債務整理の全体と選び方 / 制度解説

借金の減額とは?利息や元本が見直される法律上の仕組み

この記事のもくじ
  1. 借金の減額とは:見直される4つの部分
  2. 任意整理:将来の利息と、引き直し計算で減る分
  3. 個人再生:返済総額の下限が法律で決まる
  4. 自己破産:免責で支払う責任がなくなる範囲
  5. 過払い金と特定調停:もう一つの減額の形

借金の減額とは、法律の手続きや借入先との合意によって、これから返す額が小さくなることです。何が見直されるかは手段で違い、任意整理は主に将来の利息と遅延損害金、個人再生は裁判所が認めた計画による返済総額、自己破産は免責による支払う責任そのもの、過払い金請求は払いすぎた利息の取り戻しが中心です。どれだけ減るかは、借りた時期・金利・収入・財産で変わり、手続きを始める前には決まりません。ここでは、それぞれが法律上どういう仕組みなのかを条文に沿って整理します。

借金の減額とは:見直される4つの部分

借金の返済額は、元本・利息・遅延損害金と、和解の後に付くかもしれない将来の利息でできています。減額の手段ごとに、どの部分に手が入るのかを先に見ておきます。

早見表:減額の手段と見直される部分
手段 見直される部分 決める人・場 主な根拠
任意整理 将来の利息・遅延損害金(交渉)、上限超えの利息(引き直し計算) 借入先との交渉(裁判所は使わない) 利息制限法1条
特定調停 任意整理と近い返済条件の見直し 簡易裁判所の調停 特定調停法
個人再生 返済総額(最低弁済額などの下限まで) 地方裁判所が計画を認可 民事再生法231条
自己破産 支払う責任そのもの(免責。税金などは除く) 地方裁判所の免責許可 破産法252条・253条
過払い金請求 払いすぎた利息の返還 借入先との交渉か裁判 利息制限法1条

「借金 返済 減額」と検索する人の中には、毎月の返済額を少し下げたいだけの人もいます。返済額を下げるだけなら、借入先に返済条件の変更を相談する方法もあり、その場合は総額が減るとは限りません。総額が法律の仕組みで減るのは、上の手段を使ったときです。

任意整理:将来の利息と、引き直し計算で減る分

任意整理は、弁護士・認定司法書士が借入先と交渉して、残りの返し方を決め直す手続きです。減額は2つの仕組みで起きます。

1つ目は、利息制限法の上限を超える利息の引き直しです。 利息制限法1条は、元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%を上限とし、超える部分を無効としています。貸金業者には、この上限を超える利息の契約が禁じられています(貸金業法12条の8)。上限を超えていた期間があれば、取り寄せた取引履歴をもとに上限の金利で計算し直し、払いすぎた利息を元本に充てます。借入先は、債務者から求められれば帳簿(取引履歴)の閲覧・謄写に応じなければなりません(貸金業法19条の2)。

ただし、改正貸金業法が完全施行された2010年6月18日に、出資法の刑事罰の上限金利が年29.2%から年20%に下がり、利息制限法の上限との間の金利(いわゆるグレーゾーン金利)はなくなりました(金融庁)。日司連の指針の解説も、今は上限を超える貸付けがほとんどなく、引き直し計算が要らない例が多いと書いています。

2つ目は、和解の後に付く将来の利息と遅延損害金の扱いです。 これは法律で決まる減額ではなく、借入先との交渉で決まります。日司連の解説は、安易に将来利息や遅延損害金を付ける和解を、偏った不適切な処理の例に挙げています。分割の期間について、日司連は3年程度の和解が多いと説明しています。

将来の利息が付くかどうかで、返す総額がどれだけ変わるかの例です(筆者の計算)。

条件(残高60万円を36回で返す) 月の返済額 返す総額
年18%の利息が付いたまま(元利均等) 約21,691円 約780,892円
将来の利息なしで和解できた場合 約16,667円 600,000円

この例では総額で約18万円の違いになりますが、和解の条件は借入先ごとに違い、同じ結果になるとは限りません。業者の貸付けの遅延損害金は年20%が上限です(利息制限法7条)。

