奨学金が返せないと自己破産?保証人に起きることと先に使える制度
奨学金が返せないとき、自己破産は選べる手段の一つですが、最初に考える手段ではありません。自己破産をして免責許可の決定が確定すると、本人は奨学金の返還について責任を免れます。奨学金は、免責されない請求権の一覧(破産法253条1項)に載っていません。一方で、免責は保証人に対する債権者の権利に影響しないとも定められています(同条2項)。人的保証で借りた奨学金なら、本人が免責を受けたあとも、連帯保証人(原則は父母)や保証人に請求が残る仕組みです。日本学生支援機構(JASSO)には、破産の前に使える減額返還と返還期限猶予があります。以下は2026年10月時点の公式の情報にもとづく整理です。
本人が自己破産すると、奨学金はどうなるか
自己破産は、裁判所に申し立てて、破産手続の開始の決定を受け、そのあと免責の許可を得る流れです。奨学金も、ほかの借金と同じ「破産債権」として手続きに入ります。奨学金だけを手続きから外すことはできません。
ここで押さえたいのは3点です。
- 奨学金は免責の対象になりうる。免責されないのは、租税等、悪意で加えた不法行為による損害賠償、養育費、罰金などです(破産法253条1項)。
- 免責が許可されるかは裁判所の判断。浪費や賭博などで財産を大きく減らした事情があると、免責不許可事由になります。そうした事情があっても、裁判所は経緯を考えて免責を許可できます(同法252条)。許可されるかどうかを、記事で見込むことはできません。
- 本人が破産手続の開始の決定を受けると、返還の期限の利益を失う。民法137条1号は、債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、期限の利益を主張できないと定めています。毎月の分割で返す権利が失われ、残りが一括で請求される対象になります。
手続きの順番や期間は自己破産の流れ|相談から免責許可の決定までの期間と手順に、失うものや生活への影響は自己破産とは?手続きの流れ・失うもの・生活への影響を全体でにあります。この記事では、奨学金と保証人の関係に絞ります。
本人が自己破産すると、保証人に何が起きるか
保証の種類で、請求の行き先が分かれます。
| 保証の種類 | 本人 | 家族などへの影響 |
|---|---|---|
| 人的保証:連帯保証人(原則父母) | 免責が確定すれば返還の責任を免れる | 免責は保証人への債権者の権利に影響しない(破産法253条2項)。連帯保証人は未返還額の全額が請求の対象になりうる |
| 人的保証:保証人(原則4親等以内の親族) | 同上 | 同上。JASSO は、保証人には本人の返還未済額の2分の1を請求する取り扱い |
| 機関保証 | 同上 | 連帯保証人も保証人もいないので、家族に請求は行かない。請求は保証機関の日本国際教育支援協会を通る |
本人が破産して期限の利益を失うと、残額が一括になる点は、保証の関係にも響きます。ただし、JASSO のページには、本人が自己破産したときの保証人への請求の進め方(一括にするか、分割の相談に応じるか)は書かれていません。ここで説明しているのは、法律が決めている一般的な仕組みで、JASSO の個別の取り扱いではありません。
人的保証でもう一つ注意したいのは、保証の変更の条件です。JASSO は、人的保証から機関保証へ変えるときの条件に、本人が破産や債務整理などの状態にないことを挙げています。連帯保証人・保証人を選ぶときの条件にも、「債務整理中(破産等)でないこと」があります。破産してから保証を機関保証に切り替えることは、できません。
保証人の責任の違いは奨学金が返せないと保証人に請求が行く?連帯保証と保証の違いに、自己破産で連帯保証人に起きることを借金全般で整理した記事は自己破産すると連帯保証人はどうなる?請求の流れと話し合い方にあります。
自己破産の前に使える制度
奨学金が理由で自己破産を考える人でも、先に使える制度があります。保証人への請求は、本人が返し続けているかぎり向かいません。
| いまの状況 | 先に検討する制度 | 返還の扱い |
|---|---|---|
| 延滞していない。月々の額が重い | 減額返還 | 月額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1にして期間を延ばす。通算15年まで |
| 無職・失業・病気・生活保護などで払えない | 返還期限猶予 | 一定の期間は返す必要がなく、返還の終わりも同じだけ延びる |
| すでに延滞している | 返還期限猶予(延滞据置猶予を含む) | 延滞中でも申請できる。審査中は督促が止まらない |
| 本人の死亡、重い障害で働けない | 返還免除 | 願出と審査があり、全額か一部を免除できる場合がある |
猶予と減額返還は、返す総額そのものを減らす制度ではありません。それでも、月々の負担を下げる、返す時期を先に延ばすことで、自己破産に進まずに済む場面があります。条件と申請の時期は奨学金が返せないとき|減額返還・返還期限猶予の条件と申請時期に、病気の場合はうつ病で奨学金が返せないとき|傷病による猶予と免除の申請にあります。
