連帯保証人の立場は相続される?亡くなった親が保証人だった場合
連帯保証人の立場も、亡くなった人の借金と同じく、相続の対象になります。民法896条は、相続人が亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐと定めていて、保証債務はこの義務に入ります。ただし、賃貸のような根保証は、保証人が亡くなった時点で元本が確定し、その後に新しく生じる債務は保証の対象に入りません(民法465条の4第1項3号)。引き継ぎたくないときは、相続の開始を知ってから3か月以内に、相続放棄か限定承認を家庭裁判所に申し立てます。
保証債務は相続される:保証の種類と立場で結論が変わる
亡くなった人が保証人だったのか、借主だったのか、保証の種類は何かで、相続人が負うものが変わります。
| 亡くなった人の立場 | 起きること | 根拠 |
|---|---|---|
| 特定の借入れ1本の連帯保証人 | 保証債務は相続人が引き継ぐ。主債務者が払えなければ、相続人に請求が向かう | 民法896条・899条(各相続人は相続分に応じて引き継ぐ) |
| 根保証(賃貸の保証など)の保証人 | 死亡で元本が確定する。確定までに生じていた債務は相続の対象で、死亡後の新しい債務は保証の対象外 | 民法465条の4第1項3号。標準契約書17条3項も同じ |
| 借主(主債務者)で、子が連帯保証人 | 借主の借金は相続人が引き継ぐ。保証人である子の責任も続く。根保証は借主の死亡で元本が確定する | 民法896条・465条の4第1項3号 |
「引き継ぐ」といっても、主債務者が約束どおり払っている間は、債権者が保証人に請求する理由がなく、請求は来ないのが通常です。主債務者が払えなくなったときに、はじめて請求が現実になります。そのため、保証債務が見つかった時点で、主債務の残額と主債務者の返済状況を確かめることが、判断の出発点になります。
相続人が複数いるときは、法定相続分に応じて引き継ぎます(民法899条)。保証した借金の請求書が来たら、相続人全員に影響する話なので、きょうだいにも早く伝えてください。
親が連帯保証人だったかを調べる手がかり
保証債務は、亡くなった人本人の借入れと違い、通帳に引き落としが出ないことが多く、気づきにくい借金です。手がかりを順に探します。
- 郵便物と契約書類:金融機関、保証会社、管理会社、裁判所からの封書。賃貸借契約書や金銭消費貸借契約書の写し。保証人欄に名前があるか
- 子や親族の契約:子の賃貸、奨学金、住宅ローン、事業の融資で、親が保証人になっていないか。親族の誰が親を保証人に頼んだかを聞く
- 信用情報の開示:クレジット契約の相手がCICの会員で、保証人としての審査をして契約した場合は、保証人になった事実が登録されます(CICのFAQ)。相続人が亡くなった人の情報の開示を申し込む方法は、親が死亡したら借金を調べる方法|信用情報の開示と郵便物の確認にあります
- 借主に直接聞く:保証を頼んだ側の人(子や親族)に、親が保証人になっている契約があるか尋ねる
注意点があります。信用情報に保証の記録がないことは、保証がないことの証明になりません。審査を経ていない保証や、信用情報機関に登録されない契約は載らないためです。CICの会員でない相手との契約(個人間の借入れの保証など)は、CICには載りません。手がかりを複数当たってください。
相続の3つの選び方と、保証債務で見る判断材料
亡くなった人の財産と借金のうち、何を引き継ぐかは、次の3つから選びます。どれを選ぶかの期限は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月です(民法915条1項。家庭裁判所に申し立てて伸長できます)。
| 選び方 | 保証債務への影響 |
|---|---|
| 単純承認(3か月で何もしないと、この扱い。921条2号) | 保証債務も引き継ぐ |
| 限定承認(相続人全員で申述。923条) | 引き継ぐが、責任は相続した財産の範囲にとどまる |
| 相続放棄(家庭裁判所に申述。938条) | 保証債務を引き継がない。プラスの財産も受け取れない |
3つの選び方の一般的な比較は借金は相続される?親が亡くなった後に確かめる順番と期限にあります。
保証債務がある場合に、判断の材料になるのは次の4点です。
- 保証した借金の残額と、主債務者の返済状況(債権者に尋ねる)
