借金の時効援用の書き方|通知書に記載する項目と文例・送り方
借金の時効援用の通知書には、①誰から誰への通知か、②どの借金か(契約の特定)、③最後に返済した日、④時効を援用するという意思の4つを書きます。必要なのはこの4つだけで、事情の説明やお詫びは要りません。送り方は、出した日と内容が残る内容証明郵便に配達証明を付ける方法がよく使われます。ただし、通知書の書き方より前に、その借金に時効が成立しているかが大切です。成立していないのに出すと、かえって不利になることがあります。
先に確かめること:書く前に時効の条件を見る
時効は、期間が過ぎただけでは使えず、「援用」する(時効の利益を受けると相手に伝える)必要があります(民法145条)。援用の方法は条文に決まりがなく、内容証明郵便でなければ無効、というわけではありません。内容証明郵便は、送った日と内容を後から示すために使われる方法です。
債権の時効は、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年です(民法166条1項)。ただし2020年(令和2年)4月1日より前に契約した借金は、改正前の旧法の期間が使われる場合があります(法務省の経過措置の案内)。さらに、次のことがあると、数え直しになったり、期間が延びたりします。
| 出来事 | 時効への影響 |
|---|---|
| 裁判を起こされた、支払督促を受けた | 手続の間は完成せず、確定すると新たに進み、期間は10年(民法147条・169条) |
| 督促状・請求書が届いた(催告) | 6か月だけ完成が延びる。リセットではない(民法150条) |
| 一部を払った、返済を約束した、借金を認める書面に署名した | 「承認」とされ、時効が新たに進む可能性がある(民法152条) |
この判断は事情によって変わります。確かめる項目は借金の時効が成立しているか確かめる項目に、全体の流れは借金の時効援用のやり方にまとめています。この記事は、その上で通知書を自分で作る人向けの書き方です。
通知書に書く項目の早見表
| 項目 | 書くこと | 注意 |
|---|---|---|
| 日付 | 通知書を作成した日 | 発送日と合わせる |
| 宛先 | 債権者の社名・住所・部署(代表者名は不要) | いま請求してきている会社にする |
| 差出人 | 自分の住所・氏名 | 契約時と姓や住所が変わっていたら旧姓・旧住所を添える |
| 件名 | 「消滅時効の援用通知書」など | 内容が一目で分かる題にする |
| 契約の特定 | 契約日(時期)、契約番号・会員番号、借入の種類 | 督促状や取引履歴の記載を写す |
| 最後の返済日 | 最後に返済した日(取引履歴で確認した日) | 日付を推測で書かず、分からないときは先に取引履歴を取り寄せる |
| 援用の意思 | 「消滅時効を援用します」と明記 | 「支払います」「猶予してください」は書かない |
| 求めること | 今後の請求をやめる、記録を整理することを書面で回答してほしい | 求めすぎず、回答を書面で受け取る |
最後の返済日が分からない人は、先に借入先に取引履歴を請求します。貸金業者は取引の帳簿を備える義務があり、借りている人や借りていた人からの閲覧・謄写の請求を原則として断れません(貸金業法19条・19条の2)。請求の手順は自分の借金を調べる方法に書いています。
通知書の文例
次の文例は、項目の並べ方の一例です。【 】の部分を、督促状や取引履歴を見ながら自分の内容に置き換えてください。
消滅時効の援用通知書
令和〇年〇月〇日
【債権者の社名】 【債権者の住所】 【部署名】 御中
【自分の住所】 【自分の氏名】 ㊞
私は、貴社に対し、下記の債務について、消滅時効を援用します。
記
1 契約日 :【平成〇年〇月〇日】 2 契約の種類:【カードローン(キャッシング)/クレジットカード/貸付】 3 契約番号 :【会員番号・契約番号】 4 最後の返済日:【令和〇年〇月〇日】
上記の債務は、消滅時効の期間が経過しており、時効により消滅しています。つきましては、今後の請求を行わないこと、および貴社の記録上の取扱いについて、書面でご回答くださるようお願いします。
以上
文例は、「5年」のような期間の数字を書かない形にしています。時効の数え始めは最後の返済日と決まっているわけではなく、契約日が2020年4月1日より前で旧法の期間が当てはまりうる人や、裁判・支払督促があった人は、数字を書くと事実と合わなくなるためです。最後の返済日は、期間の根拠としてではなく、債務を特定する事実として項目4に書きます。期間と数え方に自信がないときは、この判断を専門家に確かめられます。
書かないほうがよい言い回し
承認と読まれる言葉は避けます。条文に例示はなく、一部の支払い、分割の申入れ、借金を認める書面への署名などが承認に当たると考えられているのは、解釈の話です。そのため、通知書には次のような文を入れません。
