奨学金は任意整理の対象から外せる?保証人への影響を整理
奨学金は、任意整理の対象から外せます。任意整理は交渉する相手を選べる手続きだからです。外さずに含めると、人的保証で借りた奨学金なら、まず連帯保証人(原則として父母)に未返還額の全額が請求され、連帯保証人も返せないときは保証人に2分の1が請求される仕組みになっています。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、延滞金が年3%で、第一種は利息のない奨学金です。任意整理で減らせる部分は小さいので、奨学金は外して、JASSOの減額返還・返還期限猶予を使う道とまず比べるのが筋の通った順番です。
奨学金を任意整理に含めたときに起きること(保証の種類別)
JASSOの奨学金の保証には、人が保証する「人的保証」と、保証機関が保証する「機関保証」の2つがあります。自分がどちらかは、スカラネット・パーソナルや貸与のときの書類で確かめられます。
| 保証の種類 | 保証する人・機関 | 本人の返済が止まると | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 人的保証 | 連帯保証人(原則父母)と保証人(原則4親等以内の親族) | 連帯保証人に請求され、本人と連帯保証人が返せないと保証人に請求される。連帯保証人は全額、保証人はJASSOの方針で2分の1 | JASSO「人的保証」 |
| 機関保証 | 公益財団法人日本国際教育支援協会 | 本人へ一括返還の請求→協会が代わりに払う(代位弁済)→協会から本人へ原則一括で請求 | JASSO「機関保証」 |
JASSOのページには、本人が任意整理をしたときの扱いそのものは書かれていません。ここで示したのは、本人が返さなくなったときに保証人や保証機関へ請求が向かう、一般的な保証の仕組みです。
人的保証の保証人が2分の1の負担になっているのは、保証人には「分別の利益」があるためで、JASSOは2022年5月の札幌高等裁判所の判決を受けて、保証人には2分の1を請求する方針に変えたと説明しています。連帯保証人と保証人の責任の違いは、奨学金が返せないと保証人に請求が行くかで詳しく扱っています。
機関保証の場合、JASSOは、延滞が続くと本人への一括返還請求、協会への代位弁済請求、協会からの代位弁済額の一括請求の順に進み、返済に応じないときは協会が強制執行までの法的措置をとって給与や財産を差し押さえると案内しています。任意整理に含めれば、交渉の相手は協会になっていきます。
外してJASSOの救済制度を使う道
奨学金を外した場合、奨学金はJASSOとの契約どおり返し続けます。そのうえで、毎月の返済が重いなら、JASSOの救済制度を使えるかを確かめます。JASSOが案内している救済制度は次の3つです。
| 制度 | 中身 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 減額返還 | 月々の返還額を減らし、その分返還の期間を延ばす | 願い出や審査のときに延滞していないことが条件。返す総額は減らない |
| 返還期限猶予 | 一定の期間、返還を待ってもらい、その分終わりが先に延びる | 延滞中でも申請できる。審査中も請求や督促は止まらない |
| 返還免除 | 本人の死亡、または精神・身体の障害で働けなくなった場合 | 年収や職業だけで免除される制度ではない |
JASSOは、これらを「延滞状態に陥る前に」使ってほしいと案内しています。年収の目安や申請の時期など制度ごとの条件は、奨学金が返せないときの減額返還・返還期限猶予の条件と申請時期にまとめています。手続きの細かい手順は奨学金の減額返還の申請と奨学金の返済猶予の申請方法を見てください。
カードローンやリボなどほかの借金だけを任意整理すれば、利息の高い借金の毎月の返済が和解の条件に変わり、奨学金を返す余裕が戻ることがあります。奨学金を外す選び方には、保証人に請求を向けないことに加えて、こうした家計の面の理由もあります。
含めるか、外して救済制度を使うかを比べる
両方の道を、読者が判断しやすい点で並べました。
| 比べる点 | 任意整理に含める | 外して救済制度を使う |
|---|---|---|
| 保証人(親など)への請求 | 人的保証なら向かうことがある | 契約どおり返しているかぎり行かない |
| 減らせるもの | 延滞金(年3%)や今後の利息の扱いが交渉の対象になりうるが、もともと小さい | 返す総額は減らない。月額を下げる・待ってもらう |
| 毎月の負担 | 和解の条件で決まる | 減額返還なら月額を下げられ、猶予なら一定の期間払わずに済む |
| 信用情報 | 整理した記録が残る | 延滞3か月以上にならなければ、JASSOが延滞を登録する条件には当たらない |
