連帯保証人の極度額とは?2020年の民法改正で必要になった上限の定め
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連帯保証人の極度額とは、保証人が払う責任の上限額のことです。賃貸の借主の債務のように、これから増えていく不特定の債務を個人が保証する契約(個人根保証契約)では、極度額を書面で決めておかないと保証の効力が生じません(民法465条の2)。この決まりは2020年(令和2年)4月1日の民法改正で、賃貸などを含むすべての個人根保証に広がりました。極度額は法律が一律の金額を決めるものではなく、契約の当事者が話し合って契約書に書く額です。
極度額とは:個人の根保証で、保証人が払う上限額
民法465条の2は、次の3つを定めています。
- 1項:一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)で、保証人が法人でないもの(個人根保証契約)の保証人は、元本、利息、違約金、損害賠償その他その債務に付随するもの全部について、極度額を限度として責任を負う
- 2項:個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じない
- 3項:極度額の定めは書面(電磁的記録を含む)でしなければならない
つまり極度額は、保証人の責任に天井をつける仕組みです。実際の滞納額が極度額より少なければ、払うのは実際の額です。たとえば極度額が100万円で、滞納家賃40万円と原状回復費用30万円、遅延損害金3万円で合計73万円なら、保証人が払うのは73万円です。合計が130万円なら、保証人の責任は100万円までで、残りの30万円は保証人には請求できません(筆者の計算例)。
極度額は、保証人の責任の上限であって、借主本人の責任は軽くしません。借主は、極度額と関係なく全額の支払い義務を負います。
保証人が法人(家賃債務保証会社など)の場合は、この規定の対象外です。
「根保証」は、貸金だけでなく賃貸借にも広く使われます。法務省の資料は、貸金等債務以外の根保証の例として、不動産の賃借人が賃貸借契約から負う債務の一切を個人が保証する契約と、介護・医療などの施設の入居者の債務を保証する契約を挙げています。
2020年4月1日の前と後で何が変わったか
改正前は、極度額の定めが必要なのは、お金の貸し借り(貸金等債務)を含む根保証だけでした。賃貸借の保証では、極度額の定めは法律上の要件ではありませんでした。改正後は、賃貸借や入居施設の債務を含めて、個人が保証人になるすべての根保証契約に極度額が必要です。
| 項目 | 2020年3月31日までの契約 | 2020年4月1日以降の契約 |
|---|---|---|
| 極度額が必要な根保証 | 貸金等債務を含む根保証のみ | 個人が保証人になるすべての根保証(賃貸借・入居施設を含む) |
| 賃貸の保証で極度額がない場合 | 契約は有効(旧法のまま) | 保証は効力を生じない |
| 根拠 | 平成29年改正法附則21条1項(施行日前の保証契約は従前の例) | 民法465条の2第2項 |
賃貸では、更新のときの扱いに注意が要ります。国土交通省の標準契約書Q&Aは、次のように説明しています。
- 施行前に結んだ賃貸借の保証契約は、改正民法の施行後に初めて合意更新されるまでは、極度額の定めがなくても有効
- 賃貸借契約が合意更新され、保証契約も合意更新された場合や、新しい保証契約を結んだ場合は、改正民法が適用される。つまり極度額の設定が必要になる
賃貸の保証で極度額が書かれていなくて困ったときは、賃貸の連帯保証人の責任|家賃滞納の請求で払う範囲と請求書の確かめ方で、請求が来たときの確かめ方まで続けて読めます。
極度額の決め方と書き方:法律に上限も相場もない
民法には、極度額を何円までにすべきかという上限や相場の定めはありません。当事者が話し合って決めます。国土交通省の参考資料も、具体的な極度額は貸主と連帯保証人などの関係当事者の間で十分に協議する必要があるとしています。標準契約書のQ&Aは、協議が整わないときは保証契約は成立しないとし、家賃債務保証業者の利用を例に挙げています。
書き方は、次のいずれかが考えられるとされています。
- 「〇〇円」と金額で書く
- 「契約時の月額賃料の〇か月分」と書く(契約時の月額賃料が基準で、あとで賃料が上がっても極度額は変わらない)
