家族の借金があると生活保護は受けられない?世帯の扱い
家族の誰かに借金があっても、生活保護は申請できます。 法律の要件は、利用できる資産・能力などを生活のために活用しても、なお最低限度の生活を維持できないことで、「借金がないこと」は入っていません。ただし、保護は世帯を単位に要否を決めるため、同じ世帯の人の収入・資産は合わせて見られ、借金そのものは保護で消えません(保護費から住宅ローンを返す扱いは、厚生労働省が「原則として認められない」と答えています)。この記事は、世帯の中に借金のある人がいる場合の扱いと親族への扶養照会のしくみを整理し、申請の流れは借金があっても生活保護は受けられる?申請の流れと返済の扱いにあります。
借金のある家族がいても申請できる:場面別の早見表
生活保護法2条は、法律の要件を満たす限り、保護を無差別平等に受けられるとしています。要件にあたるのは、4条1項の「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、最低限度の生活の維持のために活用すること」です。家族に借金があるかどうかは、この要件に出てきません。
| 場面 | 申請できるか | 見られる点・注意 |
|---|---|---|
| 同じ世帯の配偶者・子・親が借金をしている | できる | 世帯全体の収入・資産で最低生活費を満たすかを見る。借金そのものは要件ではない |
| 自分に借金があり、家族は借金がない | できる | 借金は保護で消えない。督促への対応は別に考える |
| 住宅ローンが残る持ち家がある | できる(厚生労働省のQ&A) | 保護費からローンを返すことは原則として認められない |
| 別に暮らす親・きょうだいに借金がある | できる | 世帯の人ではないので、収入・資産は合算されない。扶養の可能性の調査は別に行われる |
| 自分が家族の保証人・連帯保証人になっている | できる | 保証の責任は残る。請求書を持って借金の整理の窓口へ |
生活保護は世帯単位が原則です(法10条。ただし、これによりがたいときは個人を単位とすることもできるとされています)。厚生労働省のQ&Aも、原則として世帯を単位に保護を決定・実施するとし、両親だけが保護を受けられる場合があるなど、個別の事情で例外があるので福祉事務所に相談するよう案内しています。世帯をどう分けて考えるかは窓口の判断になるため、同居の家族の借金や収入が心配なときは、申請前の相談で伝えます。
世帯の借金は、保護費でどう扱われるか
保護費は、厚生労働大臣の定める基準で計算した最低生活費から、世帯の収入を引いた差額です。最低生活費は、住んでいる地域や世帯の構成などで違います。
- 保護費から借金を返すこと:厚生労働省のQ&Aは、住宅ローンについて、保護費から返済することは最低限度の生活を保障する制度の趣旨から原則として認められない、と説明しています。ほかの借金(カードローン、リボ払い、家族の借金の返済など)について、このQ&Aに書かれた答えはありません。保護費は最低限度の生活のための費用なので、借金の返済にあてる前提で家計を組むと生活が回らなくなります。借入先と残高は、担当のケースワーカーに見せて、返済の扱いを確かめます。
- 督促は止まらない:生活保護は借金の契約を変えません。返済日が過ぎれば、業者から督促が届きます。督促を止める、借金を減らすには、債務整理などの手続が必要です。
- 保護費は差し押さえできない:生活保護法58条は、すでに受けた保護金品と保護を受ける権利を差し押さえられないと定めています。
- 借金の整理の窓口:法テラスなどで、費用の立替えを使いながら債務整理を相談できます。受給中の進め方は生活保護を受けながら債務整理する方法|法テラスの費用の扱いで説明しています。
文例(福祉事務所の面談で):「同居の家族に借金があり、返済のために生活費が足りなくなっています。借入先と金額の一覧を持ってきました。督促が届いているので、借金の整理の窓口もあわせて教えてください」
借金のことを話すと不利になる、という心配は、法律の要件の上では当てはまりません。借金の状況を伝えたほうが、生活の立て直し全体の相談がしやすくなります。
親族への扶養照会:行われる場合と行われない場合
生活保護の申請では、親やきょうだいなどの扶養義務者に、援助できるかを問い合わせる「扶養照会」が行われることがあります。生活保護法4条2項は、民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるとしています。ただし、厚生労働省の事務連絡(令和3年2月26日)は、これは「保護の要件」とは違う位置づけで、扶養の可否が保護の要否の判断に影響を及ぼすものではない、と述べています。
事務連絡が示す調査の順序は、次のとおりです。
- 扶養義務者がいるかを確かめる(本人の申告が基本。必要に応じて戸籍謄本などで確認)
- いる場合は、扶養の可能性を調べる(金銭の援助だけでなく、精神的な支援の可能性も確認する)