自己破産を検討する理由が奨学金だけでなく、カードローンやリボなど、ほかの借金の返済も重なっている場合は、整理の仕方が変わります。奨学金を外して整理できる任意整理との比べ方は奨学金は任意整理の対象から外せる?保証人への影響を整理で、手続き全体の比較は債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いで確かめられます。
保証人と一緒に相談する進め方
保証人がいる奨学金を含めて自己破産を考えるとき、本人だけで進めると、保証人に請求が届いてはじめて事情を知ることになります。次の順で、保証人と一緒に動きます。
- 保証の種類と、保証人が誰かを確かめます。 本人のスカラネット・パーソナルで機関保証か人的保証かが分かります。人的保証なら、返還誓約書の控えで連帯保証人と保証人を確かめます。
- 残額と延滞の状況を並べます。 返還残額、現在請求額、延滞の有無を本人の画面で確かめ、紙にまとめます。
- 保証人の側の状況も聞きます。 年齢、収入、ほかの借金、保証人自身が払える額です。保証人が払えないとき、保証人も債務整理の相談が必要になることがあります。
- 本人と保証人が、同じ日に専門家へ相談します。 弁護士か司法書士か、法テラスのように費用の立替えを案内する窓口かは、状況で変わります。裁判所は、債務整理や倒産手続の申立てに関する相談に応じない立場なので、相談先は別に探します。法テラスの使い方は借金が返せないとき法テラスでできること|無料相談と費用立替の流れに、弁護士と司法書士の違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点にあります。
- 手続きを選びます。 本人だけが破産するのか、保証人も同時に整理するのかは、専門家が全体を見て説明します。夫婦や主債務者と保証人は、住所が違っても同じ地方裁判所に申し立てられる、と裁判所のQ&Aにあります。
文例(保証人になっている親に):「奨学金の返還が難しくなって、自己破産も含めて弁護士に相談したいと思っています。自己破産しても、お母さんが連帯保証人の部分は、お母さんへの請求が残る仕組みです。決める前に、一緒に相談に行ってもらえませんか。先に猶予と減額返還も調べています。」
親への切り出し方と事前の準備は借金を親に相談するときの伝え方|話す前に準備することと文例にまとめています。督促の電話が来ているときの対応は奨学金が返せないときの電話の連絡|督促への対応と相談の進め方で説明しています。
よくある質問
Q. 奨学金は自己破産で払わなくてよくなりますか?
破産法253条1項が免責されない請求権として挙げているのは、税金などの租税等、悪意の不法行為による損害賠償、養育費、罰金などで、奨学金は挙がっていません。免責許可が確定すれば、本人は奨学金の返還について責任を免れます。ただし、免責が許可されるかどうかは裁判所が決めます。浪費やギャンブルなどの事情があっても、裁判所が経緯を考えて許可する裁量免責の定めもあります。
Q. 保証人だけが自己破産したときは、奨学金はどうなりますか?
保証人が免責を受けると、その保証人は保証の責任を免れますが、本人の返還義務は変わりません。JASSO のページには、保証人の破産を理由に本人へ一括請求するという定めは見当たりません。保証人の破産を知ったら、本人は奨学金相談センターに連絡して扱いを確かめます。連帯保証人・保証人が債務整理などで保証できなくなったときは、延滞していないことなどの条件を満たせば、機関保証に変更する手続きがあります。
Q. 個人再生なら、奨学金だけ外せますか?
外せません。個人再生では、すべての借金を債権者の一覧に載せます。再生計画で本人の返済額が減っても、再生債権者が保証人に持つ権利には影響しないと、民事再生法177条2項が定めています。人的保証の奨学金があるときは、保証人への請求が残る前提で手続きを選びます。
出典・参考にした公的な情報
- 破産法 第252条・第253条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第137条・第456条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第177条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 第一種奨学金の人的保証制度(日本学生支援機構)
- 人的保証から機関保証への変更(卒業後)(日本学生支援機構)
- 第二種奨学金の機関保証制度(日本学生支援機構)
- 返還が困難なとき(減額返還・返還期限猶予・返還免除)(日本学生支援機構)
- 破産・再生(相談には応じられないこと)(裁判所)
- 破産手続の申立先(民事事件Q&A)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。