借金が返せないと逮捕される?捕まる場合と捕まらない場合の違い
借金を返せないこと、返済が遅れていること自体で逮捕されることは、通常はありません。お金を借りて返す約束は民法の契約(金銭消費貸借)で、返済がないときの回収は、支払督促や訴訟、強制執行(差押え)といった民事の手続きで進むからです。ただし、借りるときに人をだました場合や、裁判所の手続きで財産を隠したり嘘をついたりした場合などは、刑事罰の規定があります。この記事では、その違いを分けて示します。
借金が返せないだけでは逮捕されない理由
借金は、民法587条の「消費貸借」という契約です。借りた人が約束どおり返さないとき、貸した側が取れる手段は、法律で次のように決まっています。
- 電話や書面で請求する(督促)
- 契約に従って残りの全額を一括で請求する
- 裁判所に支払督促を申し立てる、または訴えを起こす
- 判決や仮執行宣言付支払督促などをもとに、給料・預金などを差し押さえる(民事執行法22条)
この流れのどこにも、返済が遅れた人を警察が逮捕する手順はありません。借金の回収は、最後は裁判所を通じて財産から回収する仕組みです。裁判になるまでの流れと届く書類は、借金が返せないと裁判になるかと届く書類の記事で説明しています。
逮捕されないからといって、放置してよいわけではありません。放置すれば遅延損害金が増え、裁判で判決が出れば給料や預金が差し押さえられることがあります。逮捕の心配よりも、差押えの前に相談するほうが生活を守るうえで大事です。
刑事罰の規定がある行為(捕まる可能性がある場合)
返済が遅れたことではなく、次のような行為には刑事罰の規定があります。実際に罪になるかどうかは、事情に照らして捜査機関や裁判所が判断するものです。
| 行為 | 関係する規定 | 定められている刑 |
|---|---|---|
| 返すつもりがないのに借りる、収入や勤務先などを偽って借りるなど、人をだましてお金を受け取る | 刑法246条(詐欺) | 10年以下の拘禁刑 |
| 判決などを得た債権者の申立てによる財産開示の期日に、正当な理由なく出頭しない・嘘を述べる | 民事執行法213条 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 自己破産の手続きで、債権者を害する目的で財産を隠す・壊す・仮装の譲渡をする | 破産法265条(詐欺破産罪) | 10年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、またはその併科 |
| 破産や免責の申立てについての裁判所の審尋で、求められた説明を拒む・嘘の説明をする | 破産法271条 | 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科 |
- 左:返済が遅れている・返せない → 督促 → 一括請求 → 支払督促・訴訟 → 差押え(すべて民事の手続き)
- 右:借りるときに人をだました/財産開示に正当な理由なく出ない・嘘を言う/破産で財産を隠す・嘘の説明をする → 刑事罰の規定
- 中央の注記:右に当たるかは事情しだいで、判断するのは捜査機関と裁判所
表の1行目について、借りた後で収入が減って返せなくなったことは、借りるときにだましたこととは別のことです。自分の場合が当てはまるか不安なときは、弁護士に相談してください。
財産開示手続は、判決などを得た債権者が、強制執行で回収しきれなかったときなどに裁判所へ申し立てるものです(民事執行法197条)。裁判所から呼出しが届いたら、期日に出頭して財産を正直に述べることが求められます。
自己破産では、浪費やギャンブルで財産を大きく減らしたことなどが免責を認めない事情として破産法252条1項に挙げられていますが、これは借金が免除されるかどうかの話で、刑事罰とは別のものです。
業者や督促状が「逮捕」「警察」と言ってきたとき
督促の電話や書面で「警察に通報する」「刑事告訴する」「逮捕される」と言われると、強い不安を感じます。次の順で確かめてください。
- 相手が誰かを確かめる:会社名、担当者名、どの契約の請求かを聞きます。貸金業者は、取立ての相手方から求められたときにこれらを明らかにしなければなりません(貸金業法21条3項)。
- 書面の差出人を確かめる:契約書や会員ページに載っている会社か、登録のある貸金業者かを確かめます。
- 裁判所を名乗る連絡を疑う:裁判所は、裁判所や職員を名乗って金銭を求める詐欺に注意を呼びかけています。実在の裁判所の電話番号を悪用した電話や、実在する裁判官の氏名を冒用した令状をSNSで示された例も、注意喚起の中で挙げています。書類に書かれた番号ではなく、裁判所の公式サイトの一覧で番号を調べて問い合わせます。
登録している貸金業者が、人を威迫して取り立てることは、貸金業法21条1項で禁じられています。違反には2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の罰則があります(同法47条の3)。「逮捕」を持ち出して脅すような取立てを受けたときの連絡先と記録の残し方は取り立てが怖いときの禁止された取立てと連絡先の一覧に、書面に「警察」「刑事告訴」と書かれていたときの読み方は督促状に警察や刑事告訴とあったときの記事にまとめました。押しかけられたり脅されたりして身の危険を感じるときは、記録より先に110番で警察へ連絡してください。
登録のない業者(ヤミ金)からの借入れで脅されている場合は、返済の話の前に身の安全と相談が先です。対応は闇金の被害は警察に相談できるかと連絡が来たときの対応・相談先で説明しています。
返せないと分かったときに逮捕より心配すべきこと
返済が遅れたときに実際に起きるのは、遅延損害金、信用情報への記録、一括請求、裁判、差押えです。これらは、返済日の前の連絡や、早めの相談で止めたり軽くしたりできる段階があります。
- 返済日に間に合わないと分かったら、払える日と額を業者に伝える(借金の返済ができないときの業者への連絡の仕方と文例)
- 滞納すると時期ごとに何が起きるかを知っておく(借金を滞納したときの翌日から数か月後までの流れ)
- 返済が続けられないなら、公的な窓口や弁護士・司法書士に相談する(借金の相談窓口の番号・受付時間と選び方)
逃げたり連絡を絶ったりすると、書類が届かないまま裁判が進むことがあります。逮捕を恐れて隠れるより、相談の場に今の状況を持ち込むほうが、取れる手は多く残ります。
よくある質問
Q. 借金を返せないまま引っ越したり連絡を絶ったりすると、逮捕されますか?
引っ越しや連絡を絶つこと自体を罰する規定は、借金の回収の仕組みの中にはありません。ただ、連絡がつかないと書類が届かないまま裁判が進み、判決をもとに給料や預金を差し押さえられることがあります。住所が変わったら借入先に届け出て、払えない事情を伝えるほうが、選べる手を残せます。
Q. 家族の借金を自分が返さないと、自分が罪に問われますか?
保証人になっていない家族の借金を、あなたが返す法律上の義務はありません。返さないことで罪に問われることもありません。業者が保証人でない家族に代わりに払うよう求めることは、貸金業法21条1項7号で取立ての禁止行為とされています。
Q. 自己破産をすると前科がつきますか?
破産は借金を整理するための裁判所の手続きで、刑罰ではありません。前科につながりうるのは、財産を隠したり裁判所に嘘の説明をしたりして、破産法の罰則に当たる行為をした場合です。手続きの中で求められたことに正直に答えることが大切です。
出典・参考にした公的な情報
- 刑法 第246条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第587条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法 第22条・第197条・第213条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第252条・第265条・第271条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法 第21条・第47条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所や裁判所職員を騙る詐欺にご注意ください(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。