債務整理の全体と選び方 / 制度解説

債務整理の特定調停とは?自分で申し立てる流れと任意整理との違い

この記事のもくじ
  1. 特定調停とは:簡易裁判所で返し方を話し合う手続き
  2. 申立てから終わるまでの流れ
  3. 申立てに必要な書類と費用の確かめ方
  4. 任意整理との違いを表で比べる
  5. 特定調停が向くとき・向かないとき

特定調停は、借金の返済が続けられなくなりそうな人が、簡易裁判所で調停委員会を交えて借入先と返済方法を話し合う債務整理の手続きです。弁護士や司法書士に頼まず、本人が申し立てられるのがいちばんの特徴です。話し合いがまとまると調停調書が作られ、その内容は判決と同じ効力を持ちます。一方で、利息や過払い金の扱いを決める定めは法律になく、約束どおり払えないと強制執行を受けることがある点が、任意整理と違います。

特定調停とは:簡易裁判所で返し方を話し合う手続き

特定調停は、特定調停法(正式名は「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」)が定める、民事調停の特例です(1条)。使えるのは「特定債務者」で、金銭の借金を負っていて支払不能に陥るおそれがある人、事業を続けながら期限の来た借金を返すのが難しい人などです(2条1項)。

裁判所のリーフレットは、特定調停を「生活の建て直しを図るために返済方法などを債権者と話し合う手続」と説明しています。話し合いの場には、通常は裁判官1人と調停委員2人からなる調停委員会が入ります(裁判所「民事調停」)。調停委員には、法律・税務・金融などの専門的な知識を持つ人が指定されます(特定調停法8条)。

調停で決まる内容は、債務者の経済的再生に役立つ観点から、公正かつ妥当で経済的合理性のあるものでなければならないとされています(15条・17条2項)。調停は非公開の席で行われます(裁判所「民事調停」)。

申立てから終わるまでの流れ

特定調停は、次の順に進みます。

  1. 借入先ごとの資料をそろえる:契約書、返済の記録、収入と支出が分かるものを集めます(次の見出しのチェック表)。
  2. 申立書を出す:調停申立書を、相手方(借入先)の住所地を管轄する簡易裁判所に出します。その際、特定調停の手続きを使いたいことをはっきり書き、毎月いくらなら払えるか、返済の期限をどのくらい猶予してほしいかも示します(簡易裁判所Q&A)。
  3. 調停期日に出る:調停委員会が双方の話を聞きます。借入先は、借金の発生原因や返済による変化などの事実を明らかにしなければならず(特定調停法10条)、調停委員会は必要があれば関係する文書の提出を求められます(12条)。取引の記録をもとに、今の残高を確かめる場になります。
  4. 合意して調停調書を作る:話し合いがまとまると、合意の内容が調停調書に書かれます。裁判所のリーフレットは、この調書には判決と同じ効力があり、約束どおり返さないと強制執行を受けることがあると説明しています。
  5. まとまらないとき:合意の見込みがなければ、裁判所が調停に代わる決定をしない限り、不成立で終わります(18条)。調停に代わる決定は、2週間以内にどちらかが異議を出すと効力を失います(簡易裁判所Q&A)。

裁判所の「民事調停」のページは、民事調停一般について、申立てから2、3回の期日を経て、おおむね3か月以内に成立などで終わると説明しています。これは民事調停全体の目安で、特定調停に限った数字ではありません。期間の考え方は債務整理にかかる期間|相談から終わるまでの手続き別の目安でほかの手続きと並べています。

流れ:特定調停の5つの段階
  1. 資料集め(契約書・返済の記録・家計)
  2. 申立て(相手方の住所地の簡易裁判所へ。特定調停を求めると明示)
  3. 調停期日(調停委員会が双方から聞き取り、残高を確かめる)
  4. 成立 → 調停調書(判決と同じ効力。返済が始まる)
  5. 不成立 → 終了。調停に代わる決定が出ることもある(2週間以内の異議で失効)

申立てに必要な書類と費用の確かめ方

申立ての際には、財産の状況を示す明細書その他、特定債務者であることを明らかにする資料と、関係する債権者の一覧表を出します(特定調停法3条3項)。裁判所のリーフレットが例として挙げているのは次のものです。準備のチェック表として使えます。

  • 資産の一覧表(不動産・自動車・預貯金・生命保険の解約返戻金など)
  • 債権者と担保権者の一覧表
  • 収入と支出が分かるもの(給与明細・家計簿・通帳などの写し)
  • 借入れの内容が分かるもの(契約書などの写し)
  • これまでの返済の内容が分かるもの(領収証などの写し)

