奨学金の返済を滞納したら?督促・延滞金・裁判までの流れ
奨学金の返済を滞納すると、1回目の振替不能では延滞金はかかりません。翌月の振替日に2か月分がまとめて引き落とされ、この段階の連絡は不要とされています。滞納が2か月、3か月と続くと延滞金(年3%)が加わり、本人と連帯保証人に督促の電話や通知が届き、延滞が3か月以上になると個人信用情報機関への登録の対象になります。4か月目から9か月目までは債権回収会社が個別に返還の案内をし、9か月を超えて連絡も入金も猶予の申請もないときに、人的保証なら予告の文書を経て裁判所の支払督促に進みます。延滞中でも猶予は申請できます。以下は2026年10月時点の JASSO の案内にもとづく流れです。
滞納から裁判までの時系列
次の表は、10月27日の振替で初めて引き落としができなかった場合の例です。日付は JASSO が振替不能のページに「参考」として載せているスケジュールにそろえています。
| 延滞の段階 | 振替・通知・連絡 | 延滞金・登録 |
|---|---|---|
| 1回目(10月分のみ不能) | 11月10日以降に「振替不能通知」。11月27日に2か月分をまとめて振替。奨学金相談センターへの連絡は不要 | 延滞金なし。11月15日以降、登録の予告のSMS |
| 2回目(10・11月とも不能) | 12月7日以降に督促の電話。12月27日に3か月分をまとめて振替。人的保証なら連帯保証人にも通知と電話 | 所定の延滞金。12月15日以降、登録について注意の通知 |
| 3回目(10〜12月とも不能) | 1月7日以降に本人・連帯保証人へ電話。1月27日に4か月分をまとめて振替。連帯保証人と保証人に通知 | 所定の延滞金。1月15日以降、登録について警告の通知 |
| 次の振替も不能 | 債権回収会社に回収業務を委託。延滞4〜9か月は文書・電話・訪問で個別の返還の案内 | 個人信用情報機関に登録 |
| 延滞9か月を超えても入金も猶予の申請もない(人的保証) | 支払督促の申立てを予告する文書を送り、それでも動きがなければ裁判所へ。機関保証は催告書のあと、保証機関へ代位弁済の請求 | 支払督促以降の費用は返還者の負担 |
各段階で JASSO が一貫して案内しているのは、「返還が難しい事情があるなら、猶予を使ってほしい」という点です。口座振替以外の入金方法には、原則として対応していません。残高を足す先は、振替用口座(リレー口座)です。
延滞金はいくらかかるのか
延滞金は、延滞している割賦元金に年(365日あたり)3%を掛け、延滞した日数分を計算します。第二種奨学金は、利子を除いた元金が対象です。この3%は、令和2年(2020年)3月28日以降の率で、平成17年4月以降に採用された第一種と第二種に当てはまります。以前は年10%、次に年5%の時期がありました。平成17年3月以前に採用された第一種は、6か月ごとに計算する別の方式で、令和2年以降は6か月分につき1.5%です。
筆者の計算で例を出すと、次のようになります。
| 延滞している元金 | 延滞した日数 | 延滞金の目安 |
|---|---|---|
| 15万円 | 100日 | 約1,230円(15万円×3%×100÷365) |
| 45万円 | 180日 | 約6,660円(45万円×3%×180÷365) |
| 100万円 | 365日 | 3万円(100万円×3%) |
延滞金そのものは、上の例のとおり、数か月なら数千円の規模にとどまります。それより重いのは、延滞が長引くと一括請求や信用情報の登録、保証人への請求といった別の影響が出る点です。返還金が入ると、督促費用、延滞金、利子(第二種のみ)、元金の順に充てられるため、延滞金を先に払い終えるまで元金が減らない形になります。
信用情報に載るのは3か月以上の延滞から
JASSO は、多重債務を防ぐ目的で、延滞情報を個人信用情報機関に登録しています。登録の対象になるのは、延滞が3か月以上になった場合で、「個人信用情報の取扱いに関する同意書」を出している人です。平成21年4月以降に貸与を受けた人は、同意書の提出が申込みの条件でした。新たに返還を始める人は、返還開始から6か月が過ぎた時点で、延滞が3か月以上なら対象になり、その後は毎月判定されます。
