家賃滞納の明け渡し訴訟|訴状が届いてから強制執行までの流れ
この記事のもくじ
家賃の滞納で明け渡し訴訟(建物明渡請求)を起こされたとき、訴状が届いてから部屋を出る日までは、いくつもの段階があり、その途中のほとんどで話し合いの余地があります。この記事は、届いた書面の読み方、答弁書の出し方、判決・和解・強制執行の順に、裁判所の案内と法令で確かめられる範囲を示します。何か月と断言できる部分と、事案で変わる部分は分けて書きます。
届いた書類は、まず本物かを確かめる
訴訟を起こされると、裁判所から次の書類が届きます。
- 訴状:誰が、何を求めて訴えたか(建物の明け渡し、滞納家賃、明け渡しまでの賃料相当額の支払いなど)が書かれた書面
- 呼出状:第1回の口頭弁論期日の日時と場所
- 答弁書の用紙・催告書など:答弁書を出す期限が書かれていることがある
裁判所を名乗る偽の書類もあります。書類に書いてある電話番号にかけるのではなく、裁判所の公式サイトで裁判所の電話番号を調べてから問い合わせると、本物かどうか確かめられます。住所に届けても受け取られないときは、勤務先に送られることもあります。
なお、2026年5月21日に改正民事訴訟法が全面施行され、裁判所のオンラインのシステム(mints)で訴えの提起や準備書面の提出ができるようになりました。システムでの送達を受けられるのは、利用の届出をした人です。この日より前に起こされた訴えは、これまでどおり書面で審理されます。答弁書をどう出すかは、呼出状に書かれた方法で確認してください。
訴状が届いてからの流れ
| 段階 | 何が起きるか | 借主の動き |
|---|---|---|
| 訴状の送達 | 訴状と呼出状が届く | 内容と期日を確認、相談先を探す |
| 答弁書の提出 | 原告の請求に対する返事を出す | 期限は呼出状に書かれた日。争う点と払える額を書く |
| 第1回口頭弁論 | 裁判所で主張を確認 | 出席する。出席できないときは書記官に連絡 |
| 続行期日 | 和解の話し合いや主張の整理 | 退去時期・分割払いの案を示す |
| 判決または和解 | 判決が出る、または和解が成立 | 判決なら送達から2週間以内に控訴できる |
| 強制執行の申立て | 判決や和解調書をもとに原告が申し立てる | 退去先を決めておく |
| 執行官の催告 | 引き渡しの期限が告げられる | 期限は催告の日から1か月を経過する日 |
| 断行 | 執行官が占有を解き、荷物を搬出 | 期限までに退去 |
答弁書は、訴状に書かれた原告の請求や主張に返事をする書面です。裁判所の書式ページに、簡易裁判所と地方裁判所のひな形があります。法律に答弁書の提出日数の決まりはなく、裁判所が呼出状などで指定した期限を守ります。
欠席すると、請求どおりの判決が出ることがある
第1回の期日に出席せず、答弁書などで争う意思も示さないと、訴状の記載が陳述されたものとみなされ(民事訴訟法158条)、相手の主張を争わないものとして扱われることがあります(159条)。簡易裁判所では、2回目以降の期日にも同じ扱いがあります(277条)。結果として、原告の請求どおりの判決が出ることがあります。欠席しただけで負けが決まるわけではありませんが、不利になりやすいのは確かです。
期日の出席が難しいときは、期日の前に、担当の書記官へ連絡します。期日を変えられるかは裁判所が判断するので、変更を前提にせず、答弁書で争う点と払える額を先に書いて出しておくと、欠席しても自分の言い分が裁判所に伝わります。裁判所の案内では、裁判所が相当と認めるときはウェブ会議の方法で出頭することもできるので、遠方や仕事の都合があるときは、その方法が使えるかも書記官に聞けます。
文例(書記官への電話):「事件番号○○の被告の○○です。○月○日の期日に、体調不良のため出席できません。答弁書はすでに提出しています。この期日をどう扱えばよいか教えてください。」両方の当事者が期日に出席せず、1か月以内に期日指定の申立てもないと、訴えの取下げとみなされます(263条)。
争える点と、和解で話し合える内容
明け渡し訴訟で、借主の側が検討できる点を整理します。
| 検討する点 | 内容 |
|---|---|
| 滞納額 | 訴状に書かれた額が、実際の未払い額と合っているか。入金済みの分があるか |
| 催告と解除 | 相当の期間を定めた催告があったか、解除の通知は届いているか(民法541条) |
| 不履行の軽重 | 滞納の期間や金額、これまでの支払いから、解除が認められる状況か |
| 払える見込み | 滞納分を払う計画が示せるか |
