借金の時効の更新と完成猶予|一部の支払いや裁判でやり直しになる
借金の時効が「リセット」されるのは、条文上は「更新」と呼ばれる場合で、一番身近なのが借金を認めること(承認)です。民法152条は、時効は、権利の承認があったときは、その時から新たに進行を始めると定めています。少額の支払い、分割払いの約束、借金を認める書面への署名などが、承認にあたると受け止められることがあります。一方、督促状が来ただけ、裁判を起こされただけでは、数え直しではなく「完成猶予」(時効が完成しないで先に延びる)にとどまる場合があります。この記事は、リセットされる場合と延びるだけの場合を表で分け、業者から少額の支払いを求められたときの注意を書きます。
「更新」と「完成猶予」は何が違うのか
2020年4月1日に施行された民法の改正で、旧法の「中断」「停止」という言葉は、「更新」と「完成猶予」に分けて整理されました。借金の時効を調べると、まだ「時効の中断」と書いた古い解説が多く出てきますが、いまの民法で考えるときは次のように読み替えます。
- 更新:それまで進んだ期間がなくなり、新しく数え始める。
- 完成猶予:期間は形の上では進み続けるが、猶予の間は時効が完成しない。猶予が終わったときに期間が満了していれば、その時点で完成する。
たとえば5年の時効で4年が過ぎたあとに更新があれば、そこからまた5年がかかります。同じ場面で催告(督促状など)があった場合は、数え直しにはならず、本来の満了日が来ても、催告から6か月が過ぎるまでは完成しない、というだけです(法務省の資料も、期間が形式的に経過しても時効は完成しないと説明しています)。どちらが起きたかで、時効を使えるかどうかが大きく変わります。基本の期間(5年と10年)は借金の時効は5年?にあります。
時効が変わる事情を一覧にする
借金の場面でよく出てくる事情を、条文と効果に分けます。
| 事情 | 条文 | 効果 | 借金の場面の例 |
|---|---|---|---|
| 借金を認める(承認) | 152条 | 更新 | 一部の支払い、分割の約束、借金を認める書面への署名 |
| 裁判を起こされ、判決などで権利が確定 | 147条2項 | 更新 | 判決が確定した後は、新しく数え始め、期間は10年(169条) |
| 裁判・支払督促・調停の手続き中 | 147条1項 | 完成猶予 | 手続きが終わるまで完成しない(権利が確定せずに終わったときは、終了から6か月) |
| 強制執行・財産開示などの手続き | 148条 | 完成猶予、終了で更新(取下げ等で終わった場合は更新なし) | 預金口座や給料の差押え |
| 仮差押え・仮処分 | 149条 | 完成猶予(終了から6か月) | 裁判の前に財産を押さえられた |
| 催告 | 150条 | 完成猶予(6か月) | 督促状・内容証明の請求書。再度の催告で延びない |
| 協議を行う旨の書面での合意 | 151条 | 完成猶予(原則1年) | 双方が書面で話し合うことに合意した |
表の中で、借金を返す側が自分で起こしてしまいやすいのは、承認だけです。裁判・執行・催告は債権者の側の行動で、返す側は書類が届いてから気づくことが多いです。
少額の支払いを求められたとき:承認になる場合
業者や債権回収会社から、時効が近い(または過ぎたと思える)時期に、次のような連絡が来ることがあります。「全額でなくていい、1,000円だけでも入れてほしい」「誠意を見せてほしい」「分割なら話を聞く」といった内容です。ここで応じると、承認として時効が新しく数え始められてしまう場合があります。
承認にあたりうる行為を挙げます。
- 一部でも支払う(口座振込・コンビニ払い・窓口払い)
- 「毎月○円ずつ払います」と、電話や書面で約束する
- 「借金があることは認めます」と、電話で言う、書面に署名する
- 「今は払えないので待ってください」と、支払いの猶予を頼む
4番は条文の例示にあるわけではなく、裁判例や解説で承認にあたると説明されることのある行為です。承認になるかどうかは、言葉の使い方や状況で判断されるため、「これは大丈夫」と自分で決められません。さらに、時効の期間が過ぎたあとに払ったり借金を認めたりした場合も、あとから時効を主張できなくなる場合があるとされています。いずれも可能性の話ですが、時効の見込みがあるなら、業者に連絡する前に専門家へ相談するほうが損をしません。
電話で何か聞かれたときは、借金を認める言い方を避けます。次の例のように、書面での連絡を頼むだけにとどめられます。
文例:「その件は、いま確認できる状況にありません。お話は書面でいただけますか。こちらからの連絡は控えさせてください。」
書面で来た請求や通知にも、すぐに返事をしません。内容証明郵便で請求が来たときの読み方は借金の内容証明郵便が届いたらにまとめています。
時効が更新されたかを確かめる
時効が数え直しになっているかどうかは、次の順で確かめます。
- 自分の行動を書き出す:最後に払った日、分割の約束をした日、借金を認める書面に署名した日。通帳や振込の控えが手がかりです。
- 裁判の書類を探す:支払督促、訴状、判決。確定していれば更新され、期間は10年になります。確かめ方は判決が出た借金の時効は10年です。
- 差押えの経験を思い出す:預金や給料が差し押さえられたことがあれば、その終了が更新の原因です。
- 契約の時期を見る:2020年3月31日以前の出来事は、旧法の「中断」で考えます。旧法との違いは民法改正で借金の時効はどう変わった?にあります。
これらをまとめて確かめられる表は借金の時効が成立しているか確かめる項目に置いています。支払督促が届いたときの時効の扱いは支払督促で時効はどうなる?で説明しています。
一人で判断せず、相談先を使う
承認や更新の判断は、出来事の日付と言葉づかいで変わります。読者の個別の事情を、この記事が当てはめて結論を出すことはできません。相談先は、公的な窓口なら借金の公的な相談窓口と受付時間、専門家なら弁護士か認定司法書士です。資格ごとの違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?にあります。昔の借金で過払い金と時効の両方を確かめたいときは、過払い金請求と借金の時効の分かれ道の表から入れます。
よくある質問
Q. 1円でも払うと、時効は最初からになりますか?
条文に「少額の支払い」という例示はありませんが、一部の支払いは借金を認めたもの(承認)にあたると受け止められることがあり、その場合は時効が新しく数え始められます。時効の可能性がある借金は、払う前に専門家に見せます。
Q. 昔の「中断」と、いまの「更新」は同じですか?
2020年4月1日の民法改正で、「中断」は「更新」と「完成猶予」に整理し直されました。それ以前に起きた出来事は、旧法の言葉と効果で考えるため、契約の時期の確認が先です。
Q. 督促状が来るたびに、時効は延びていきますか?
延びません。督促状や請求書は催告として6か月だけ完成を先送りしますが、その猶予の間にもう一度催告しても、さらに延びる効果はありません。
出典・参考にした公的な情報
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。