民法改正で借金の時効はどう変わった?2020年4月前後の違い
借金の時効が民法改正で変わったと聞いて、自分の借金が旧法と新法のどちらになるか知りたい、という疑問への答えは、「契約を結んだ日」が先に決めます。債権法改正は、一部を除いて令和2年(2020年)4月1日に施行されました。時効の期間は、施行日前に生じた債権(施行日以後に生じても、原因の契約が施行日前のもの)なら、改正前の民法で考えます(附則10条4項)。この記事は、改正で何が変わったかを表にし、経過措置の線の引き方と、自分の借金がどちら側かを確かめる手順を示します。時効が成立しているかどうかの結論は、個別の事情が必要なのでここでは出しません。
2020年4月1日の改正で変わったこと
法務省の改正資料は、消滅時効の見直しを大きく3つにまとめています。職業別の短期の時効の廃止と時効期間の統一、人の生命・身体を侵害する損害賠償の期間の長期化、時効を止める手段(中断・停止)の見直しです。借金の読者に関わる部分を、旧法と新法で並べます。
| 項目 | 旧法 | 新法 |
|---|---|---|
| 基本の期間 | 権利を行使できる時から10年(個人間の貸金など) | 知った時から5年、行使できる時から10年(166条1項) |
| 商行為による債権 | 5年(商事の時効) | 商事の時効は廃止。基本の期間に統一 |
| 職業別の短期時効 | 1〜3年の区分あり | 廃止 |
| 時効を変える事情の呼び名 | 中断・停止 | 更新・完成猶予 |
| 協議を行う旨の書面での合意 | なし | 完成猶予の事情に追加(151条) |
旧法の期間の整理は、法務省の資料の表にある範囲で書いています。会社が貸し付けた借金(貸金業者の貸付けなど)は、旧法では商行為による債権として5年、個人間の貸し借りは10年が目安でした。新法では貸金業者の請求も5年が目安になり、期間の数字だけを見れば、貸金業者からの借金は改正の前後で大きく変わりません。変わったのは、起算点の書き方が2本立てになった点と、時効を止める事情の整理です。個人間の貸し借りは、旧法の10年が新法では「知った時から5年」を併せ持つ形になり、返済期日が決まっていれば5年が先に来ることが多くなります。
旧法と新法のどちらを使うか:契約日で決まる
改正法の附則10条は、経過措置を次のように定めています。基準になるのは、債権が生じた時期と、原因になった契約の日です。
| 場面 | 適用される法 | 条文 |
|---|---|---|
| 施行日前に債権が生じた(原因の契約が施行日前のものを含む)場合の、時効の期間 | 旧法 | 附則10条4項 |
| 施行日前に債権が生じた場合の、時効の援用 | 旧法 | 附則10条1項 |
| 施行日前に、旧法の中断・停止の事情が起きた場合の、その効力 | 旧法 | 附則10条2項 |
| 協議を行う旨の書面での合意(151条) | 施行日前の合意には使わない | 附則10条3項 |
つまり、2020年3月31日以前に結んだカードローンやキャッシングの契約は、借り足しや返済が4月以降に続いていても、旧法の期間が使われる場合があります。反対に、2020年4月1日以後に初めて契約した借金は、新法で考えます。基本契約のもとで枠内の借入れを繰り返すカードローンやリボ払いが、枠の契約日で一括して判断されるのか、借入れごとに判断されるのかは、個別の事情で変わります。この点は読者の事情に当てはめて断定できないため、契約日と借入れの履歴を持って専門家に見てもらう形になります。
場面ごとの見方を、条文の範囲で並べます。表の「新法」「旧法」は、時効の期間についての見方です。
| 場面 | 時効の期間の見方 |
|---|---|
| 2020年4月1日以後に初めて契約し、借りた | 新法(166条1項) |
| 2019年に契約して借り、2020年3月までに完済。2021年に別の契約で新たに借りた | 前の借金は旧法、2021年の借金は新法 |
