奨学金の返済を企業が代わりに?代理返還制度と利用できる会社
代理返還は、企業等が従業員の奨学金の返還残額の一部または全額を、本人に代わって日本学生支援機構(JASSO)へ直接送金する制度です。本人のお金を通さず、会社から機構へ払い込まれます。導入している企業は、機構の「制度導入企業等検索」で地域・業種・企業名から調べられ、掲載は2,365社(令和8年9月30日更新)です。この記事では、仕組み、本人の税と社会保険の考え方、会社の調べ方、就職や転職の前に確かめる点を順に書きます。
代理返還の仕組み
JASSOのページによると、企業等が従業員に代わって返還金を機構に直接送金します。送金の方法は、払込取扱票か口座振替の2つです。口座振替の場合は、1件につき135円(うち消費税12円)の手数料を企業が負担します。
企業が制度を使うまでの流れは次のとおりです。
- 企業が機構に電話またはFAXで申請する
- 機構から利用企業等専用ページのログイン情報が届く(約2週間)
- 企業が専用ページから依頼を登録する。口座振替で送るときは、支援の期間も登録する(最長12か月。続けるときは再登録)
本人が機構に申し込む手続きは、JASSOのページに書かれていません。つまり入口は勤め先で、制度があるか、対象になるかは、会社の規程で決まります。
代理返還では、会社が送金するのは「返還残額の一部または全額」です。支援の範囲を超えた分は、本人がふだんどおり返します。支援が終わったあとの返還は、本人の返済に戻ります。
利用している企業はどれくらいあるのか
数字は3つあり、混ぜて読まないでください。
| 数字 | 内容 | 時点 |
|---|---|---|
| 2,365社 | 制度導入企業等検索の掲載数(公表に同意した企業等) | 令和8年9月30日更新(9月27日時点の情報) |
| 3,266社 | 利用企業等の数(JASSOのデータ集) | 令和6年度末 |
| 13,421人 | 令和6年度の支援対象者 | 令和6年度 |
検索の掲載数が少ないのは、掲載が企業の同意による公表だからです。検索に出ない企業が、制度を使っていないとは限りません。数字は2026年10月時点の公式の公表で、年度ごとに変わります。
本人の税と社会保険はどうなるのか
給与の一部として払われた支援は、通常は給与として課税されます。代理返還の特徴は、会社から機構へ直接送金するため、通常の給与と区分され、奨学金の返還であることがはっきりする点です。JASSOの資料はこの点から、返還者本人の所得税は「非課税となり得る」と説明しています。国税庁の質疑応答事例は、奨学金の返済に充てるための給付は、お金が貸与者に支払われて直接学資に充てられていないため、原則として所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」には当たらないとしています。そのうえで、その奨学金が学資に充てられていて、給付が奨学金の返済に充てられる限りは、通常の給与に代えて給付されるなど給与課税を逃れる目的のものを除き、非課税の学資金として扱って差し支えないとしています(県が財団へ直接送金する支援金の事例で、JASSOの代理返還そのものの事例ではありません)。
押さえておく点は次のとおりです。
- 「非課税になる」と決まっているわけではなく、機構の資料は「非課税となり得る」と書いている
- 役員など一定の場合は、課税対象になることがある
- 企業が返済用の手当を本人に上乗せして払う方式は、非課税とするのは難しいと機構の資料が説明している
- 社会保険料の計算(標準報酬月額)の報酬には、原則として含めない。給与規程などで給与に代えて返還する形にすると含まれる
| 方式 | お金の流れ | 税の見通し(JASSOの資料) |
|---|---|---|
| 代理返還(直接送金) | 会社 → 機構 | 所得税は非課税となり得る |
| 返済用の手当を上乗せ | 会社 → 本人 → 機構 | 非課税とするのは難しいと説明されている |
個別の税額の判断は税務署や税理士の仕事で、この記事では結論を出せません。勤め先の給与担当に、どの方式か、源泉徴収の扱いがどうなるかを聞いてください。
勤め先が制度を持っているかを調べる
調べ方は2つあります。
- JASSOの制度導入企業等検索:地域(都道府県)と業種を選ぶか、企業名の一部を入力します。ひらがなでも検索できます。結果の企業名の右の「+」を押すと、企業の情報と支援の要件が出ます
- 勤め先に直接聞く:検索に載っていない企業もあるので、人事や総務に聞きます
検索の掲載内容は、企業が提供した資料をもとにしていて、変更される可能性があります。詳細は各企業に問い合わせるよう案内されています。
就職や転職の前に、確認しておきたいのは次の点です。
- 支援の対象になる人の条件(雇用形態、入社年次、勤続年数など)
- 支援の上限額と、いつまで続くか
- 途中で辞めたときの扱い
- 直接送金か、手当の上乗せか
- 自分の奨学金が対象の種類か
求人票に制度の名前が書かれていないこともあるので、面接や内定後の条件面談で聞いて構いません。聞いたことは、書面で残してもらうと安心です。
地方公共団体の支援もある
JASSOには、地方公共団体の返還支援のページがあります。都道府県や市区町村が、企業への補助や本人への支援を設けている場合があります。内容は自治体ごとに違うため、対象になる地域や要件は、各自治体の公式ページで確かめてください。
代理返還がない場合の選択肢
勤め先に制度がなくても、返済の負担を軽くする手段はあります。月額を知るには奨学金の返済は月いくら?借りた総額別の返済額と期間の早見表、期間の目安は奨学金の返済はいつからいつまで?始まる時期・終わる時期と残りの確かめ方です。職業を理由にした返還免除の制度が今あるのかは教員や公務員なら奨学金の返済は免除される?今の制度の確かめ方に分けてあります。返済全体の地図は奨学金の返済ガイドにあります。
返済が苦しくて延滞しそうなときは、会社の制度を待たずに、減額返還や返還期限猶予を先に確かめてください。奨学金が返せないとき|減額返還・返還期限猶予の条件と申請の時期で条件を読めます。
よくある質問
Q. 代理返還は、自分から日本学生支援機構に申し込む制度ですか?
JASSOのページでは、企業等が電話またはFAXで申請し、利用企業専用のページから依頼する制度として説明されています。本人が機構に申し込む手続きは、そのページに書かれていません。勤め先に制度があるかを人事・総務で確かめるのが入口です。
Q. 代理返還で返してもらった分は、自分の所得になって税金がかかりますか?
機構の資料は「所得税は非課税となり得る」としています。非課税になるかは、支援の形や立場(役員かどうか、手当の上乗せか、直接送金か)で変わるため、断定はできません。個別の取り扱いは、勤め先の給与担当か税務署で確かめてください。
Q. 自分の勤め先が制度導入企業かどうかは、どう調べますか?
JASSOの制度導入企業等検索で、地域・業種・企業名から調べられます。ただし掲載は企業が公表に同意した分に限られるため、載っていなくても利用している企業はあります。載っていないときは、勤め先に直接聞くのが確実です。
出典・参考にした公的な情報
- 企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度(日本学生支援機構)(日本学生支援機構)
- 制度導入企業等検索(日本学生支援機構)(日本学生支援機構)
- 企業等の奨学金返還支援(代理返還)への対応(日本学生支援機構)(日本学生支援機構)
- 地方公共団体の返還支援制度(日本学生支援機構)(日本学生支援機構)
- 奨学金の返済に充てるための給付は「学資に充てるため給付される金品」に該当するか(質疑応答事例)(国税庁)
- 奨学金事業に関するデータ集(令和6年度末・2026年1月更新)(日本学生支援機構)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。