奨学金が返せないとき|減額返還・返還期限猶予の条件と申請時期
奨学金が返せないときに日本学生支援機構(JASSO)で使える制度は、月々の額を下げる「減額返還」、返す時期を先に延ばす「返還期限猶予」、本人の死亡や重い障害のときの「返還免除」の3つです。JASSO は、延滞状態になる前に使うよう案内しています。年収が少し下がった程度なら減額返還、無職・失業・病気で収入が細っているなら猶予、というのが大まかな分かれ道です。すでに延滞していても猶予は申請できます。条件や期限は、2026年10月時点の JASSO の案内にもとづきます。
奨学金が返せないときに使える3つの制度
まず3つの違いを表で押さえます。
| 制度 | できること | 主な条件 | 期間の上限 |
|---|---|---|---|
| 減額返還 | 月の額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1のどれかに下げ、その分返す期間を延ばす | 延滞していない、口座振替(リレー口座)に加入している、月賦で返している、収入が目安以下 | 1回12か月、延長を重ねて通算15年(180か月)まで |
| 返還期限猶予 | 返す義務を一定期間止め、返還の終わりも同じだけ先に延ばす | 傷病・失業・経済困難・災害など事由ごとの条件。延滞中でも申請できる | 一般猶予は通算10年(120か月)が限度。事由によっては年数制限なし |
| 返還免除 | 返していない残りの全部または一部を免除する | 本人の死亡、または精神・身体の障害で労働能力を失った(高度に制限される)こと | 該当すれば願出 |
猶予の「通算10年」と減額返還の「通算15年」は別の数え方です。混ぜて覚えないようにします。どの制度も、承認されるかどうかは JASSO の審査で決まるため、条件を満たしても承認が約束されるわけではありません。
| いまの状況 | 最初に考える制度 | 詳しい手順 |
|---|---|---|
| 働いているが月の額が重い | 減額返還 | 減額返還の申請の記事 |
| 無職・失業・収入が大きく減った | 返還期限猶予(失業中・経済困難) | 返済猶予の申請方法の記事 |
| 病気で働けない | 返還期限猶予(傷病) | うつ病など傷病の記事 |
| すでに延滞している | 返還期限猶予(延滞据置猶予を含む) | 返済猶予の申請方法の記事 |
| 死亡・重い障害 | 返還免除 | 返済免除の条件の記事 |
まず延滞する前に動く:時期の決まり
JASSO が「延滞状態に陥る前に」と案内しているのは、制度の使いやすさが延滞の有無で変わるからです。減額返還は、願出のときと審査のときに延滞していないことが条件で、延滞が解消してから願い出る形になります。猶予は延滞中でも申請できますが、延滞が続くあいだの督促は止まりません。
申請には、希望月に間に合わせるための期限があります。
- 返還期限猶予(延滞していない人):猶予を始めたい月の3か月前から、前々月末までに提出します。4か月以上前の提出は返送されます。遅れても受け付けられますが、希望月に間に合わないことがあります。
- 減額返還:適用を始めたい月(延長なら継続したい月)の前々月末までに提出します。こちらも4か月以上前の提出は返送されます。
- 延滞している人の猶予:「できるだけ早く」が JASSO の案内で、月の期限は示されていません。
たとえば2027年1月分から猶予を始めたいなら、2026年10月1日から11月末までに出す形です(筆者の計算)。振替日は原則として毎月27日なので、承認の結果が出る前の月も、いつもどおり口座にお金を入れておくのが安全です。
状況別の選び方
月々の額が重いが、働いていて延滞はしていない人は、減額返還が合います。収入の目安は、給与所得者で年間収入400万円以下(子ども2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下)です。ただし返す総額は減りません。条件と手順は奨学金の減額返還の申請|月の返済額を下げる条件と手順にまとめています。
無職・失業中・収入が大きく減った人は、猶予を考えます。経済困難の事由では、給与所得者で年間収入(税込)300万円以下、給与以外の収入を含む場合は年間所得200万円以下が目安です。失業後6か月以内なら「失業中」の事由が使えます。必要書類と申請の流れは奨学金の返済猶予の申請方法|返還期限猶予の条件・年収の目安で順に説明しています。
すでに延滞している人は、減額返還が使えないぶん、猶予が主な選択肢です。延滞が始まったときからの証明書を出せない人向けの「延滞据置猶予」は基準が通常より厳しく、表と注意点は奨学金の返済猶予の申請方法にまとめています。
所得連動返還方式を選んでいる人(平成29年4月以降に採用された第一種の一部)は、減額返還の申請ができません。月額が前年の所得で決まる仕組みで、所得が下がれば翌年の月額が下がります。猶予をどの事由で使えるかは、奨学金相談センターで状況を伝えて確かめます。
病気で働けない人は、傷病の事由で猶予を申請できます。診断書が要り、年数の制限はありません。うつ病で奨学金が返せないとき|傷病による猶予と免除の申請に診断書の取り方まで書きました。生活保護を受けているなら、その事由で猶予を申請できます。
死亡や重い障害のときは返還免除の対象です。年収が低い、特定の職業に就いているといった理由だけでは免除にならない点は奨学金の返済免除の条件|対象は死亡・障害・業績のみ、年収では不可で説明しています。
申請してから結果が出るまで