- 「ご迷惑をおかけしましたが、少しずつ返したいと思います」
- 「現在は事情があり払えませんが、残高を教えてください」
- 「元金の一部として〇円を同封します」
お詫びや事情の説明は、たとえ丁寧でも、借金を認める文として読まれるおそれがあります。通知書は、4つの項目と援用の意思だけを、短く書きます。
送り方:内容証明郵便に配達証明を付ける
通知書を送る方法は、普通郵便や書留でもかまいませんが、いつ・何を送ったかを残すために、内容証明郵便が使われます。日本郵便の案内(2026年10月23日に確認)では、次のとおりです。
- 同じ内容の文書を用意する:差し出すときは、内容文書1通に加えて謄本2通を出します。謄本は差出人と郵便局が1通ずつ保存します。つまり、相手に送る分と手元に残す分の写しが要ります。謄本には字数と行数の制限(縦書きは1行20字以内・1枚26行以内)があり、2枚以上になるときはつづり目に契印をします。上の文例は長い文が折り返されて26行を超えやすいので、行数を数えて、必要なら2枚目(290円増し)にします。
- 一般書留にする:内容証明郵便を使うときは、一般書留にする必要があります。
- 配達証明を付ける:相手に届いた日を郵便局が証明してくれる配達証明を、オプションとして付けられます。
- 料金を確かめる:内容証明の加算料金は480円で、2枚目以降は1枚につき290円が加わります。配達証明の加算料金は350円です。これに通常の郵便料金と一般書留の料金が加わるので、窓口で総額を確かめます。
- 控えを保管する:謄本の控え、受領証、配達証明のはがきは、後から争いになったときの証拠になるので、まとめて保管します。
手元に残した謄本とは別に、差し出した日から5年以内なら、差出郵便局に保存されている謄本の閲覧を請求できます(閲覧の料金は480円)。窓口に行く時間がない人向けに、インターネットで24時間受け付ける電子内容証明(e内容証明)もあります。
自分で出す前に専門家に相談したほうがよい場合
次のどれかに当てはまるなら、通知書を出す前に、弁護士や司法書士に確かめることを勧めます。
- 裁判を起こされた、支払督促や判決書が届いたことがある、またはあったか覚えていない
- 最後の返済から5年たったか、起算日がいつか、自分では分からない
- 途中で少額を払った、「払います」と電話や書面で伝えた記憶がある
- 請求先が債権回収会社などに変わっていて、元の契約が特定できない
- 1社あたりの金額が大きい(代理を頼める資格者の範囲は、1社あたり140万円が目安になります。債務整理は弁護士と司法書士どっち?140万円の線と選ぶときの確認点)
費用と、頼む場合と自分で出す場合の違いは借金の時効援用を弁護士・司法書士に頼む費用と自分でする違いで比べています。通知書を出したあとに何が起きるかは借金の時効援用をした後はどうなる?信用情報と業者からの連絡に書いています。
よくある質問
Q. 通知書は手書きでも、パソコンで作った文書でもよいですか?
どちらでもかまいません。日本郵便の内容証明の案内は、用紙の大きさや記載に使う道具を問わないとしています。ただし謄本には字数と行数の制限があります(縦書きは1行20字以内・1枚26行以内。横書きは1行20字・26行、1行13字・40行、1行26字・20行のどれか)。
Q. 債権者の住所が分からないときは、どこを調べますか?
督促状や契約書、取引履歴の差出人欄にある住所と社名を使います。債権が別の会社に移っている場合は、いま請求してきている会社が宛先です。貸金業者なら、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで社名と所在地を照らせます。
Q. 通知書を出したあとに、業者から電話が来たらどうしますか?
通知書の内容以上の話はせず、「書面で回答してください」と伝えて、日時と相手の名前を記録します。払う約束や分割の相談に応じると、時効を使えなくなるおそれがあります。迷ったら[借金の時効援用を弁護士・司法書士に頼む費用と自分でする違い](/jiko-enyo-hiyou/)を読んで、専門家への相談を考えてください。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第145条・第150条・第152条・第166条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(施行日・経過措置)(法務省)
- 民法改正「主な改正事項」(消滅時効に関する見直し)(法務省)
- 内容証明(ご利用方法・ご利用料金)(日本郵便)
- 配達証明(ご利用料金)(日本郵便)
- 内容証明(ご利用の条件等:謄本の字数・行数)(日本郵便)
- 取引履歴の開示と帳簿(貸金業法 第19条・第19条の2)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。