| 2019年に契約したカードで、2021年に枠内で借り足した | 旧法になる場合がある(原因の契約が施行日前)。枠の契約と借入れごとの扱いは個別に確かめる |
| 2020年2月に訴えを起こされた | その効力(旧法の中断)は旧法で見る(附則10条2項)。時効の期間は別に契約日で決まる |
旧法の言葉で数えるときの注意
旧法の時代に起きた出来事は、旧法の言葉で読みます。
- 2020年3月31日以前に、裁判を起こされたり、借金を認めたりした場合の効力は、旧法の「中断」で考える。
- 旧法の「停止」は、新法の「完成猶予」にあたる場面が多いが、条件や期間が同じとは限らない。
- 新法で新しく設けられた151条(協議の合意による完成猶予)は、旧法の時代の合意には使えない。
古い解説に「時効の中断」と書かれていても、2020年4月1日以後の出来事には当てはまりません。反対に、新しい解説の「更新」「完成猶予」の表を、2020年3月以前の出来事にそのまま当てはめることもできません。新法の更新・完成猶予の中身は借金の時効の更新と完成猶予で表にしています。
過払い金の請求権についても、法務省の資料は、旧法では判例上10年とされていた例を挙げています。過払い金の時効の数え方は過払い金の時効はいつまで?で別に扱います。個人間の貸し借りで旧法と新法の期間がどう違うかは個人間の借金の時効にあります。
自分の借金が旧法か新法かを確かめる
次の順で、材料を集めます。
- 契約日を確かめる:契約書、カードの申込書、会員サイトの契約情報。見つからないときは、信用情報の開示や業者の取引履歴から、契約日の目安がつかめることがあります。開示の方法は信用情報の開示のやり方に書いています。
- 契約日が2020年3月31日以前か以後かを区別する:以前なら旧法の期間が関わる場合があると考えます。
- 旧法の時代に起きた出来事を書き出す:裁判の書類、借金を認めた書面、差押え。
- 最後の返済日を書き出す:新法でも旧法でも、時効の判断では最後の返済日が重要な手がかりです。
この4項目を、1社ずつ確かめられる形にしたのが借金の時効が成立しているか確かめる項目です。基本の期間と援用のルールは正本の借金の時効は5年?にあり、援用に進むときの流れは借金の時効援用のやり方です。
契約が旧法か新法か、どちらの期間が当てはまるかは、書類の内容を見て専門家が判断します。公的な窓口は借金の公的な相談窓口と受付時間に、専門家の違いは債務整理は弁護士と司法書士どっち?にまとめています。
旧法と新法の判断を含めて専門家に任せたいときは、弁護士・司法書士の事務所に依頼する方法もあります。選ぶときは、登録や代理できる範囲、面談の有無、費用の総額が書面で示されるか、対応地域を確かめます。
よくある質問
Q. 2020年4月以降にお金を借りたら、すべて新しい民法の時効になりますか?
契約日が2020年4月1日以後なら、時効の期間は新しい民法で考えます。契約日が3月31日以前なら、借り足した日が4月以後でも、原因となった契約が施行日前なら旧法の期間になる場合があります。カードやリボの基本契約は、個別に確かめます。
Q. 改正で、借金の時効は短くなったのですか?
一律に短くなったとは言えません。貸金業者からの借入れは、改正前も後も5年が目安で大きくは変わりません。変わったのは、期間の考え方(知った時から5年)と、時効が止まる事情の整理です。
Q. 改正前の「時効の中断」は、いまでも使えますか?
2020年3月31日以前に起きた出来事の効力は、旧法の中断・停止で考えます。4月1日以後の出来事は、更新と完成猶予で考えます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(法務省)
- 民法(債権法)改正の主な改正事項(消滅時効の見直し)(法務省)
- 民法 第147条〜第152条・第166条・附則第10条(平成29年法律第44号)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。