借金を抱えた家族が行方不明になったら|行方不明者届と借金の扱い・督促への対応
借金のある家族と連絡が取れなくなったら、命に関わる心配があるかどうかを先に考えます。 遺書やそれらしい言葉があった、体調や気持ちが追い込まれていた、といった事情があるなら、110番か最寄りの警察署に連絡して行方不明者届を出します。保証人などになっていない家族に、借金を代わりに払う義務は原則としてありません。この記事は、届出の出し方、借金と家族の関係、督促への対応の順に整理します。
本人の言葉に「死にたい」とあったとき、または自分自身がそう考えてしまっているときは、借金の話より先に、#いのちSOS(0120-061-338、毎日24時間)に電話してください。借金が背景にあるつらさは、借金で死にたいと思ったとき|24時間つながる相談先と最初の一歩に窓口をまとめています。
まず警察へ:行方不明者届の出し方
「借金の問題だから警察は動かない」と考えて届出をためらう人もいますが、警察の案内に、借金があると届出できない、という記載はありません。警察は、「生活の本拠を離れ、その行方が明らかでない者」を行方不明者として届出を受理するとしています。
- 命に関わる心配があるとき:110番に通報、または最寄りの警察署へ行く
- 緊急ではないが相談したいとき:警察相談専用電話 #9110(ダイヤル回線と一部のIP電話は使えない。受付時間は都道府県警察で違う)
- 届出先:行方不明者が行方不明になった時の住所・居所を管轄する警察署、行方不明になった場所を管轄する警察署、届出人の住所・居所を管轄する警察署(警視庁の案内)
- 持っていくもの:行方不明者の写真、届出人の身分証、関係資料(残したメモや手紙など)
- 受理後:警察のコンピューターに登録され、全国の警察に手配される(大阪府警察の案内)
届出ができる人は、大阪府警察の案内によると、行方不明者の親権者・後見人、配偶者(事実上の婚姻関係にある人を含む)その他の親族、現に監護している人、福祉事務所の職員など福祉に関する事務に従事する人、同居者・雇主など社会生活で密接な関係にある人です。詳しくは最寄りの警察署に確かめてください。
届出の前に、次の情報をメモにしておくと、窓口で話が早く進みます。
- 本籍・住所・職業・氏名・生年月日など、本人を特定する情報
- 身長・体格・髪型・血液型などの身体の特徴
- 服装や所持品
- 行方不明になった日時・場所、その原因・動機として思い当たること
- そのほか、発見の参考になること(立ち寄りそうな場所、よく連絡を取る相手など)
届出の方法や受付について分からないことは、警視庁の場合、行方不明者電話相談室(03-5281-0123、平日8時30分から17時15分)で聞けます。ほかの道府県は、管轄の警察署や警察本部に確かめます。
家族が借金を代わりに払う義務はあるか
借金を返す義務を負うのは、お金を借りる契約をした本人です。行方不明になっても、その義務が家族に移ることはありません。ただし、次の立場なら、家族にも請求が来ます。
| 家族の立場 | 請求が来るか | 根拠と確かめ方 |
|---|---|---|
| 契約していない家族(親・子・きょうだい・配偶者) | 原則なし | 契約書に自分の名前がないか確かめる |
| 保証人 | 来る | 保証は書面で結ぶ(446条2項)。主たる債務者の行方が知れないときは、「まず本人に請求して」と言う権利もない(452条ただし書) |
| 連帯保証人 | 来る | 「まず本人に請求して」と言う権利がもともとない(454条) |
| 夫婦で、日常の家事に関する債務 | 連帯して責任を負うことがある | 761条。範囲は条文になく、事情で判断される |
| 本人が亡くなった場合の相続人 | 借金を引き継ぐ場合がある | 相続放棄は知った時から3か月以内に家庭裁判所へ |
扶養義務(民法877条)は、直系血族と兄弟姉妹が互いに生活の面倒をみる義務で、借金を代わりに返す義務ではありません。保証人でない限り、親族であることだけでは、請求の根拠になりません。
行方不明のまま、本人の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求により失踪の宣告をすることができ(民法30条)、宣告を受けた人は期間が満了した時に死亡したものとみなされます(31条)。その場合は相続が始まるので、借金の扱いは、そのときの状況に合わせて、家庭裁判所や弁護士・司法書士に確かめます。
業者からの督促が来たとき
本人宛ての督促状や、貸金業者・債権回収会社からの電話が家族に届くことがあります。
- 本人宛ての郵便は開封しない:差出人・日付・会社名を、封筒のままメモや写真で記録しておきます。
- 電話では、自分の立場だけを伝える:保証人でないなら、そう伝えます。本人の契約の内容や、本人の事情まで話す必要はありません。
