借金は相続される?親が亡くなった後に確かめる順番と期限
親が亡くなると、財産だけでなく借金も相続人に引き継がれます。民法は、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を受け継ぐと定めているからです(896条)。引き継ぐか手放すかを選べる期間は、自分のために相続が始まったと知った時から3か月です(915条1項)。この記事では、その3か月に何をどの順番で確かめるかを、時系列で示します。
借金も相続の対象になる|引き継ぐのは誰か
相続の対象になるのは、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではありません。銀行やカードローンの借入れ、クレジットの未払い、保証人として負っていた責任も、権利義務として引き継ぎの対象です。誰がどれだけ引き継ぐかは、相続人の順位と相続分で決まります。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の分 | 他の相続人の分 |
|---|---|---|
| 配偶者と子(第1順位) | 2分の1 | 子の全員で2分の1(子が複数なら等分) |
| 配偶者と親・祖父母(第2順位。子がいないとき) | 3分の2 | 3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹(第3順位。子も親もいないとき) | 4分の3 | 4分の1 |
配偶者は常に相続人になり(890条)、子、いなければ親や祖父母、その次に兄弟姉妹の順です(887条、889条)。借金も、この相続分に応じて引き継ぐのが基本です(899条、900条)。たとえば借金が600万円で、相続人が配偶者と子2人なら、法定相続分で単純に割ると配偶者300万円、子が150万円ずつになります(筆者の計算)。実際に債権者がだれへいくら請求するかは契約の内容で変わるので、あくまで見通しをつけるための目安です。
相続人どうしで「借金は長男が引き継ぐ」と話し合っても、それが債権者にそのまま通用するとは限りません。口約束や遺産分割の書面を作る前に、弁護士か司法書士に確かめます。
3か月の時計|いつから数えるか
3か月は、親が亡くなった日からではなく、自己のために相続の開始があったことを知った時から数えます。多くの人は死亡を知った日が起点になります。前の順位の人が相続放棄をして、自分に順番が回ってきた場合は、その事実を知った時から数える考え方になります。
何もしないまま3か月が過ぎると、単純承認をしたものとみなされます(921条2号)。そうなると、あとから「借金があると知らなかった」と言っても、引き継ぎを取り消せるとは限りません。承認や放棄は、期間内でも撤回できないと決められているので(919条1項)、決める前に調べることが大切です。
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 死亡を知った日 | 日付をメモする。故人の預金や持ち物に手を付けない |
| 〜2週間 | 郵便物・通帳・契約書を一か所に集める。信用情報の開示を申し込む |
| 〜1か月 | 借金と財産の一覧を作る。戸籍で法定相続人を確かめる |
| 〜2か月 | 単純承認・相続放棄・限定承認を比べて決める。申述書類をそろえる |
| 3か月の前 | 家庭裁判所に申述する。調査が終わらなければ期間の伸長を申し立てる |
この表は、余裕を持たせた目安です。戸籍や信用情報の開示は、混み合って時間がかかることがあるので、3か月の最後に回さないようにします。
確かめる順番|5つの手順
- 死亡を知った日を書き留める:葬儀の前後で慌ただしくても、この日付だけは紙に残します。
- 故人の財産に手を付けない:相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認とみなされます(921条1号)。預金を引き出して使う、故人の車や家財を売る、故人の借金を自分の貯金で返す、といった行為が当たるかは事情で変わります。放棄を考えているうちは、先に家庭裁判所・弁護士・司法書士に聞きます。
- 借金を探す:郵便物、通帳の引き落とし、カードの明細、督促状から借入先を探し、信用情報機関に開示を求めます。手順は親が死亡したら借金を調べる方法|信用情報の開示と郵便物の確認にまとめています。
- 財産を数える:預貯金、不動産、保険、株式などを一覧にします。借金より財産が多いのか、少ないのか、分からないのかが分かれ目です。
- 選ぶ:3つの選択肢(次の章)から決めます。
調査をしてもなお決められないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。裁判所の案内では、申立人は相続人を含む利害関係人と検察官で、申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所、費用は収入印紙800円分(相続人1人につき)と連絡用の郵便切手です。申立ては3か月以内にする必要があります。
