なら受け取った日から2週間という期限があります。この記事では、裁判になるまでの順番と、届く書類の見分け方を1枚の図にまとめ、書類ごとの詳しい対応は別の記事へ案内します。
借金が返せないときに裁判になるまでの流れ
滞納から裁判までは、一般的に次の順で進みます。期間は債権者や契約によって違います。
- 督促:電話・SMS・督促状で請求される
- 期限の利益の喪失・一括請求:契約の条項に従い、残りの全額を一括で請求される
- 保証会社・債権回収会社からの請求:保証会社の代位弁済や債権の譲渡で、請求する相手が変わることがある
- 裁判所の手続き:支払督促の申立て、または訴えの提起
- 判決・仮執行宣言:言い分を出さないと、請求どおりの判決などが出ることがある
- 差押え:判決などをもとに給料・預金などを差し押さえる
督促から一括請求までの時期の目安は、借金を滞納したときの翌日から数か月後までの流れで説明しています。
請求額によって裁判所が分かれます。140万円以下の請求は簡易裁判所、140万円を超えると地方裁判所が扱います(裁判所法33条1項1号)。支払督促は、原則として債務者の住所地の簡易裁判所の書記官が出します(民事訴訟法383条)。
裁判所から届く書類の見分け方
裁判所から届く主な書類は4つです。どの段階の書類かで、期限とやることが違います。
| 書類 | どの段階か | 期限の目安 | 放置するとどうなるか |
|---|---|---|---|
| 支払督促 | 債権者の申立てだけで、書記官が出す最初の書類 | 送達を受けた日から2週間以内に督促異議 | 債権者の申立てで仮執行宣言が付く |
| 仮執行宣言付支払督促 | 異議が出なかった後の2通目 | 送達を受けた日から2週間以内に督促異議 | 確定判決と同じ効力。差押えができる |
| 訴状と口頭弁論期日呼出状 | 債権者が訴えを起こした | 呼出状に書かれた答弁書の提出期限と期日 | 請求どおりの判決が出ることがある |
| 判決 | 裁判所の判断 | 送達を受けた日から2週間(控訴の期間・民事訴訟法285条) | 確定すると差押えができる |
- 上段(支払督促の道):支払督促 →(2週間)→ 仮執行宣言付支払督促 →(2週間)→ 差押えへ
- 下段(訴訟の道):訴状・期日呼出状・答弁書の用紙 → 期日 → 判決 →(2週間)→ 差押えへ
- 合流点:差押命令(給料なら勤務先、預金なら銀行にも届く)
- 各書類の横に「出すもの」:督促異議申立書/答弁書/期日への出頭
- 欄外:封筒の表示「特別送達」と差出人の裁判所名を確かめる。番号は公式サイトで調べ直す
支払督促は、裁判所が債務者の言い分を聞かずに、債権者の申立ての内容だけを見て出すものです(民事訴訟法386条1項)。中身が正しいと裁判所が認めたわけではありませんが、2週間以内に異議を出さないと、債権者の申立てで仮執行宣言が付き、差押えができる書類になります。仮執行宣言が付いた後に異議を出しても、執行停止の手続きを取らない限り差押えは止まらないと、裁判所のQ&Aは案内しています。書類ごとの対応は支払督促が届いたときの異議申立ての期限と流れにまとめました。
訴状が届いた場合は、同封の答弁書の用紙に言い分を書いて出すか、期日に出頭します。最初の期日に出頭せず答弁書も出していないと、訴状に書かれたことを認めたものとみなされ、請求どおりの判決が出ることがあります(民事訴訟法158条・159条)。答弁書の書き方と期日の準備は借金で訴状が届いたときの答弁書と期日の準備で、欠席したときに起きることは借金の裁判を欠席したときの結果で説明しています。
なお、2026年5月21日から改正民事訴訟法が全面的に施行され、支払督促や判決は電子の形が正式なものになり、オンラインで異議や答弁書を出せる仕組みも始まりました。ただし、オンラインで書類を受け取る方法は、その方法で受け取ると裁判所に届け出た人だけが対象です(民事訴訟法109条の2)。届出をしていない人には、これまでどおり書類が郵便などで届きます。書き方は、届いた書類に同封の説明に従ってください。
本物の裁判所の書類か確かめる方法
裁判所は、裁判所や職員を名乗る詐欺に注意を呼びかけています。封筒に「特別送達」と書かれていたのに実際は普通郵便だった例や、「裁判所書記官室」名義のはがきの例が挙げられています。偽の書類に裁判所の正しい番号が書かれていた例もあります。