登録されるのは、氏名・住所・電話・勤務先などの本人情報と、貸与額や延滞・代位弁済などの返済状況で、毎月更新されます。延滞を解消すれば解消した旨が登録されます。登録されると、スマートフォンの分割払いやクレジットカード、住宅ローンが使えなくなることがあります。登録先の機関名の見方と削除の時期は、奨学金の返済を滞納するとブラックリストに?登録の条件と時期に日付つきでまとめています。
保証人への請求と、裁判所の手続き
人的保証で借りた奨学金は、本人が延滞すると連帯保証人に、本人と連帯保証人が返せないときは保証人に請求が向かいます。連帯保証人は全額、保証人は2分の1が JASSO の取り扱いです。違いは奨学金が返せないと保証人に請求が行く?連帯保証と保証の違いで、本人が自己破産したときの保証人への影響は奨学金が返せないと自己破産?保証人に起きることと先に使える制度で扱っています。
法的な手続きは、人的保証と機関保証で形が違います。
- 人的保証:督促しても返還しないと、返還期限が来ていない分も含めて全額の一括返還を請求し(期限の利益の喪失)、支払督促の申立てを予告します。それでも返還されなければ、支払督促の申立て、仮執行宣言の申立て、強制執行の順に進み、給与や財産が差し押さえられます。支払督促以降にかかった費用は、返還者の負担です。
- 機関保証:延滞が続くと、JASSO が本人に一括返還を請求し、保証機関の日本国際教育支援協会へ代位弁済を請求します。代位弁済のあとは、協会が本人に一括で請求し、応じなければ強制執行に至る法的措置をとります。代位弁済額の返済が遅れると、年10%の遅延損害金がかかります。
裁判所から支払督促が届いたら、送達を受けた日から2週間以内に督促異議を出すかどうかが分かれ目になります。書類の読み方と期限の数え方は支払督促が届いたら|異議申立ての期限と放置した場合の流れで説明しています。
JASSO のデータ集(令和6年度末)によると、1日以上の延滞者は31万8千人(6.4%)、3か月以上の延滞者は12万7千人(2.6%)です。令和6年度に、支払督促に異議が出て通常の訴訟に移った債権は3,727件で、JASSO は多くが分割返還の和解で解決していると説明しています。延滞が9か月を超えても、直ちに裁判所の手続きに入ることはなく、事前に予告の文書を送る、というのが JASSO の案内です。延滞が何年も続いている人は、時効の数え方を奨学金の返済に時効はある?援用を考える前に確かめることで先に確かめてください。
延滞中でも使える手続きと、動く順番
滞納に気づいたら、次の順に進めます。
- 延滞の月数と残額を確かめます。 スカラネット・パーソナルの「現在請求額」と「前回振替結果」で分かります。通帳を記帳して、27日前後の引き落としの有無を見る方法もあります。
- 引っ越しているなら住所を届け出ます。 住所変更は、スカラネット・パーソナルか電話でできます。親名義の口座や実家の住所のままで通知が届いていなかった場合は、親が奨学金を返せない状態にしていたらの確かめ方が役立ちます。令和6年度に、転居先不明で JASSO に返送された郵便物は年間20万件にのぼり、猶予の案内も含まれています。
- 入金できるなら、リレー口座に必要額を入れます。 振替日の前営業日までに入れておけば、次の振替で延滞を解消できます。
- 入金が難しいなら、猶予を申請します。 延滞していても猶予は申請できます。新卒や退学から間もない人は、収入証明書などを出さずに申請できます。延滞開始からの証明書が出せない人向けの「延滞据置猶予」は基準が厳しくなります。事由ごとの条件と据置猶予の中身は奨学金の返済猶予の申請方法|返還期限猶予の条件・年収の目安で確かめます。
- 減額返還は、延滞を解消してから考えます。 願出と審査のときに延滞していないことが条件です。
- 督促の連絡には応じます。 督促を受けても猶予の手続きや連絡がないまま延滞を続けると、「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠った」と判断されて一括請求されることがある、と JASSO は示しています。