3つの選び方|早見表
| 選択 | 中身 | 手続 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 単純承認 | 財産も借金も全部引き継ぐ | 何もしなくても3か月で成立 | 借金より財産が明らかに多いとき |
| 相続放棄 | 初めから相続人でなかったことになる | 家庭裁判所に申述 | 借金が多い、または引き継ぎたくないとき |
| 限定承認 | 引き継いだ財産の範囲でだけ借金を返す | 相続人全員で家庭裁判所に申述 | 借金と財産のどちらが多いか分からないとき |
相続放棄をすると、その人は初めから相続人にならなかったものとみなされます(939条)。借金だけでなく預貯金や不動産も受け取れなくなり、相続は次の順位の人に移ります。親の借金で子が全員放棄すると、親の親(祖父母)、次に故人の兄弟姉妹へ移ります。後から請求が届いて親族が驚かないよう、放棄したことは先に伝えておくと安心です。手続の詳細は借金の相続放棄|3か月の期限と手続きの流れ・してはいけないことに、限定承認は限定承認とは?借金と財産のどちらが多いか分からないときにあります。
借金があるとき相続税はどうなるか
借金は相続税の計算にも関わります。国税庁によると、被相続人が死亡の時に現に負っていた借入金や未払金など、確実と認められる債務は、遺産総額から差し引けます。葬式費用も差し引けます。差し引けるのは、その債務や費用を負担する相続人などです(No.4126)。相続税には基礎控除があり、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算し、相続放棄をした人も人数に数えます(No.4152)。
たとえば財産が4,000万円、借金が1,500万円なら、差し引き後は2,500万円です。法定相続人が子2人なら基礎控除は4,200万円なので、この単純な例では基礎控除の範囲に収まります(筆者の計算。ほかの加算や特例は考えていません)。実際の申告の要否は、国税庁の判定コーナーか税理士で確かめます。
借金の中に、親が連帯保証人になっていたものがないかも調べます。保証の引き継ぎは連帯保証人の立場は相続される?亡くなった親が保証人だった場合で扱います。故人が払いすぎていた過払い金を請求できる場合は、亡くなった親の過払い金は請求できる?相続人が確かめることがあります。
相談の順番
まず期限を紙にして、財産に手を付けず、借金を調べます。決めきれないときは、家庭裁判所の手続案内か、弁護士・司法書士に相談します。裁判所に出す書類の作成は司法書士も担当できますが、依頼先の違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点で整理しています。公的な窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方から探せます。親の借金全般は親の借金は子供が払う義務がある?生きている間と死後の違いも参考になります。
よくある質問
Q. 借金しかない親の相続で、何もしないまま3か月が過ぎたらどうなりますか?
3か月の間に限定承認も相続放棄もしないと、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。単純承認では、財産も借金もすべて引き継ぎます。借金が多そうだと思ったら、期限の前に家庭裁判所へ申述するか、期間の伸長を申し立てます。
Q. 兄弟の一人が借金を引き継ぐと決めれば、ほかの兄弟は払わなくてよいですか?
相続人どうしで決めた分担が、そのまま債権者に通用するとは限りません。債権者から見ると、相続人は相続分に応じて借金を引き継いでいます(民法899条)。書面にする前に、弁護士・司法書士に確かめてください。
Q. 借金があると、相続税は安くなりますか?
被相続人が死亡の時に負っていた借入金や未払金は、相続税の計算で遺産総額から差し引けます(国税庁 No.4126)。ただし相続税の申告や個別の計算は税理士の業務なので、税務署か税理士に確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第887条・第889条・第890条・第896条・第899条・第900条・第915条・第919条・第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続の放棄の申述(手続の案内・費用・必要書類)(裁判所)
- 相続の承認又は放棄の期間の伸長(手続の案内)(裁判所)
- No.4126 相続財産から控除できる債務(国税庁)
- No.4152 相続税の計算(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。