確かめる手順は次のとおりです。
- 書類に書かれた電話番号にはかけない
- 裁判所の公式サイトの「各地の裁判所の所在地・電話番号等一覧」で、書類の裁判所の番号を自分で調べる
- 事件番号を伝えて、その事件が本当にあるかを問い合わせる
- 振込先や現金の受け渡しを指定する連絡には応じない
偽の請求の見分け方は督促状の詐欺を見分ける方法にもまとめています。
書類が届いたら「無視しない」ために今日やること
裁判の書類が届いたときに一番避けたいのは、封を開けずに期限を過ぎることです。届いた日に次の4つをしてください。
- 封筒の差出人の裁判所名と、書類の名前(支払督促・訴状など)を確かめる
- 受け取った日をメモし、2週間の期限や答弁書の提出期限をカレンダーに書く
- 請求額・請求している会社・元の借入先を、手元の借入一覧と照らし合わせる
- 期限の前に、弁護士・司法書士か公的な窓口へ相談の予約を入れる
判決や仮執行宣言付支払督促が出ると、給料や預金の差押えに進むことがあります。給料は支払期に受ける額の4分の3(その額が月33万円を超えるときは33万円)が差押え禁止で、取り立てられるのは本人に差押命令が届いてから4週間後です(民事執行法152条・155条)。差押えの流れは差し押さえとは何かと借金で差し押さえられるまでの流れで確かめられます。
裁判になってからでも、話し合いで和解したり、債務整理を依頼したりする道はあります。債務整理の手続き中に訴えられた場合の扱いは債務整理中に訴えられたときの記事にまとめました。
簡易裁判所の手続き(請求が1社ごとに140万円以下の場合)は、認定司法書士も代理できます(司法書士法3条)。それを超える請求や地方裁判所の事件は弁護士に相談してください。どこに相談するか迷うときは、借金の相談窓口の番号・受付時間と選び方から公的な窓口を選べます。
裁判所から書類が届くと、逮捕を心配する人もいます。借金の請求を扱う民事の裁判と、刑事事件は別の手続きです。捕まる場合があるのかは借金が返せないと逮捕される?捕まる場合と捕まらない場合の違いで整理しています。
よくある質問
Q. 借金の額が少なくても裁判を起こされることはありますか?
額が少ないから裁判にならない、という決まりはありません。60万円以下の金銭の請求には少額訴訟という手続きもあり、支払督促は請求額にかかわらず使えます。実際に裁判を起こすかどうかは債権者の判断です。
Q. 裁判所の書類を受け取らなければ、裁判は進みませんか?
受け取らなくても裁判は進みえます。正当な理由なく受取を拒んだときは書類をその場に置いて届いたことにする差置送達や、書留郵便などで発送して届いたことにする方法が民事訴訟法で定められています。受け取って期限を確かめるほうが、言い分を伝える機会を残せます。
Q. 裁判になった後でも、分割払いの話し合いはできますか?
できる場合があります。訴訟の途中で債権者と話し合って和解することができ、簡易裁判所では、被告が争わない場合に裁判所が分割払いなどを定めて支払いを命じる決定(和解に代わる決定)の仕組みもあります。どちらも相手や裁判所の判断があるので、答弁書や期日で、払える額と事情を具体的に伝えることが出発点です。
出典・参考にした公的な情報
- 民事訴訟法 第109条の2・第158条・第159条・第275条の2・第285条・第382条〜第396条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 簡易裁判所の民事事件Q&A(裁判所)
- 改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要(裁判所)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法 第33条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法 第22条・第145条・第152条・第155条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所や裁判所職員を騙る詐欺にご注意ください(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。