費用は、裁判所に納める申立て手数料(収入印紙)と、連絡に使う郵便料です。民事調停の手数料は、民事訴訟費用等に関する法律の別表第一14の項で、調停を求める事項の価額に応じて決まります(たとえば価額100万円までは10万円ごとに500円)。借金の整理を求める特定調停で、その「価額」を借入先1社ごとにどう数えるかや郵便料の額は、申立先の簡易裁判所の窓口で確かめるのが確実な方法です。弁護士・司法書士に頼まない場合は、その報酬はかかりません。

借入先が複数あり、それぞれの本社の所在地が違うと、申立先の簡易裁判所が分かれることがあります。何社分をどこに出すかは、申立て前に簡易裁判所へ相談の電話をして確かめておくと手戻りを防げます。

任意整理との違いを表で比べる

特定調停とよく比べられるのが任意整理です。どちらも返済を続ける手続きで、借入先と返し方を話し合う点は同じですが、進め方と効力が違います。

比較:特定調停と任意整理の違い
比べる点 特定調停 任意整理
進める人 本人が申し立てる(弁護士・司法書士に頼むこともできる) 弁護士・認定司法書士が代理人として交渉するのが通常
場所 簡易裁判所(調停委員会が入る) 裁判所を使わない
督促との関係 貸金業法21条1項9号は「債務の処理のため必要な裁判所の手続をとり、裁判所から書面による通知があった場合」も対象に挙げる。申立て後に通知が出るかは申立先の簡易裁判所で確かめる 弁護士・司法書士から書面で通知があった後、貸金業者が正当な理由なく電話・訪問で返済を求めることが、同じ号で禁止される
将来の利息 法律の定めはなく、調停での合意しだい 法律の定めはなく、交渉での合意しだい
過払い金 返還を求める定めは特定調停法にない。別に請求するかを確かめる 代理人が取引履歴をもとに調べ、請求することがある
合意の効力 調停調書は判決と同じ効力。払わないと強制執行を受けることがある 和解書。払われなかったとき強制執行をするには、別に裁判などで債務名義を得る必要がある
費用 申立て手数料と郵便料 弁護士・司法書士の報酬

表のとおり、特定調停は費用を抑えやすい一方、平日に裁判所へ出向く手間と、合意に強い効力がつく点を引き受けることになります。任意整理を本人が進める場合との比較は借金の減額交渉は自分でできる?任意整理を本人が進める流れに、4つの手続き全体の比較は債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いにあります。

特定調停が向くとき・向かないとき

特定調停が候補になりやすいのは、次のような場合です。

  • 毎月の収入があり、利息や返済期間の見直しで返し続けられそうなとき
  • 弁護士・司法書士に払う費用を用意するのが難しいとき
  • 平日に簡易裁判所へ出向く時間をつくれるとき

反対に、別の手続きを考えたほうがよいのは次のような場合です。

  • 元金を減らさないと返せない(個人再生か自己破産の検討になる)
  • 借入先が多く、申立先の簡易裁判所が何か所にも分かれる
  • 督促や取立てがすでに強く、相談した日から早く対応を始めたい(依頼の後すぐに受任通知を出せる任意整理のほうが合うことがある)
  • 給料の差押えが始まっている(特定調停法7条に民事執行の停止を命じる制度はあるが、条文のただし書が給料などに係る債権に基づく執行を除いている。給料の差押えにどう働くかは、簡易裁判所や弁護士・司法書士に早めに確かめる)

どの手続きが合うか迷うときは、債務整理とは?4つの手続きの違いと自分に合う方法の選び方の分かれ道で見当をつけてから、公的な窓口や法テラスで相談すると整理しやすくなります。窓口の一覧は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間にあります。

次は、債務整理はいくらからできる?借金額が少なくても相談してよい目安で、借金の額と手続きの関係を確かめておきましょう。

よくある質問

Q. 調停の日に仕事でどうしても行けないときはどうしますか?

通知された日時に出頭するのが原則です。病気などで出られないときは担当の書記官に相談し、やむを得ない場合は家族などを代理人にできることがあると、裁判所の簡易裁判所Q&Aは案内しています。遠方で出頭が難しい人は、調停条項の案を受け入れる書面で合意に代えられる定めもあります(特定調停法16条)。

Q. 特定調停をしたことは信用情報に記録されますか?

記録されることがあります。JICCは登録する取引事実に「債務整理」などを挙げ、2019年10月1日以降の契約については契約継続中と契約終了後5年以内を登録期間としています。特定調停がどの区分で載るかはJICCのページに書かれていないため、自分の記録は開示で確かめます。新しいカードやローンの審査が通りにくくなる点は、任意整理と同じように考えておきます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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