時効と過払い金 / 手順

過払い金の計算方法|取引履歴から引き直し計算する手順

この記事のもくじ
  1. 引き直し計算の全体像
  2. 6つの手順を1つずつ
  3. 小さな計算例(筆者の計算・検算つき)
  4. エクセルで作るときの列と式
  5. 計算ソフトを使うときの注意
  6. 計算した結果を持って相談する

過払い金の計算は、取引履歴の借入れと返済を1件ずつ並べ、利息制限法の上限金利で利息を計算し直す作業です。上限を超えて払った分を元本の返済にまわして、残元本を追っていき、残元本がゼロを下回った額が過払い金の元金になります。この記事では、その手順を、小さな計算例(検算つき)で示します。エクセルで作る列と、計算ソフトを使うときの注意(過払い利息の扱い)も書きます。

引き直し計算の全体像

利息制限法1条は、借りた元本が10万円未満なら年20%、10万円以上100万円未満なら年18%、100万円以上なら年15%を、利息の上限としています。上限を超える部分の利息は無効です。2010年6月18日より前は、貸金業者が、出資法の上限(年29.2%)と利息制限法の上限の間の金利(グレーゾーン金利)で貸していました(金融庁の説明)。この「間」の部分が、引き直し計算で動く部分です。

手順の表:引き直し計算の6つの手順
手順 やること 使う情報
1 取引履歴を取り寄せる 貸金業法19条の2による帳簿の請求
2 借入れと返済を日付順に1行ずつ並べる 日付・借入額・返済額
3 上限金利の区分を決める 借りた元本(追加の借入れは合算)
4 返済日ごとに、上限内の利息を計算する 前回からの日数×残元本×上限の年利÷365
5 返済額から利息を引き、元本に充てる 返済額、4の利息
6 残元本を更新し、ゼロを下回った額を過払い元金とする 5の結果

取引履歴の取り寄せは過払い金の調査に必要な取引履歴の取り寄せ方|業者への請求手順で、そもそも対象になるかの見分け方は過払い金の対象か確かめる5項目|借りた時期と金利の見方で確かめられます。

6つの手順を1つずつ

手順1・2:履歴を日付順に並べる。 履歴には、貸付日と貸付額、返済日と返済額が並んでいます。業者の計算書の「利息」「元本」の欄はいったん無視して、日付と金額だけを写します。取引の途中で、完済してまた借りている場合は、1つの取引としてつなげて計算するか、別々に計算するかで結果が変わることがあります。つなげる扱いは、間隔や契約の形で判断が分かれるので、履歴を依頼先に見せて決めます。

手順3:区分を決める。 区分は、借りた元本の額で決まります。同じ業者から重ねて借りたときは、利息制限法5条により、すでにある残元本と新しく借りた額の合計が、元本の額とみなされます。たとえば、残元本が9万円の人が、同じ業者から追加で3万円借りると、合計12万円で、年18%の区分になります。

手順4:上限内の利息を出す。 前回の返済日から今回の返済日までの日数を数え、「返済前の残元本×上限の年利×日数÷365」で、利息を計算します。端数の円未満の扱いと、うるう年の日数は、業者やソフトで違います。この記事の例は、円未満を切り捨てています。

手順5・6:元本に充てて、残元本を追う。 返済額から利息を引いた残りを、元本の返済に充てます。これを返済のたびに繰り返し、残元本を更新します。残元本がマイナスになったら、そのマイナスの額が過払い元金です。

小さな計算例(筆者の計算・検算つき)

次の取引で、計算してみます(仮の数字です)。

  • 2006年4月1日に、150,000円を借りた。契約の金利は年29.2%。
  • 2006年5月1日から10月1日まで、毎月1日に10,000円を返した(6回)。
  • 元本が10万円以上100万円未満なので、上限は年18%。
計算例:年18%で引き直した、6回分の返済(円未満切り捨て)
返済日 日数 返済前の残元本 上限内の利息 元本に充てる額 返済後の残元本
2006/5/1 30 150,000 2,219 7,781 142,219
2006/6/1 31 142,219 2,174 7,826 134,393
2006/7/1 30 134,393 1,988 8,012 126,381
2006/8/1 31 126,381 1,932 8,068 118,313
2006/9/1 31 118,313 1,808 8,192 110,121
2006/10/1 30 110,121 1,629 8,371 101,750

1行目の計算は、150,000円×0.18×30日÷365=2,219.18円で、切り捨てて2,219円です。返済10,000円から2,219円を引いた7,781円が元本に充てられ、残元本は142,219円になります。

検算:6回の返済の合計は60,000円です。利息の合計は 2,219+2,174+1,988+1,932+1,808+1,629=11,750円、元本に充てた額の合計は 7,781+7,826+8,012+8,068+8,192+8,371=48,250円で、11,750+48,250=60,000円と一致します。残元本は150,000-48,250=101,750円です。