文例(奨学金相談センターへ):「奨学金の返還が3か月分遅れています。収入が減って、次の振替までに入金するのが難しい状況です。延滞中でも使える猶予を申請したいので、私の場合の事由と、必要な書類を教えてください。」
電話の受け方と折り返しの伝え方は奨学金が返せないときの電話の連絡|督促への対応と相談の進め方に分けて書きました。全体の制度は奨学金が返せないとき|減額返還・返還期限猶予の条件と申請時期にあります。
ほかの借金もあるとき
カードローンやリボなど、奨学金以外の借金も返済が回らないときは、奨学金の猶予だけでは足りないことがあります。奨学金の相談先は JASSO の奨学金相談センターまでで、ほかの借金の整理は別の窓口の仕事です。公的な窓口は借金の公的な相談窓口と受付時間に、債務整理を扱う弁護士や司法書士に相談する選択肢は債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いにあります。
債務整理の相談をするときは、奨学金を整理の対象に含めるかどうかも話題になります。任意整理は交渉する相手を選べるので、奨学金を外して JASSO の救済制度を使う道があります。含めるか外すかの比べ方は奨学金は任意整理の対象から外せる?保証人への影響を整理にまとめています。
相談先を選ぶときは、面談で借入先ごとの残高と家計の数字を見てもらうこと、手続きごとの費用の総額を書面で示してもらうこと、弁護士と司法書士のどちらが代理できる範囲かを説明してもらうことを確かめます。範囲の違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点にあります。
よくある質問
Q. 1回振替ができなかっただけで、信用情報に載りますか?
JASSO が個人信用情報機関に登録する条件は、延滞が3か月以上になった場合です。1回目の振替不能では登録されませんが、翌月15日以降に、登録について注意を促すSMSが本人の携帯電話に届きます。翌月の振替日に2か月分をまとめて振り替えられるよう、その額を口座に入れておけば、延滞は1か月で解消します。
Q. 滞納してから何年もたっています。時効で払わなくてよいのですか?
時効が完成しているかどうかは、最後に払った時期や、裁判所の手続きがとられたかどうかで変わります。支払督促や裁判で権利が確定していれば、時効の期間は10年に延びます(民法169条)。自分で判断せず、数え方は[奨学金の返済に時効はある?援用を考える前に確かめること](/jiko-shogakukin/)で確かめ、判断が必要なら弁護士か司法書士に渡してください。
Q. 猶予を申請すれば、督促は止まりますか?
止まりません。猶予願の審査中は、口座振替の請求も、本人や連帯保証人への督促も止められません。「奨学金返還期限猶予承認通知」が届くまでは請求と督促が続くと JASSO が案内しています。承認される前の月の分をどうするかは、申請のときに奨学金相談センターへ聞いておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 振替不能1回目(日本学生支援機構)
- 振替不能2回目(日本学生支援機構)
- 振替不能3回目(日本学生支援機構)
- 延滞金(日本学生支援機構)
- 督促(日本学生支援機構)
- 人的保証の場合の延滞時の流れ(法的措置)(日本学生支援機構)
- 機関保証の場合の延滞時の流れ(日本学生支援機構)
- 個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録(日本学生支援機構)
- 延滞据置猶予で申請(日本学生支援機構)
- 返還期限猶予の申請にあたっての留意点(日本学生支援機構)
- 奨学金事業に関するデータ集(令和6年度末・2026年1月更新)(日本学生支援機構)
- センター会員一覧(全国銀行協会(全国銀行個人信用情報センター))
- 支払督促を受けた場合はどうしたらいいですか?(民事事件Q&A)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。