- 調べた結果、「扶養義務の履行が期待できない」と判断された人には、慎重な検討のうえで、直接の照会を行わない取扱いができる
- 直接の照会は、「期待できる」と判断された人に対して行う。「期待できない」とされた人でも、生活保持義務関係(夫婦、親と中学3年生以下の子)にあたる場合は、関係機関への調査(関係先調査)は行う
「期待できない」と判断される類型として、事務連絡は次の例を挙げています。
| 類型 | 例 |
|---|---|
| 扶養が難しい立場の人 | 被保護者、施設入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる専業主婦・主夫など)、未成年者、おおむね70歳以上の高齢者 |
| 特別な事情があり、明らかに扶養できない | 要保護者がその人に借金を重ねている、相続をめぐって対立している、縁が切れているなど著しい関係不良。一定期間(例:10年程度)音信不通で交流が断絶している場合も含む |
| 扶養を求めると自立を阻害する | 夫の暴力から逃れてきた母子、虐待の経緯がある人など |
家族の借金に関わる点として、「当該扶養義務者に借金を重ねている」場合が例に入っています。親や兄弟に借金を重ねてきて関係が悪化している、という事情は、窓口で具体的に伝える価値があります。この事務連絡は令和3年のもので、運用の細部は自治体で違う場合があります。今の取扱いは、福祉事務所の窓口で確かめてください。
申請の前に準備すること
申請の窓口は、住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です(福祉事務所のない町村では、町村役場でも手続ができます)。申請書は原則として提出しますが、書けない特別な事情があれば、書面がなくても申請できます。決定は原則14日以内、特別な理由があるときは最長30日です。
- 世帯の一覧を作る:同じ家で暮らしている人、収入のある人、借金のある人を書き出す
- 借入れの一覧を作る:借入先、残高、月の返済額、督促の有無(家族のものも含めて把握できる範囲で)
- 通帳・給与明細・年金の通知書をそろえる:申請時の調査で、世帯の収入・資産が分かる資料の提出を求められることがある
- 親族の事情をまとめる:連絡の取れない親族、関係が悪い親族、借金を重ねている親族の有無と経緯
- 当面の生活費の見通しを立てる:決定までの生活費がない場合、社会福祉協議会の「臨時特例つなぎ資金貸付」を使える場合があると厚生労働省のQ&Aは案内しています
生活費が足りなくなる前の段階で使える相談先は、生活費が足りないときの公的な相談先|家計改善支援と住居確保給付金で扱っています。借金の原因がギャンブルで、家族としてどうするか迷うときは、夫のギャンブル借金で離婚を考えたら|話し合いの前に整理することも参考になります。
音信不通になった家族の借金と扶養の扱いは借金を抱えた家族が行方不明になったら|行方不明者届と借金の扱い・督促への対応にあります。
よくある質問
Q. 同居している夫(妻)が借金をしている場合、世帯全体が受けられなくなりますか?
借金があることだけで受けられなくなる決まりはありません。厚生労働省のQ&Aは、住宅ローンがあるために保護を受けられないことはないと答えています。保護は世帯の収入と資産を合わせて、最低生活費に足りるかどうかで判断されます。家族の借金の額や督促の状況は、窓口で隠さずに伝えておくと、あとで借金の整理の窓口につなぐ相談がしやすくなります。
Q. 申請すると、親やきょうだいの全員に連絡が行きますか?
一律に行くわけではありません。厚生労働省の事務連絡は、扶養照会は「扶養義務の履行が期待できる」と判断された人に行うもの、と整理しています。その親族に借金を重ねている、相続をめぐって対立している、縁が切れている、おおむね10年程度音信不通、DVや虐待の経緯がある、といった場合は、照会を行わない取扱いがあります。事情は、窓口の面談のときに具体的に伝えてください。
Q. 家族の借金の連帯保証人になっています。生活保護を受けると、請求はどうなりますか?
保護を受けても、保証人としての責任は消えません。保護費は受け取った後も差し押さえできない決まりがありますが、借金そのものは残るので、債権者から請求が届くことがあります。保護費から返す前提では生活できないので、請求書を持って、法テラスや弁護士・司法書士に債務整理の相談をします。生活保護を受けながらの整理は、別の記事で説明しています。
出典・参考にした公的な情報
- 生活保護法 第2条・第4条・第10条・第58条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 生活保護制度(厚生労働省)
- 「生活保護制度」に関するQ&A(厚生労働省)
- 扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について(令和3年2月26日事務連絡)(厚生労働省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。