- 根保証なら、極度額(契約書の上限)。極度額の意味は連帯保証人の極度額とは?2020年の民法改正で必要になった上限の定めで説明しています
- 亡くなった人のプラスの財産(預貯金、不動産など)の額
- 亡くなった人の、保証以外の借金の有無
保証だけを選んで放棄することはできません。放棄は、相続した権利義務の全体を引き継がないという選択です。放棄を考えるなら、亡くなった人の預金を引き出して使う、車や家財を売るなど、相続財産の処分をしないでください。処分すると単純承認とみなされることがあります(民法921条1号)。放棄の期限、費用、続柄ごとの書類は借金の相続放棄|3か月の期限と手続きの流れ・してはいけないことに、限定承認の仕組みは限定承認とは?借金と財産のどちらが多いか分からないときにあります。
裁判所の案内では、相続放棄も限定承認も、申述先は亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所で、費用は収入印紙800円分(放棄は申述人1人につき)と連絡用の郵便切手です。借金全体の見通しは借金は相続される?親が亡くなった後に確かめる順番と期限で確認できます。
請求が来たとき、放棄したあとのこと
債権者から請求が来たら、保証契約書の写しと請求の内訳(主債務の残額、保証の範囲)を書面で求めます。主債務者に頼んで払ってもらえるのか、保証人の責任を引き継ぐ範囲はどこまでかを確かめるまで、払う約束や支払いは控えてください。
相続放棄をすると、次の順位の人が相続人になります。亡くなった親の子が全員放棄すると、親の親(祖父母)、さらに亡くなった親のきょうだいへ移ることがあります(亡くなった親に配偶者がいれば、配偶者は常に相続人です)。放棄したことを次の順位の親族に伝えておくと、その人たちも3か月の期限に間に合う形で判断できます。放棄したあとに債権者から請求が来たときの対応は、相続放棄した後に督促が来たら|伝えることと証明の出し方にあります。
自分が相続人であると同時に、保証人でもある人は、保証人としての責任が別に残ります。その場合は連帯保証人の解除はできる?外れられる場合と話し合いの方法で、外れる道を確かめてください。
よくある質問
Q. 親が連帯保証人だったと3か月を過ぎてから分かりました。もう放棄できませんか?
3か月の起点は、親が亡くなった日ではなく「自己のために相続の開始があったことを知った時」です(民法915条1項)。保証に気づいた時期が起点になるとは限らず、事情で扱いが変わります。期限を過ぎたと思っても、あきらめずに、すぐに弁護士や司法書士、家庭裁判所に事情を伝えて相談してください。放棄を考えるなら、亡くなった人の財産には手を付けないでおきます。
Q. 相続放棄をすれば、自分が連帯保証人になっている契約の責任も消えますか?
消えません。相続放棄は、亡くなった人の権利義務を引き継がないという効果です(民法939条)。自分自身が結んだ保証契約の責任は、相続とは別の契約から生じるものなので、放棄しても残ります。親が借主で自分が保証人という組み合わせでは、この点が見落とされがちです。
Q. 賃貸の保証人だった親が亡くなりました。子の家賃は親の遺産から払うのですか?
家賃は借主本人が払うもので、保証人だった親の相続とは別の問題です。親の保証は、死亡で元本が確定し(民法465条の4第1項3号)、死亡後に新しく生じる家賃などは親の保証の対象になりません。確定時までに借主が滞納していた分は、相続人に請求されることがあります。貸主からは、新しい連帯保証人を求められる場合があります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第896条・第899条・第915条・第921条・第922条・第923条・第938条・第939条・第465条の4(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)(国土交通省)
- 民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A(国土交通省)
- 相続の放棄の申述(裁判所)
- 相続の限定承認の申述(裁判所)
- 他人のクレジット契約の保証人になりましたが、その事実はCICに登録されますか?(株式会社シー・アイ・シー(CIC))
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。