- 名乗りと請求の内容をはっきりさせる:貸金業者や取立てを委託された者は、相手方から請求があれば、貸金業者の商号と取り立てを行う者の氏名などを明らかにしなければなりません(貸金業法21条3項)。支払いを催告する書面には、契約年月日、貸付けの金額、利率、催告する金額などの記載も求められています(同条2項)。電話だけで済ませず、請求の中身は書面で送るよう頼みます。
- 記録を取る:日時、相手の名乗り、言われたこと。
文例(保証人でない家族として):「私はこの借金の保証人になっていません。本人とは連絡が取れていない状況で、私が代わりにお支払いすることはできません。私への連絡は控えてください。請求の内容は書面で送ってください」
貸金業者が、債務者や保証人以外の家族に、代わりに払うよう求めることは、貸金業法21条1項7号で禁じられています。本人の居場所を知らせるなどの協力を家族が断ったのに、さらに協力を求めることも、同項8号で禁じられています。こうした取り立ての対応は、借金で家族に取り立てが来たら?払う義務の有無と業者への伝え方にくわしく書いています。夜間の電話や自宅への押しかけなど、怖い思いをするときは、110番、または#9110に連絡してください。禁止行為の一覧と連絡先は取り立てが怖いとき|法律で禁止されている取立てと連絡先の一覧にあります。
本人と連絡が取れたあと、借金をどう整理するか
連絡が取れて、本人の無事が確かめられたら、次に借金の整理を考えます。夜逃げという形で姿を消した場合の考え方と、その前に使える相談先は、借金で夜逃げしたら警察は?その前に知ってほしい相談先と手続きに整理しています。
家族が、本人を責めずにまず安心を伝えること、そして整理の窓口に本人がつながることが大切です。
- 本人の無事を確かめ、命や健康の心配がないか聞く
- 借入れの一覧(借入先、残高、督促状)を、本人と一緒に作る
- 本人が、財務局・自治体の窓口、法テラス、弁護士会・司法書士会に相談する。家族は同行や書類集めを手伝う
- 家族が保証人になっている場合は、保証の契約書を持って、本人と一緒に、または家族として相談する
借金の相談先と番号は、借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方に、家族としての全体の考え方は家族の借金は払う義務がある?発覚したときの確認と本人を相談につなぐ手順にあります。
よくある質問
Q. 借金が原因で姿を消した家族でも、警察は行方不明者届を受け付けますか?
警察は、生活の本拠を離れ、その行方が明らかでない人を行方不明者として届出を受理するとしています(大阪府警察の案内)。この定義に、姿を消した理由は含まれていません。借金の有無で受けるかどうかが決まる、という記載は確かめた案内にはありません。事情は、届出のときに聞かれるので、分かる範囲で伝えます。
Q. 本人が行方不明でも、保証人になっている家族に請求は来ますか?
来ます。保証人は、債権者から請求されたとき、まず主たる債務者に請求するよう求められますが、主たる債務者の行方が知れないときはその権利がありません(民法452条ただし書)。連帯保証人は、もともとその権利がありません(454条)。契約書の署名欄で自分の立場を確かめ、請求が来たら、書面を持って借金の整理の窓口に相談します。
Q. 行方不明になった家族が、もし亡くなったと分かったら、借金はどうなりますか?
亡くなった人の借金は、相続人に引き継がれる場合があります。引き継ぎたくないときは、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄を申し出ます。故人の預金を使うなど、財産に手をつける前に、家庭裁判所や弁護士・司法書士に確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 行方不明者相談のご案内(警視庁)
- 行方不明者の届出(Q&A:届出ができる人)(大阪府警察)
- 行方不明者の届出(Q&A:届出先・準備するもの)(大阪府警察)
- 行方不明者届とは・届出先・準備するもの(Q&A 1・2・4)(大阪府警察)
- ご意見、各種相談・情報提供等(緊急通報は110、緊急でない相談は#9110)(警察庁)
- 貸金業法 第2条・第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第30条・第31条・第446条・第452条・第454条・第761条・第877条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 警察相談専用電話「#9110」(利用できない回線と都道府県別の番号)(警察庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。