個人再生:返済総額の下限が法律で決まる

個人再生は、地方裁判所が認めた再生計画どおりに、原則3年(特別の事情があれば最長5年)で返す手続きです(民事再生法229条2項)。小規模個人再生では、計画の返済総額が次の下限を下回ると認められません(231条2項3号・4号)。

基準債権の額(住宅ローン等を除いた借金) 返済総額の下限(筆者が条文から整理)
100万円に届かない 借金の全額
100万円から500万円まで 一律100万円
500万円超から1,500万円まで 借金の5分の1
1,500万円超から3,000万円まで 一律300万円
3,000万円超から5,000万円まで 借金の10分の1

たとえば対象の借金が600万円なら、下限は5分の1の120万円です(筆者の計算)。ただし、財産を処分した場合に配当できる額(清算価値)がこれより多ければ、返済総額はその額以上にする必要があります。住宅資金特別条項を使う場合、住宅ローンは減らず、減るのはほかの借金です。計算の細部は個人再生の最低弁済額の早見表|借金額ごとの返済総額と計算の仕方で扱います。

自己破産:免責で支払う責任がなくなる範囲

自己破産は、財産を金銭に換えて配当し、残った借金について裁判所の免責許可を受ける手続きです。免責許可の決定が確定すると、配当を除いて借金の支払いの責任を免れます。ただし、次のものは免責されません(破産法253条1項)。

  • 税金などの租税等の請求権
  • 悪意で加えた不法行為の損害賠償
  • 養育費・婚姻費用など家族を扶養する義務に関する請求
  • 知りながら債権者名簿に載せなかった請求権
  • 罰金など

浪費やギャンブルで財産を大きく減らした場合などは免責不許可事由に当たりますが、当たる場合でも、裁判所が事情を考えて免責を許可することがあります(252条1項・2項)。どの手続きでも、本人の借金が減ったり免責されたりしても、保証人への請求は残ります(破産法253条2項、民事再生法177条2項)。

過払い金と特定調停:もう一つの減額の形

過払い金は、利息制限法の上限を超えて払っていた利息を、引き直し計算した結果、払いすぎになった分です。返済中なら残高が減るか、残高を超えれば差額を返してもらう請求になり、完済した借金でも請求できる場合があります。請求できる期限があるので、過払い金請求と借金の時効|昔の借金で確かめる2つのことで考え方を確かめておきましょう。

特定調停は、支払不能に陥るおそれのある人が、簡易裁判所の調停で借入先と返済方法を話し合う手続きです(特定調停法1条・2条)。本人が申し立てられる点が任意整理との違いで、くわしくは債務整理の特定調停とは?自分で申し立てる流れと任意整理との違いにあります。

4つの手続きの要件や信用情報への影響まで一つの表で比べたいときは、債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いが正本です。どの手段で自分の借金がどれだけ減るかは、取引履歴と家計を見たうえで弁護士・司法書士が説明する事項です。依頼を考えるなら、選ぶときは、登録の確認、受任する人との面談、費用の総額の書面を確かめましょう。

広告で見かける「借金減額制度」が国の制度なのかは、次の借金減額制度は国の制度?広告の「制度」の正体と本当の手続きで整理します。前の記事の借金減額診断とは?仕組みと使う前に知っておきたい注意点もあわせてどうぞ。

よくある質問

Q. 借金の元本そのものが減ることはありますか?

あります。利息制限法の上限を超える金利で払っていた期間があれば、引き直し計算で払いすぎの利息が元本に充てられ、残高が減ります。個人再生では計画の返済総額まで、自己破産では免責で支払う責任そのものがなくなります。一方、金利が上限の範囲内だった借金の任意整理では、元本は減らず利息の見直しが中心になります。

Q. 銀行のカードローンも減額の対象になりますか?

銀行のカードローンも、任意整理・個人再生・自己破産の対象にできます。利息制限法は貸主が銀行でも貸金業者でも適用されますが、日司連の説明では、銀行のローンや平成21年6月以降の借入で金利が利息制限法の範囲内の場合、元本の減額が望めないこともあるとされています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

借金減額制度は国の制度?広告の「制度」の正体と本当の手続き

債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違い

個人再生の最低弁済額の早見表|借金額ごとの返済総額と計算の仕方

過払い金請求の流れと時効|昔の借金で確かめる順番と戻る条件