借金返済と貯金はどちらを優先?手元に残す額の目安と考え方
この記事のもくじ
借金返済と貯金のどちらを優先するかは、借金の金利が高いなら、生活費1か月分と次回の返済額を手元に残し、それを超える分を繰り上げ返済に回すのが、多くの家計で利息と安全の釣り合いを取りやすい考え方です。カードローンの金利と預金の利息では、利率に70倍以上の開きがあるため(年15%と年0.2%の比較、筆者の計算)、余ったお金を口座に置いておくほど損が膨らみます。一方で、手元をゼロにすると急な出費でまた借りることになり、返した意味が薄れます。以下では、その理由を筆者の計算で示し、残す額の決め方を手順で整理します。
借金返済と貯金、どちらを優先する?先に結論
判断の目安を表にまとめます。金額は家計ごとに違うので、自分の数字に置き換えて使ってください。
| 状態 | 優先すること | 理由 |
|---|---|---|
| 手元資金が次の返済額にも足りない | 手元資金を作る(繰り上げはしない) | 返済日に足りないと延滞になり、遅延損害金と信用情報への記録が生じうる |
| 手元に生活費1か月分+次回の返済額があり、年10%を超える借金も残っている(10%は筆者の目安) | 超えた分を金利の高い借金の繰り上げ返済へ | 預金の利息より借金の利息の方がはるかに大きい |
| 金利の高い借金がない(低金利の住宅ローン・無利子の奨学金だけ) | 約束どおり返しながら貯金を厚くする | 急いで返しても減る利息が小さい |
| 毎月の返済で家計が赤字 | 配分より先に、返済の条件や家計の見直しを相談 | 貯金も繰り上げもできない状態は、返し方の問題 |
「生活費1か月分」は、家賃・食費・光熱費・通信費など、収入が1か月止まっても暮らしを回せる額です。ここに次回の返済額を足すのは、給料日のずれや急な出費があっても、返済日に口座が空になる事態を防ぐためです。家計が赤字のまま貯金と返済の両立を考えても続かないので、その場合は先に赤字家計の立て直し方で収支を整えます。
金利と預金の利息を筆者の計算で比べる
金融庁の貸金業関係資料集によると、令和7年3月末の消費者向け無担保貸金業者(261社)の無担保貸付の平均約定金利は15.26%でした。利息制限法は、元本10万円未満で年20%、10万円以上100万円未満で年18%、100万円以上で年15%を利息の上限としています。同じ資料集の金利帯別の内訳では、年14%超16%以下の契約に残高の85.4%が集まっていて、消費者向け無担保貸金業者の貸付残高の多くがこの上限に近い水準にあることが分かります。
ここで、借金50万円(年15%)があり、手元に20万円の余裕資金がある人を例に、20万円を「口座に置く」場合と「繰り上げ返済に回す」場合を比べます。利息は「残高×年率÷365×日数」で計算し、残高が1年間変わらないものとして単純化しています。
| 項目(筆者の計算) | 20万円を口座に置く | 20万円を繰り上げ返済する |
|---|---|---|
| 借金の残高 | 50万円 | 30万円 |
| 30日分の利息 | 約6,164円 | 約3,699円 |
| 1年分の利息(残高が変わらない場合) | 75,000円 | 45,000円 |
| 20万円に付く預金の利息(年0.2%と仮定・税引前) | 400円 | 0円 |
| 差し引き | — | 1年でおよそ29,600円の差 |
検算:500,000×0.15÷365×30=6,164.4円、300,000×0.15÷365×30=3,698.6円、75,000−45,000=30,000円、30,000−400=29,600円。預金の金利は銀行や商品で違うので、自分の口座の金利に置き換えてください。仮に預金の金利が年0.2%より高くても、年15%の借金の利息との差はほとんど縮みません。
繰り上げ返済で利息が減る仕組みや、リボ払い・カードローンで繰り上げたお金がどう充てられるかは、借金の繰り上げ返済で利息が減る仕組みで詳しく扱っています。
手元をゼロにしない理由:急な出費で借り直す危険
計算だけを見ると、余裕資金はすべて返済に回したくなります。それでも手元資金を残す方がよいのは、急な出費が起きたとき、ほかに頼れるお金がないと、また借りるしかなくなるからです。
内閣官房の懇談会資料にある金融庁の委託調査(2024年12月〜2025年1月のインターネット調査、3年以内に消費者金融を利用した人が対象)では、借りた目的として「生活費(光熱水費を含む)の不足」が45.9%で最も多く、「医療費」9.5%、「冠婚葬祭」7.8%という回答もありました(複数回答)。生活費の不足や予定外の出費が、借入の理由として大きな割合を占めていることが分かります。
