奨学金が返せないと保証人に請求が行く?連帯保証と保証の違い
奨学金が返せなくなったとき、保証人に請求が行くかどうかは、借りた奨学金の保証が「人的保証」か「機関保証」かで決まります。人的保証では、本人が延滞すると先に連帯保証人(原則として父母)へ、本人と連帯保証人がともに返せないときに保証人(原則として4親等以内の親族)へ請求が向かいます。連帯保証人は未返還額の全額、保証人は連帯保証人1名・保証人1名の場合に2分の1が、日本学生支援機構(JASSO)の取り扱いです。機関保証には連帯保証人も保証人もいないので、家族への請求は行きません。いずれの場合も、請求が行く前に本人が猶予や減額返還を使える余地があります。以下は2026年10月時点の公式の案内にもとづきます。
自分の奨学金がどちらの保証かを確かめる
最初にすることは、人的保証か機関保証かの確認です。次の方法で分かります。
- スカラネット・パーソナルの返還情報:返還中の人が見られる内容に、保証制度(機関保証か人的保証か)があります。本人がログインして確かめます。使い方は奨学金の返済をスカラネットで確認|ログイン方法と残額の見方にあります。
- 返還誓約書の控え:人的保証では、本人、連帯保証人、保証人がそれぞれ自署し、連帯保証人と保証人は実印で押印した書類が学校に提出されています。署名した覚えがあれば、人的保証の可能性が高くなります。
- 機関保証かどうかの手がかり:機関保証では連帯保証人も保証人も立てず、連絡がつかないときに備えた「本人以外の連絡先」を届け出ています。人的保証の書類にある連帯保証人・保証人の署名と実印が、機関保証にはありません。
なお、スカラネット・パーソナルの画面で、連帯保証人や保証人の氏名まで見られるという記載は、JASSO のページにありません。誰が保証人になっているかは、返還誓約書の控えや家族への確認で調べます。保証の種類の変更は、人的保証から機関保証への一方向だけです。JASSO の機関保証のページは、機関保証から人的保証への変更はできないと書いています。
連帯保証人と保証人の違い
人的保証には、立場の違う2種類の保証人がいます。JASSO と民法の定めを並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 連帯保証人 | 保証人 |
|---|---|---|
| 原則として誰か | 父母(またはこれに代わる人) | 4親等以内の親族(父母を除く)で、本人・連帯保証人と別生計 |
| 請求が向かう順番 | 本人が延滞したら、まず連帯保証人 | 本人と連帯保証人がともに返せないとき |
| 負担する額 | 本人の返還未済額の全額 | 本人の返還未済額の2分の1(分別の利益) |
| 本人にまず請求してと言える(催告の抗弁権) | なし(民法454条) | あり(民法452条) |
| 本人に資力があり執行が容易だと証明して、先に本人の財産へと言える(検索の抗弁権) | なし(民法454条) | あり(民法453条) |
保証人の負担が2分の1になるのは、保証人が数人いるとき各自が等しい割合で義務を負うという民法456条(427条)の考え方によるもので、「分別の利益」と呼ばれます。JASSO は、この利益を使うには保証人の申し出が必要だという立場でしたが、2022年(令和4年)5月19日の札幌高等裁判所の判決を踏まえて、保証人には最初から本人の返還未済額の2分の1を請求する取り扱いに変えたと説明しています。
筆者の計算で例を出します。返還未済額が240万円なら、連帯保証人に請求されるのは最大240万円、保証人に請求されるのは120万円です。両方に請求が向かう形ですが、もとの返還未済額は240万円なので、誰かが払った分だけ残りは減ります。
JASSO はあわせて、分別の利益は保証人の支払義務の範囲を定めたもので、その範囲を超えた支払いを妨げるものではない、とも書いています。2分の1を超えて払ってしまったときの扱いなど、個別の判断が要る場面は弁護士か司法書士に渡します。連帯保証人と保証人の一般的な責任の違いは連帯保証人とは?保証人との違いと借金を代わりに払う範囲でも扱っています。
請求が向かう順番と、機関保証の場合
人的保証の場合、延滞の経過に応じて連帯保証人や保証人にも連絡が届きます。JASSO が振替不能のページで示している例では、次の順です。
- 振替不能が2か月続いたとき:本人に加えて連帯保証人にも、督促の電話と「奨学金の返還について」の文書が届きます。
- 3か月続いたとき:連帯保証人と保証人の両方に、通知と電話で知らせが届きます。
- 延滞が長期になったとき:本人に、返還期限が来ていない分も含めた全額の一括返還が請求され、支払督促の予告を経て裁判所の手続きに進みます。JASSO のこのページに、連帯保証人・保証人への請求の進め方までは書かれていませんが、本人の延滞が続くあいだは連帯保証人・保証人への通知と電話も続きます。支払督促以降の流れは奨学金の返済を滞納したら?督促・延滞金・裁判までの流れにあります。
機関保証の場合は、請求の流れが違います。
| 順番 | 機関保証で延滞が続いたときに起きること |
|---|---|
| 1 | JASSO が本人に一括返還を請求する |
| 2 | JASSO が保証機関の日本国際教育支援協会に代位弁済を請求し、協会が JASSO に払う |
| 3 | 代位弁済の事実が個人信用情報機関に登録される |
| 4 | 協会が本人に、払った額を原則一括で請求する。滞ると年10%の遅延損害金がかかる |
| 5 | 応じないと、協会が給与や財産の差押えなどの法的措置をとる |
どちらの保証でも、返還の義務は貸与を受けた本人にあります。機関保証は保証料を払っていても返還が免除される制度ではなく、家族ではなく保証機関を通して本人に請求が戻る仕組みです。
