過払い金請求の手続きを自分でする流れ|交渉と裁判の負担と注意点
過払い金請求は、本人が自分ですることもできます。流れは、①取引履歴を取り寄せる、②引き直し計算をする、③請求書を送る、④業者と交渉する、⑤合意できなければ訴訟を起こすの5段階です。①〜③は書類の作業で、④以降が負担の大きい段階になります。訴訟になれば、訴状の作成、期日への出席、証拠の提出もすべて本人の仕事です。完済から長い人は、手続きを進める間に時効が近づく点も確かめておきます。
自分でする5段階|本人がやること
| 段階 | 本人がすること | 手元に残すもの | 参照する記事 |
|---|---|---|---|
| 1 取引履歴の取り寄せ | 業者に全期間分の履歴を請求する | 請求書の控え・届いた履歴 | 取引履歴の取り寄せ方 |
| 2 引き直し計算 | 利息制限法の上限で計算し直す | 計算書(日付ごとの表) | 過払い金の計算方法 |
| 3 請求書の送付 | 過払い金の額を示して支払いを求める | 内容証明・配達証明の控え | この記事 |
| 4 交渉 | 業者の回答を受け、和解するかを決める | 回答書面・やり取りの記録 | この記事 |
| 5 訴訟 | 簡易裁判所または地方裁判所に訴える | 訴状・証拠・判決または和解調書 | 裁判の記事 |
①取引履歴は、貸金業法19条の2にもとづいて請求します。書面の書き方と届いた履歴の点検は過払い金の調査に必要な取引履歴の取り寄せ方|業者への請求手順に、②引き直し計算は過払い金の計算方法|取引履歴から引き直し計算する手順にあります。
③請求書には、①借入期間と契約番号、②引き直し計算の結果(過払い金の額)、③いつまでに、どの口座へ支払ってほしいか、を書きます。郵送は、送った日と内容が残る内容証明郵便と配達証明を使う人が多くいます。条文が内容証明を求めているわけではありませんが、「送った・受け取った」で争いになるのを防げます。
請求書の書き出しの例:「貴社との間の下記の取引につき、利息制限法の上限利率で計算し直した結果、過払い金が発生していますので、下記の金額を令和 年 月 日までに、下記の口座へ支払うよう請求します。」
請求書を送っても時効は延びきらない
請求書の送付は、民法上の「催告」にあたります。催告をすると、その時から6か月間は時効が完成しません(民法150条1項)。ただし、時効が新しく数え直されるわけではなく、猶予の間に二度目の催告をしても、さらに延びることはありません(同条2項)。
つまり、請求書を送ったら、6か月以内に和解が成立するか、訴えを起こすかを決める必要があります。裁判上の請求(訴え)があると、時効の完成が猶予されます(民法147条1項)。過払い金の時効の考え方は過払い金の時効はいつまで?完済日から数える期限と確かめ方で扱っています。完済から10年に近い人は、交渉に時間をかけず、期限の確認を最初にしてください。
交渉で業者から低い額の和解を提示されたとき
業者が引き直し計算の全額ではなく、それより低い額での和解を提示してくることがあります。個別に「受けるべきか」を決める助言はできませんが、判断の材料は次のように並べられます。
- 提示額と、自分の引き直し計算の額の差額を書き出す。
- 差が出る理由を、業者に書面で答えてもらう(計算の方法の違いか、取引の範囲か)。
- 訴訟にしたときの、時間(期日に何回出る必要があるか)と、手数料などの実費を書き出す。
- 和解書の最後に「今後、互いに請求しない」という趣旨の文言(清算条項)がないかを読む。あれば、署名後に追加で請求する道は基本的にないと考える。
- 期限を切られても、その場で決めない。
日本司法書士会連合会の指針の解説は、訴訟をせずに和解すると、回収額に大きな差が出ることがあると指摘しています。低い額の提示を受けたときは、訴訟にしたときとの比較も、材料の一つになります。提示書面を弁護士や司法書士に見せて、意見だけ聞く方法もあります。
訴訟になったときに本人がすること
話し合いがまとまらなければ、裁判所に訴えを起こします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| どの裁判所か | 請求額が140万円以下は簡易裁判所、140万円を超えると地方裁判所(裁判所法33条1項1号)。訴えは被告の住所地の裁判所が原則(民事訴訟法4条) |
| 弁護士なしで出られるか | 本人が自分で訴え、期日に出席できる。簡易裁判所では、許可を得て弁護士でない人を代理人にできる(同法54条) |
| ほかに本人が知ること | 少額訴訟、裁判所の手数料、判決や和解の効力は、裁判の記事で扱う |
訴状には、①当事者、②請求の内容(いくらの支払いを求めるか)、③その理由(取引の経過と引き直し計算の結果)を書き、取引履歴と計算書を証拠として添えます。裁判所のウェブサイトには訴状などの書式が載っていますが、裁判所は中立の立場にあるため、債務整理や倒産手続の申立てに関する相談には応じられないと案内しています。書き方の判断は本人がするか、専門家に頼むことになります。
訴訟の流れ、和解と判決の違い、期間は過払い金請求で裁判になるのはどんなとき?期間と和解との違いで扱っています。
自分でするか、依頼するかを決める材料
自分でするのに向いているのは、借入先が1〜2社で、履歴が手元に届き、計算の自信があり、平日の期日に出席できる人です。迷うのは、次のような場合です。
- 取引が途切れていて、「一連の取引として計算できるか」で結果が変わりそうなとき。
- 請求額が140万円を超えそうなとき(認定司法書士が代理できるのは140万円以下までです。違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点で扱っています)。
- 今も返済している借入があり、ほかの借金と合わせて整理したいとき。
依頼する場合の費用の見方は過払い金請求の費用|成功報酬や手数料の見方と見積もりの確認にまとめています。
よくある質問
Q. 自分で請求するときに、事務所の費用は本当にゼロですか?
報酬を払う相手がいないので、成功報酬はかかりません。かかるのは、取引履歴の請求や請求書の郵送の費用、訴訟にまで進んだときの裁判所の手数料などの実費です。時間と手間は、すべて自分で負担することになります。
Q. 請求書を内容証明郵便で送れば、時効は止まりますか?
請求書の送付は「催告」にあたり、民法150条1項により、催告の時から6か月間は時効が完成しません。ただし時効が振り出しに戻るわけではなく、猶予中にもう一度催告しても猶予は延びません(同条2項)。6か月以内に訴えなどに進むかを決めます。
Q. 業者から提示された和解額に納得できないとき、サインしなくてもよいですか?
和解は双方の合意なので、納得できない額にサインする義務はありません。期限を理由に急がされても、その場で決めず、提示額と引き直し計算の差を確かめてください。迷うときは、弁護士や司法書士に提示書面を見せて意見を聞きます。
出典・参考にした公的な情報
- 貸金業法(第19条の2)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法(第147条・第150条・第166条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法(第4条・第5条・第368条・第373条・第54条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判所法(第33条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 手数料額早見表(2026年5月21日以後の新法適用事件)(裁判所)
- 民事事件Q&A(簡易裁判所の訴訟・少額訴訟・和解)(裁判所)
- 破産・再生(債務整理の相談に裁判所が応じられない旨の案内)(裁判所)
- 債務整理事件の処理に関する指針の解説(令和7年)(日本司法書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。