たとえば、手元をゼロにした翌月に家電の買い替えで10万円が必要になり、年18%で借り直したとします。半年(183日)返せずにいると、利息は100,000×0.18÷365×183=約9,025円です(筆者の計算)。さらに返済日に間に合わずに延滞すると、遅延損害金がかかり、信用情報に延滞の記録が残ることもあります。手元資金は、利息の差を少し譲ってでも、この連鎖を断つための保険と考えます。
手元に残す額の決め方と、繰り上げに回す手順
次の順番で、自分の家計の数字を当てはめます。
- 借入の一覧を作る:借入先、残高、金利、毎月の返済額、返済日を1枚にまとめる。作り方は借金の返済計画の立て方で紹介しています。
- 生活費1か月分を出す:直近2〜3か月の支出の平均から、固定費(家賃・光熱費・通信費・保険)と変動費(食費・日用品)を足す。
- 手元資金の目標を決める:「生活費1か月分+次回の返済額の合計」を最初の目標にする。収入が不安定な人(歩合・シフト制・自営業)は、2か月分を目標にすると給料日のずれに耐えやすくなります。
- 目標を超えた分を、金利の高い借金から繰り上げる:同じ金額なら金利の高い方を減らすほど利息が減る。少額の繰り上げでも、回数を重ねる方が後回しにするより有利です。
- 完済したら、返していた額をそのまま貯金に回す:返済額だった分を毎月の積み立てに切り替えると、生活の水準を変えずに手元資金が増えます。
| 月の手取り例 | 生活費1か月分 | 返済額(合計) | 最初の手元資金の目標 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 15万円 | 3万円 | 18万円 |
| 25万円 | 18万円 | 4万円 | 22万円 |
| 30万円 | 21万円 | 5万円 | 26万円 |
(表は手順3の当てはめ方を示す筆者の例。目標=生活費1か月分+返済額。)
ボーナスや臨時収入が入ったときも、同じ順番で考えます。まず手元資金の目標に届いているかを確かめ、届いていれば残りを繰り上げへ、届いていなければ不足分を口座に残します。
返済と貯金の両立ができないときは
手元資金を作る余裕もなく、毎月の返済で精いっぱいという場合、配分を工夫しても状況は変わりにくいものです。次のどれかに当てはまるなら、返し方そのものを見直す段階です。
- 返済のために別のカードや借入を使ったことがある
- 毎月の返済額のうち、利息の割合が大きく、残高がほとんど減っていない
- 給料日前に生活費が尽き、カードで食費を払っている
こうした場合は、家計の収支を正確に把握したうえで、返済の条件の相談や公的な窓口に話すことを考えます。家計を記録する具体的な方法は、次の記事借金返済中の家計簿のつけ方で、返済額を固定費として先に引く見本とともに紹介しています。
よくある質問
Q. 貯金が少しあるなら、全部使って借金を一括で返した方が得ですか?
利息だけを見れば、返した分だけ早く利息が止まります。ただ、手元がゼロになると、病気や家電の故障などの出費でまた借りることになりやすく、借り直した分の利息で差が縮みます。生活費1か月分と次の返済額を残し、それを超える分を返すのが、利息と安全の釣り合いを取りやすい形です。
Q. 奨学金や住宅ローンも同じ考え方でいいですか?
金利が低い借金ほど、急いで返す利点は小さくなります。無利子の奨学金は繰り上げても利息の得はなく、低い金利の住宅ローンも、カードローンに比べて急いで返す利点は小さくなります。金利の高い借金が残っているなら、そちらを先に返し、低金利の借金は約束どおり返しながら手元資金を厚くする方が無理がありません。
Q. 毎月の返済でいっぱいで、貯金に回すお金が残りません。
その場合は貯金と返済の配分ではなく、返済額そのものが家計に合っていない可能性があります。家計の表で毎月の赤字を確かめ、赤字が続くなら返済の条件の相談や公的な窓口を考える段階です。
出典・参考にした公的な情報
- 利息制限法 第1条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業関係資料集(令和7年3月末の平均約定金利)(金融庁)
- 多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会 第23回 資料1(貸金業利用者に関する調査)(内閣官房)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。