過払い金の調査に必要な取引履歴の取り寄せ方|業者への請求手順
過払い金があるかどうかは、**業者が持っている取引履歴(いつ・いくら借り、いつ・いくら返したかの記録)**を見ないと調べられません。取引履歴は、貸金業法19条の2にもとづいて、借りていた本人(完済した人を含む)が業者に請求できます。業者は、権利の行使に関する調査が目的でないことが明らかな場合を除き、断れません。手順は、①請求する業者と請求者を決める、②書面か電話で全期間分を請求する、③届いた履歴の日付と金額に抜けがないか見る、の3つです。
取引履歴の開示を求める根拠|貸金業法19条の2
貸金業者は、営業所ごとに帳簿を備え、債務者ごとに契約年月日・貸付けの金額・受け取った金額などを記載して保存しなければなりません(貸金業法19条)。債務者であった人も、利害関係がある部分について、この帳簿の閲覧または謄写(写しをもらうこと)を請求できます(同法19条の2)。
請求できる人は、施行規則17条の2で次のように広く定められています。
| 請求する人 | 条文での位置づけ |
|---|---|
| 借りていた本人(完済済みでもよい) | 債務者等であった者 |
| 法定代理人・後見人など | 本人に代わる立場の人 |
| 相続人 | 亡くなった本人の地位を引き継ぐ人 |
| 本人に代わって返済した人 | 弁済をした者 |
| 上の人から代理権を与えられた人(弁護士・司法書士など) | 代理人 |
取引履歴を保存する期間は、契約ごとに、最終返済期日(債権が弁済などで消えたときはその日)から少なくとも10年です(施行規則17条1項)。10年は保存義務の下限なので、それより前の取引が残っていることもあります。逆に、完済から10年を過ぎていると、古い分が手元に出てこないことも考えられます。過払い金そのものを請求できる期限は別の問題なので、過払い金の時効はいつまで?完済日から数える期限と確かめ方で確かめてください。
閲覧・謄写は、業者の営業時間内に応じる決まりです(施行規則17条の3)。実際の請求の窓口と方法(電話・郵送・会員サイトなど)、写しに実費がかかるかどうかは業者ごとに違います。請求の前に、契約書面や公式サイトの案内、代表電話で確かめておきましょう。
請求前にそろえる情報と、請求する範囲
請求先を間違えないために、まず次の項目を紙に書き出します。
- 借入先の会社名(社名が変わった、合併したなど、現在の名前も)
- 借り始めた年月と、完済した年月(分からなければ「2008年ごろ」など幅でよい)
- 契約番号・会員番号(カードや明細、通帳の引き落とし名義から探す)
- 本人確認に使う氏名・生年月日・当時の住所と現在の住所
- 返信を受け取る住所(家族に知られたくないときの受け取り方は、業者に問い合わせて確かめる)
請求する範囲は、最初に借りた日から最後に返した日まで、全期間にします。ここで日付を狭く書くと、取引の途中から始まる履歴しか届かず、あとで引き直し計算ができなくなります。同じ会社から何度か借り直した人は、「契約が複数ある場合は、すべての契約の履歴を」と書き添えます。
借入先が分からなくなっている場合は、先に借入先を探します。方法は自分の借金を調べる方法|借入先と残高が分からないときの確かめ方にまとめています。
書面での請求の手順と文例
電話で受け付ける業者もありますが、請求した日付と内容を残すために、書面(郵送、または会員サイトのメッセージ)でも請求しておくと、あとで「頼んだのに届かない」という行き違いを避けられます。
- 請求書を書く(下の文例を使う)。
- 本人確認書類の写しを同封する(業者が指定する書類を、事前に電話で聞く)。
- 返信先を書き、郵送は配達の記録が残る方法(簡易書留・配達証明など)にする。
- 請求した日と控えを手元に残す。
- 2〜3週間たっても届かなければ、業者に電話をして、請求書を受け取っているかを聞く。
文例:「貸金業法第19条の2にもとづき、下記の契約に関する帳簿の写し(取引履歴)の交付を請求します。【請求する内容】契約日から完済日(または現在)までの、貸付けと返済のすべての日付・金額・残高が分かる全期間の取引履歴。契約が複数ある場合は、すべての契約分。【契約の情報】お名前、生年月日、契約番号(不明の場合は「不明」)、借入期間(おおよそ『2007年ごろ〜2013年ごろ』)。【返信先】住所。本人確認書類の写しを同封します。」
電話で請求する場合も、「全期間の取引履歴を、いつまでに、どの方法で受け取れるか」をその場でメモします。相手の名前と日時もメモに残してください。
| 段階 | やること | 手元に残すもの |
|---|---|---|
| 1 準備 | 会社名・借入期間・契約番号を書き出す | 書き出したメモ |
| 2 請求 | 全期間分を書面(または電話)で請求する | 請求書の控え・郵送の記録 |