請求が行く前にできること
保証人や連帯保証人に請求が行く前に、使える手が3つあります。順に確かめます。
- 本人が救済制度を使います。 減額返還や返還期限猶予は、本人しか願い出られません。延滞していなければ減額返還を、無職・失業・病気・生活保護などの事情があれば猶予を検討します。傷病の猶予は、本人が書けないとき、連帯保証人・保証人・2親等以内の成人親族が代筆できます。条件は奨学金が返せないとき|減額返還・返還期限猶予の条件と申請時期にあります。
- 延滞していても猶予は申請できます。 猶予願の審査中は督促が止まりませんが、承認されれば、承認された期間は返す必要がなくなります。
- 連帯保証人・保証人が通知を受け取ったら、放置せずに奨学金相談センターへ連絡します。 電話では、本人・連帯保証人・保証人であることが確認できるまで、個人情報の保護のために連絡の目的を説明できないことがあります。名乗ったうえで、いつの通知か、本人は猶予や減額返還を使えるかを聞きます。番号と受付時間は、1つ目の手順で紹介した記事の「相談先と、最初の一歩」の節にあります。
保証の関係を整理する手続きが必要になることもあります。連帯保証人や保証人が死亡して別の人に変えるときは、新しい人の承諾を得て、変更届を JASSO に出します。連帯保証人・保証人を4親等以内の親族でない人に変える場合や、保証人を65歳以上の人に変える場合は、返還保証書などの追加の書類が要ります。保証ができなくなって新しい保証人も立てられないときは、返還中でも人的保証から機関保証に変更できる場合がありますが、条件があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 延滞 | していないこと |
| 返還の方法 | 振替口座(リレー口座)で返還していること |
| 本人の状態 | 破産や債務整理などの状態にないこと |
| 保証料 | 一括で振り込めること |
| 対象 | 平成16年度以降の採用で、連帯保証人・保証人が死亡・意識不明・債務整理などで保証できず、新たな人を立てられない場合 |
「本人が破産や債務整理などの状態にないこと」が条件なので、本人が自己破産してしまってからでは、この変更は使えません。本人の自己破産と保証人の関係は奨学金が返せないと自己破産?保証人に起きることと先に使える制度で説明しています。
保証人になっている側が、本人と話すとき
連帯保証人や保証人になっている親や親戚の側は、通知を受け取ってはじめて、延滞を知ることがあります。本人に責任を問う前に、事実を並べて話すと、猶予や減額返還の申請に進みやすくなります。
文例(保証人になっている親が本人に):「日本学生支援機構から、奨学金の返還について通知が届いた。延滞が何か月になっているか、いまスカラネット・パーソナルで確認してもらえるかな。払えない事情があるなら、延滞が長引く前に猶予か減額返還を一緒に調べたい。」
文例(本人が保証人に):「奨学金の返還が遅れていて、連帯保証人のお父さんに通知が行く段階になりました。いま、猶予の申請を進めています。承認が出るまで少し時間がかかるので、通知が届いたら、まず私に見せてください。」
親に借金の話を切り出す準備は借金を親に相談するときの伝え方|話す前に準備することと文例にあります。奨学金以外の借金もあるときは、全体の整理のなかで奨学金をどう扱うかを、奨学金は任意整理の対象から外せる?保証人への影響を整理で比べられます。
よくある質問
Q. 機関保証で借りた奨学金でも、親に請求が行きますか?
機関保証には連帯保証人も保証人もいないので、親が保証人として請求される仕組みではありません。延滞が続くと、保証機関の日本国際教育支援協会が本人に代わって払い(代位弁済)、そのあと協会が本人へ原則一括で請求します。連絡がつかないときに備えて「本人以外の連絡先」が届けてあるので、その人に本人の連絡先を尋ねる連絡は行くことがあります。
Q. 保証人は、請求された額の半分だけ払えばよいのですか?
JASSO は、連帯保証人1名・保証人1名の場合、保証人には本人の返還未済額の2分の1を請求する取り扱いをしています。ただし「分別の利益」は支払義務の範囲を定めたもので、その範囲を超えた支払いを妨げるものではない、とも説明しています。半分と書かれた請求書が届いたかどうか、それ以上を払うかどうかは、請求の内容を見て決めます。
Q. 保証人や連帯保証人を外れたり、変えたりできますか?
本人が奨学金を返し終えるまでは、保証の関係は続きます。ただし、死亡などで別の人に変えるときは、新しい人の承諾を得て、変更届を JASSO に出す手続きがあります。また、保証ができなくなって新しい保証人も立てられない場合は、延滞していないことなどの条件を満たせば、機関保証に変える道があります。
出典・参考にした公的な情報
- 第一種奨学金の人的保証制度(日本学生支援機構)
- 第二種奨学金の機関保証制度(日本学生支援機構)
- 人的保証の場合の延滞時の流れ(日本学生支援機構)
- 機関保証の場合の延滞時の流れ(日本学生支援機構)
- 振替不能2回目・3回目(連帯保証人・保証人への通知)(日本学生支援機構)
- 人的保証から機関保証への変更(卒業後)(日本学生支援機構)
- 連帯保証人・保証人の変更(日本学生支援機構)
- スカラネット・パーソナル(返還中の人が見られる内容)(日本学生支援機構)
- 2026年度 返還のてびき(詳細版)(日本学生支援機構)
- 民法 第452条〜第454条・第456条・第427条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。