申請の方法は、スカラネット・パーソナルでの申込みか、書類の郵送です。Web で願い出られるのは、新卒等・経済困難・生活保護受給中・失業中の4つの事由で、マイナンバーを提出済みで月賦で返している人です。傷病と産前産後・育児休業は郵送になります。郵送の宛先は専用の郵便番号の「猶予減額受付窓口」で、住所は書かずに済みます。
結果は、猶予ならおおむね2週間後(時期によっては3週間以上)にスカラネット・パーソナルの画面で確かめます。本人への郵送の通知はありません。減額返還は、開始希望月の中旬ごろに承認通知が届きます。
押さえておくことが2つあります。1つ目は、審査中も口座振替の請求や督促は止まらないことです。申請したから延滞が止まると考えて入金を止めると、その月は延滞になります。2つ目は、猶予は1年ごとに願い出ることです。事由が続くあいだは、終了の3か月前に届く通知を目安に、次の願出の準備を始めます。
延滞してしまったときに知っておくこと
返せないまま延滞に入っても、猶予の申請はできます。そのうえで、延滞後の流れを先に知っておくと、動く順番が決めやすくなります。
- 延滞すると、本人と連帯保証人・保証人に文書と電話で督促が行われます。JASSO 職員のほか、委託先の債権回収会社から電話が来ることもあります。対応の仕方は奨学金が返せないときの電話の連絡|督促への対応と相談の進め方にあります。
- 延滞金が加わり、3か月以上の延滞では個人信用情報機関に登録される対象になります。条件と時期は奨学金の返済を滞納するとブラックリストに?登録の条件と時期で扱っています。
- 人的保証の場合、本人の延滞が続くと連帯保証人や保証人に請求が行きます。奨学金が返せないと保証人に請求が行く?連帯保証と保証の違いで確かめられます。本人が自己破産を考えているときの保証人への影響は、奨学金が返せないと自己破産?保証人に起きることと先に使える制度に分けて書きました。
- 督促から法的措置までの全体の流れは奨学金の返済を滞納したら?督促・延滞金・裁判までの流れに書いています。
令和6年度末のデータでは、延滞者は返還者の約6%です(人数の内訳は奨学金の返済を滞納したらにあります)。減額返還が延滞中は使えないなど、延滞が長引くと選べる制度が狭まるので、動くのは早いほうが有利です。
相談先と、最初の一歩
最初の相談先は、JASSO の奨学金相談センターです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 電話 | 0570-666-301(ナビダイヤル) |
| ナビダイヤルが使えないとき | 03-6743-6100(海外、050のIP電話など) |
| 受付時間 | 平日9:00〜20:00(土日祝・年末年始を除く)。11時〜17時が比較的つながりやすい |
| 来訪 | 受け付けていない |
電話の前に、手元に次のものを用意します。
- 奨学生番号(返還確認票やスカラネット・パーソナルで分かる)
- 毎月の返済額と、延滞があるかどうか
- いまの収入(直近3か月の給与明細など)と、働けない事情
- 借りた奨学金の種類(第一種か第二種か)と、人的保証か機関保証か
文例:「奨学金の返還が難しくなっています。現在は延滞していません。収入が下がったので、減額返還か返還期限猶予のどちらが使えるか教えてください。」
奨学金のほかにカードローンなどの借金もあるときは、全体を見て相談先を決めます。公的な窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方に、返済の全体像は奨学金の返済ガイド|月いくら・いつまで・返せないときの制度にあります。勤め先に返還を肩代わりする制度があれば、それも負担を下げる方法です(奨学金の返済を企業が代わりに?代理返還制度と利用できる会社)。
よくある質問
Q. 返せないまま連絡せずにいると、どうなりますか?
振替ができない月が続くと、延滞金が加わり、督促の文書や電話が来ます。延滞が3か月以上になると、同意書を出している人は個人信用情報機関への登録の対象になります。連絡や申請をしないまま長く延滞を続けると、一括請求や裁判所の手続きに進むことがあるため、返せないと分かった時点で相談するのが大切です。
Q. 猶予や減額返還を使うと、借りた金額は減りますか?
減りません。猶予は返す時期を先に延ばす制度、減額返還は月々の額を下げて期間を延ばす制度で、どちらも元金と利子の免除ではありません。第二種奨学金は、猶予が承認された期間は新たな利子が付かない扱いです。
Q. カードローンなどほかの借金もあります。奨学金と一緒に相談できますか?
奨学金相談センターで答えてもらえるのは JASSO の奨学金の範囲です。カードローンなどは、財務局の多重債務相談窓口や法テラスなど別の窓口に相談します。奨学金の救済制度は借入先ごとの話なので、両方を並べて家計全体で考えます。
出典・参考にした公的な情報
- 返還が困難なとき(減額返還・返還期限猶予・返還免除)(日本学生支援機構)
- 減額返還制度(制度の概要・条件)(日本学生支援機構)
- 返還期限猶予(種類・申請方法・時期)(日本学生支援機構)
- 一般猶予の事由と年数制限(日本学生支援機構)
- 延滞している場合の返還期限猶予(延滞据置猶予)(日本学生支援機構)
- 死亡・精神または身体の障害による返還免除(日本学生支援機構)
- 奨学金事業に関するデータ集(令和6年度末・2026年1月更新)(日本学生支援機構)
- 奨学金相談センター・お問い合わせ(日本学生支援機構)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。