同じ6回の返済を、契約どおりの年29.2%で計算すると、利息の合計は19,556円、元本に充てた額は40,444円、残元本は109,556円です。引き直しで、残元本が109,556-101,750=7,806円少なくなります(19,556-11,750=7,806円とも一致)。この例は、まだ残元本が残っていて、過払いは出ていません。返済を続けて、残元本がゼロを下回ったときに、はじめて過払い元金が出ます。

仮に、残元本が12,000円の状態で、最後の返済が20,000円、上限内の利息が120円なら、元本に充てるのは20,000-120=19,880円で、残元本は12,000-19,880=-7,880円です。この7,880円が過払い元金になります(筆者の計算)。

エクセルで作るときの列と式

表計算ソフトでも、同じ計算を自作できます。1行目を見出し、2行目を最初の借入れ、3行目以降を取引の順に入れる前提です。

列 内容 3行目の式の例
A 日付 入力
B 借入額(なければ0) 入力
C 返済額(なければ0) 入力
D 前の行からの日数 =A3-A2
E 適用する年利 =IF(B3>0,IF(H2+B3<100000,0.2,IF(H2+B3<1000000,0.18,0.15)),E2)
F 上限内の利息 =ROUNDDOWN(MAX(H2,0)E2D3/365,0)
G 元本に充てる額 =MAX(C3-F3-I2,0)
H 残元本 =H2+B3-G3
I 払いきれていない利息(次の行へ繰り越す) =MAX(F3+I2-C3,0)

E列は、借入れのある行で、そのときの残元本と新しい借入額の合計から区分を決め(利息制限法5条)、借入れのない行では前の行の年利を引き継ぎます。2行目は、E2に最初の借入額の区分、H2に最初の借入額、I2に0を入れます。H列がマイナスになった行から、その額が過払い元金です。

返済額が上限内の利息に満たない月は、I列に不足分を繰り越し、次の返済で先に充てる作りにしています。借入れだけの行(返済額0)も、利息は元本に足さずI列に積みます。不足分を繰り越さない計算や、元本に組み入れる計算もあり、結果が変わります。そういう月が出たら、扱いを依頼先に確かめます。

計算ソフトを使うときの注意

インターネットには、取引履歴を入力すると過払い金を出してくれる計算ソフトがあります。使うときは、次の点に気をつけます。

  • 過払い利息の設定:民法704条は、悪意の受益者に、受けた利益に利息を付けて返すよう求めています。ソフトによっては、過払い金に利息を加算する設定があります。ただし、業者が悪意の受益者にあたるかは個別の判断で、利息が付くか、率がいくらかは、ソフトの設定では決まりません。利率は、利息が生じた時期の法定利率で考えます(民法404条)。2020年3月31日以前に生じた分は年5%、4月1日以後に生じた分は年3%とする考え方です(法務省の資料)。2026年4月1日から2029年3月31日までの法定利率も年3%です(法務省告示で確認)。元金だけの数字と、利息を足した数字は、分けて見ます。
  • 入力ミス:日付や金額を1件間違えるだけで、数字が変わります。履歴と、1行ずつ突き合わせます。
  • 区分の扱い:追加の借入れの合算や、返済で残元本が減ったときの区分の扱いは、ソフトで違います。
  • 日割りの年の日数と端数:365日か、うるう年は366日か、円未満の端数をどう処理するかで、数円から数百円の差が出ます。

自分の計算は目安として持ち、数字の食い違いは、業者の計算書と見比べて原因を探します。戻る額が決まる仕組みは過払い金はいくら戻る?戻る額が決まる仕組みと試算の注意に、任意整理の中で調べる流れは任意整理で過払い金が見つかることはある?調べる範囲と流れにあります。

計算した結果を持って相談する

計算の結果は、業者に請求するための材料になります。ただし、実際の請求は、交渉や裁判が伴う法律事務なので、弁護士か、1社140万円以下の範囲の認定司法書士に依頼するのが通常です。両者の違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点で整理しています。

自分で計算した過払い金を、弁護士・司法書士に見せて相談するという選択肢もあります。選ぶときは、履歴を見たうえで計算してくれるか、費用が見積書で示されるか、ほかの借金も含めて話を聞いてくれるかを確かめます。

よくある質問

Q. 計算ソフトやエクセルの結果は、そのまま請求額にしてよいですか?

目安として使い、請求の金額は、取引履歴を見た弁護士・認定司法書士の計算を基準にします。履歴の入力ミスや、端数・日割りの扱いの違いで、数字は変わります。自分の計算は、依頼先に見せて相談するときの材料にします。

Q. 取引履歴が手元になくても、計算できますか?

履歴がなければ計算できません。貸金業法19条の2により、債務者または債務者であった人は、業者に帳簿の閲覧・謄写を請求できます。まず履歴を取り寄せて、全期間の借入れと返済の日付・金額をそろえます。

Q. 計算の結果、残高が残ったら何も戻りませんか?

残高が残る結果は、過払い金がまだ出ていない状態です。ただし、業者の請求より残高が減るなら、その分の返済は軽くなります。減った残額をどう返すかは、任意整理として業者と決めます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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