どの点が争えるかは、契約書や督促の経緯を見ないと分かりません。具体的な見通しは弁護士の仕事で、法テラスや弁護士会の相談を使えます。窓口の電話番号は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方から調べられます。
裁判の途中でも、話し合いで和解ができます。和解の内容を記録した調書は確定判決と同じ効力を持ち(民事訴訟法267条)、強制執行の根拠になります(民事執行法22条7号)。内容としては、次のようなものが話し合われます。
- 滞納家賃を分割で払うことを条件に、部屋に住み続ける
- 退去する日を決め、それまでの間の家賃を払う
- 引っ越しの準備のための猶予期間を設ける
一方、和解で決めた約束が守られないと、それをもとに強制執行を申し立てられます。守れる条件に絞って合意します。
判決・和解のあと、強制執行までの法律上の決まり
判決に不服があれば、判決の送達の日から2週間以内に控訴できます。控訴しないまま期間が過ぎると、判決が確定します。仮執行宣言が付いた判決は、確定を待たずに強制執行できます。
強制執行は、確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書などの債務名義(民事執行法22条)をもとに、原告が申し立てます。建物の明け渡しは、執行官が借主の占有を解いて原告に取得させる方法で行います(168条)。執行官は、まず明け渡しの催告をします。引き渡しの期限は催告の日から1か月を経過する日で、裁判所の許可があればそれ以後に定められます(168条の2)。催告のあと、借主が占有を他人に移してはなりません。
期限を過ぎると、執行官が建物に立ち入り、必要なら閉鎖した戸を開けて、借主を退去させます。建物の中の動産は取り除いて、借主などに引き渡されます。引き渡せない場合は売却されることもあります。
この全体にかかる月数は、裁判所が標準的な期間を公表しておらず、事案ごとに変わるため、数字では示せません。分かる範囲は、上に書いた法律上の期間(控訴2週間、催告の日から1か月)です。
訴えられた後も、できること
- 分割や退去の時期を決める話し合いを、訴訟の中で続ける。 家主側の代理人(弁護士)と連絡がつくことがあります。
- 公的な支援を同時に使う。 収入減が原因なら、自立相談支援機関で家計と住居の相談ができます。家賃滞納の相談先|大家・管理会社への連絡の仕方と公的な支援に手順があります。
- 連帯保証人や保証会社の請求も確認する。 退去しても滞納分は残るため、払い方を決めておきます。
- 退去する場合は、荷物と引っ越し先の段取りを前もって決める。
裁判全般の進め方は、クレジットカードの滞納による訴訟を扱ったクレジットカードの滞納や借金で訴状が届いたら|答弁書と期日の準備も参考になります。家賃の滞納が長引き、逃げ出したいと考える段階にあるなら、家賃滞納で夜逃げを考えたとき|その前に使える相談先と住まいの支援を先に読んでください。全体の位置づけは家賃滞納は何ヶ月で退去になる?月数の決まりはなく、解除と明け渡しの流れで見られます。
よくある質問
Q. 訴状が届いたあと、裁判に行かなかったらどうなりますか?
最初の期日に出席せず、答弁書などで争う意思を示していないと、原告の請求どおりの判決が出ることがあります(裁判所のQ&A)。出られない事情があるときは、期日の前に担当の書記官へ連絡し、答弁書で言い分を出しておきます。期日を変えられるかは裁判所が判断します。
Q. 訴状が届いたら、弁護士に頼んだほうがよいですか?
明け渡し訴訟では、家賃の額、契約解除の有効性、退去の時期など争う点が複数あります。弁護士に任せるかは費用との兼ね合いですが、法テラスや弁護士会の相談で、自分の場合に争える点があるかを聞くことはできます。
Q. 判決が出たらすぐ追い出されますか?
すぐではありません。判決は原則として確定してから強制執行ができ(仮執行宣言が付く場合は別)、そのあとに執行官の催告があり、引き渡しの期限は催告の日から1か月を経過する日です。実際の日程は、申立てを受けた執行官が決めます。
出典・参考にした公的な情報
- 民事事件Q&A(訴訟の流れ・答弁書・控訴・判決の執行)(裁判所)
- 民事訴訟法 第158条・第159条・第263条・第267条・第277条・第285条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事執行法 第22条・第168条・第168条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟のIT化(改正民訴法で変わる手続の概要)(裁判所)
- 民法 第541条・第601条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。