- 「〇〇円(月額賃料の〇か月相当分)」のように併記する
極度額の目安を知りたい人のために、国土交通省の資料では、判決で連帯保証人の負担が確定した額の中央値は月額家賃の12か月分でした(原状回復費用などを含む)。表と内訳は賃貸の連帯保証人の責任|家賃滞納の請求で払う範囲と請求書の確かめ方にあります。
保証人が極度額の範囲の一部を払ったときは、その分だけ極度額が減り、残りが上限になると、標準契約書のQ&Aは説明しています。借主が学生で、親が連帯保証人のまま毎月の家賃を振り込んでいる場合は、その家賃は契約者本人の支払いとして扱われ、極度額は減らないと考えられると、同じQ&Aにあります。
極度額が決まっても残る「元本確定」と、契約書で確かめる順番
根保証の保証人の責任は、元本が確定した時点までに生じた債務に絞られます。民法465条の4第1項は、次の場合に元本が確定すると定めています。
- 債権者が保証人の財産に強制執行や担保権の実行を申し立て、手続きが始まったとき
- 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
- 主たる債務者(借主)または保証人が死亡したとき
確定したあとに借主が新しく負った債務は、保証の対象に入りません。ただし賃貸借のような貸金以外の根保証では、借主が破産しただけでは元本は確定せず、保証は続きます(465条の4第2項は貸金等を含む根保証だけに定めています)。お金の貸し借りを含む根保証(個人貸金等根保証契約)は、さらに元本確定期日が決められます。期日を契約日から5年を超える日とする定めは効力を生ぜず、定めがなければ契約日から3年を経過する日が元本確定期日です(民法465条の3)。賃貸借の根保証には、この元本確定期日の制限はありません。亡くなった保証人の扱いは連帯保証人の立場は相続される?亡くなった親が保証人だった場合で説明しています。
手元の契約書で、極度額を確かめる順番を示します。
- 保証契約の日付を見る(2020年3月31日以前か、4月1日以降か)
- 「極度額」の欄に金額か「月額賃料の〇か月分」が書かれているか見る
- 保証人本人の署名・押印があるか見る(書面でなければ保証は効力を生じません。民法446条2項)
- 契約の更新を重ねている場合は、更新のたびに保証契約を結び直したか確かめる
- 極度額が空欄、または日付が2020年4月以降なのに記載がないときは、契約書の写しを持って弁護士や法テラスに相談する
連帯保証人から外れる方法を考えているなら、連帯保証人の解除はできる?外れられる場合と話し合いの方法が次の記事です。連帯保証人と保証人の基本は連帯保証人とは?保証人との違いと借金を代わりに払う範囲にあります。
よくある質問
Q. 極度額を超える請求が来たら、超えた分も払わなければなりませんか?
個人の根保証の保証人は、元本・利息・違約金・損害賠償など保証の対象になるものすべてについて、極度額を限度として責任を負います(民法465条の2第1項)。超えた分は、保証人には請求できません。ただし、極度額が書面で有効に定められているか、契約日が2020年4月1日以降かを先に確かめてください。借主本人への請求は、極度額の影響を受けません。
Q. 金額と返済期間が決まった1本のローンを保証した場合も、極度額は必要ですか?
極度額の規定は、「一定の範囲に属する不特定の債務」を保証する根保証契約が対象です。借入額が決まった特定の借入れ1本の保証は、根保証にあたらず、この規定の対象ではありません。ただし、契約書の題名だけでは区別できないので、保証の範囲がどう書かれているか(継続的な取引から生じる債務か)を確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第465条の2〜第465条の4・平成29年改正法附則第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法の一部を改正する法律(債権法改正)の主な改正事項(保証に関する見直し)(法務省)
- 民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A(国土交通省)
- 極度額に関する参考資料(平成30年3月30日)(国土交通省)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。