| 向いている場面 | すでに長く延滞して一括の請求が来ている、保証人と一緒に整理を考えている | 延滞していない、または延滞が短く、救済制度の条件に当たりそう |
JASSOは、延滞が3か月以上になった場合に、同意書を出している人の情報を個人信用情報機関に登録すると案内しています。登録の条件と時期は奨学金の滞納とブラックリストの関係で確かめてください。
注意したいのは保証の変更です。JASSOには人的保証から機関保証へ変える手続きがありますが、保証人が亡くなるなどして保証を続けられず、新しい保証人を立てられない場合のための制度で、返還中に変えるには延滞していないこと、本人が破産や債務整理などの状態にないことが条件になっています。「先に機関保証へ変えてから整理する」という使い方ができる制度ではありません。
個人再生・自己破産では奨学金を外せない
任意整理と違い、個人再生と自己破産では、奨学金を含むすべての借金を債権者の一覧に載せます。奨学金だけを外すことはできません。
| 手続き | 奨学金を外せるか | 人的保証の保証人への影響 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 外せる | 含めれば請求が向かうことがある |
| 個人再生 | 外せない | 再生計画は保証人に対する権利に影響しない(民事再生法177条2項) |
| 自己破産 | 外せない | 本人の免責は保証人に対する権利に影響しない(破産法253条2項) |
個人再生で本人の返済額が減っても、連帯保証人・保証人の責任は元のまま残ります。人的保証の奨学金があり、個人再生や自己破産を考えるときは、親などの保証人に請求が向かうことを前提に、保証人と先に話す段取りを相談先と決めておきます。自己破産の場合の流れは奨学金が返せないと自己破産になるかで、保証人つきの借金全般の考え方は前に読んだ保証人がいる借金を任意整理するとどうなるかで扱っています。
文例(親に話す):「お母さんに連帯保証人になってもらっている奨学金のことで話があります。カードの借金の返済が苦しくなり、弁護士に相談しています。奨学金は整理の対象から外して、JASSOの減額返還を申し込むつもりなので、いまのところお母さんに請求が行く予定はありません。もし手続きの選び方が変わったら、決める前に話します。」
奨学金を外すか含めるかは、保証の種類、延滞の有無、ほかの借金の大きさで答えが変わります。任意整理の仕組みと流れをあらためて確かめたいときは、任意整理とは何か、仕組みと流れに戻って全体を見直してください。
よくある質問
Q. 機関保証で借りた奨学金なら、任意整理に含めても家族に請求は行きませんか?
機関保証では、公益財団法人日本国際教育支援協会が保証しているので、人の連帯保証人・保証人はいません。延滞が続けば協会が代わりに払い(代位弁済)、その後は協会から本人へ原則一括で請求されます。家族に保証人としての請求が行く仕組みではありませんが、本人への請求が残る点は変わりません。
Q. すでに延滞している奨学金も、任意整理の対象から外せますか?
任意整理は交渉する相手を選べるので、延滞中でも外すことはできます。ただし延滞中は減額返還を願い出られないため、使えるのは返還期限猶予(延滞の状況によっては延滞据置猶予)が中心です。猶予を申請しても審査中は請求や督促が止まらないので、早めに日本学生支援機構に相談してください。
Q. 個人再生のときも、奨学金だけを外せますか?
個人再生では、借金をすべて債権者の一覧に載せるので、奨学金だけを外すことはできません。再生計画で本人の返済額が減っても、保証人に対する権利には影響しないと民事再生法177条2項が定めています。人的保証の奨学金があるなら、保証人への影響を前提に相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 人的保証(連帯保証人・保証人の責任)(日本学生支援機構)
- 機関保証の場合の延滞時の流れ(日本学生支援機構)
- 返還が困難なとき(救済制度)(日本学生支援機構)
- 延滞金(日本学生支援機構)
- 保証制度の変更(人的保証から機関保証へ)(日本学生支援機構)
- 民事再生法 第177条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第253条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 減額返還制度の概要(願出・審査の時点で延滞していないこと)(独立行政法人日本学生支援機構)
- 返還期限猶予の申請にあたっての留意点(独立行政法人日本学生支援機構)
- 個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録(独立行政法人日本学生支援機構)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。