| 3 到着 | 届いた履歴の最初と最後の日付を見る | 取引履歴の原本 |
| 4 点検 | 日付・金額の抜けと重複を探す | 気づいた点のメモ |
| 5 計算 | 利息制限法の上限で引き直す | 引き直し計算の結果 |
届いた取引履歴の読み方と、抜けの見つけ方
届く履歴の様式は業者ごとに違いますが、たいてい次の列があります。
| 列の名前の例 | 見るポイント |
|---|---|
| 取引日・約定日 | 最初の行が、自分の記憶した借り始めと合っているか |
| 貸付額(借入額) | 追加で借りた回の金額と日付 |
| 返済額(入金額) | 毎月の返済の日付と金額 |
| 利息・手数料 | 実際に払った利息の額(利率の記載があれば、その数字も) |
| 残高 | 返済のたびに、残高が履歴どおりに動いているか |
点検する順番は次のとおりです。
- 最初の日付:借り始めの年月が、自分の記憶や古い明細と合っているか。昔の取引がまるごと欠けていないか。
- 途中の空白:返済の記録が数か月〜数年途切れていないか。一度完済して、別の契約番号で借り直した場合は、履歴が別々に出ることがあります。
- 最後の日付:完済した日、または現在の残高が、手元の記録と合っているか。
- 利率:10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%という上限(利息制限法1条)を超える利率で計算されていないか。同じ業者から重ねて借りたときは、残っている元本と新しい借入れを足した額で区分が決まるため(同法5条)、借入れの途中で上限の率が変わっていないかも見ます。
- 貸付けの時期:2010年6月18日より前に借りた分が含まれているか。金融庁の説明では、この日に出資法の上限が年29.2%から年20%に下がっています。
履歴の一部が欠けて届いたときは、「この期間の履歴が欠けている理由と、残っている履歴の範囲」を書面で答えてもらいます。欠けた部分をどう扱うかは、依頼先の弁護士・司法書士と相談して決めます。
履歴を手に入れたあとの計算は、過払い金の計算方法|取引履歴から引き直し計算する手順で扱っています。
自分で請求しにくいときの選択肢
請求書を書く、業者とやり取りをするといった作業が負担なときは、弁護士や司法書士に依頼する方法があります。施行規則17条の2は、代理権を与えられた人も請求できるとしているので、依頼先が本人に代わって履歴を取り寄せることができます。
依頼するときは、取引履歴の取り寄せだけで費用がかかるのか、過払い金が出なかった場合の費用はどうなるのかを、依頼する前に書面で確かめておきます。費用の見方は過払い金請求の費用|成功報酬や手数料の見方と見積もりの確認で扱っています。
業者が正当な理由なく開示に応じない、期限を過ぎても何も返ってこないというときは、日本貸金業協会(貸金業者への苦情・相談の窓口)や消費生活センター(188)に相談できます。窓口の番号は、借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方で一覧にしています。
よくある質問
Q. 取引履歴を請求すると、新しい借金や手続きになってしまいますか?
取引履歴の開示請求は、貸金業法19条の2が認める「帳簿の閲覧・謄写」の請求で、返済の約束や債務整理を始める手続きではありません。請求しただけで契約が増えたり、返済条件が変わったりはしません。
Q. 契約書も明細も捨ててしまい、会社名しか覚えていません。請求できますか?
会社名と、おおよその借入時期、本人と分かる情報(氏名・生年月日・住所)があれば、業者に問い合わせる足がかりになります。契約番号が分からないときは、その旨を書いて、業者の側で氏名などから探してもらいます。会社名も思い出せないときは、信用情報機関の開示で借入先の手がかりを探します。
Q. 業者が「完済から年数がたつので履歴はない」と言ってきたら?
帳簿の保存義務は、契約ごとに最終返済期日から少なくとも10年と定められています。10年を過ぎた分は残っていないことがありますが、10年を過ぎても保管している業者はあります。「ない」と言われたら、どの期間の履歴が残っているかを書面で答えてもらい、その回答を依頼先に見せてください。
出典・参考にした公的な情報
- 貸金業法(第19条・第19条の2)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法施行規則(第17条・第17条の2・第17条の3)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法のキホン(上限金利の引下げ)(金融庁)
- 利息制限法(第1条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。