家賃の滞納にも時効はある?期間と大家・保証会社からの請求
家賃の滞納にも時効はあります。民法166条1項では、債権は、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年で時効によって消滅します。毎月払いの家賃は、月ごとに支払いの期日が来るので、古い月の分から順に時効が完成していくのが基本の考え方です。ただし、期間が過ぎただけでは使えず、時効を援用する必要があります。裁判や支払督促、一部の支払いがあれば期間が延びたり数え直しになったりします。請求の書面で、誰の・いつの分の請求かを確かめるところから始めます。
家賃の時効は何年か:民法166条と2020年の改正
2020年(令和2年)4月1日以後に生じた債権には、民法166条1項が適用されます。債権者が権利を行使できると知った時から5年(1号)、権利を行使できる時から10年(2号)です。家賃は支払いの期日が決まっているため、大家は期日に請求できると知っているのが通常で、期日から5年が目安になります。
2020年3月31日以前に契約した賃貸借は、旧法の期間が使われる場合があります(改正法の附則)。旧法では、年またはそれより短い時期で定めた金銭の給付を目的とする債権(月払いの家賃など)は5年とされていました(旧169条)。つまり、新法でも旧法でも5年が目安ですが、契約の時期によって根拠が違います。数え始めと期間は、契約書の日付で確かめます。
| 出来事 | 時効への影響 | 条文 |
|---|---|---|
| 督促状・催告書が届いた | 6か月だけ完成が延びる。リセットではない | 民法150条 |
| 裁判(訴訟)や支払督促があった | 手続の間は完成しない。確定すると期間は10年になる | 民法147条・169条 |
| 一部を払った、分割を約束した、滞納を認める書面に署名した | 承認とされ、時効が新たに進む可能性がある | 民法152条 |
| 借りた本人(主たる債務者)に裁判や承認があった | 完成猶予・更新の効力が連帯保証人など保証人にも及ぶ | 民法457条1項 |
大家や管理会社が、家賃を請求できる期間は、滞納した月ごとに別々に数えるのが基本です。たとえば、3年前と1年前に滞納した家賃では、先に期日が来た分から期間が過ぎていきます。ただし、請求側が分割払いの約束を取り付けていたり、一部の入金があったりすれば、その時点で時効が新たに進み始めます。どの月の分が、いつから数えられるかは、入金の履歴を見ないと決まりません。
保証会社が立て替えた後の請求の時効
賃貸借の保証会社を使っている場合、滞納した家賃は、保証会社が大家に立て替えて払う(代位弁済)ことがあります。その後は、保証会社が、借りた本人に、立て替えた分の返還を請求する形に変わります。この場合の請求元は、大家ではなく保証会社です。
請求元が変わっても、時効の考え方の土台は同じ民法166条です。保証会社が権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年が基本で、いつから数えるかは、立て替えた日や契約の約定によって変わりえます。2020年3月31日以前の契約には旧法が当てはまる場合があり、会社が営業として行う取引から生じた債権には、旧法の商事の時効(5年)が当てはまることがあります。保証会社の請求の中身は家賃滞納で保証会社から督促が来たらで説明しています。この記事では、時効の数え方の考え方までを書きます。
請求書の書面で、次を見ます。
- 請求元の名前と、請求の根拠:大家の家賃請求か、保証会社の立替金の請求か、債権回収会社の請求か。
- 請求の対象になっている期間:何月分から何月分までか。複数月分が1つにまとめられていないか。
- 保証会社が払った日:代位弁済の日が書かれているか。書かれていなければ、保証会社に履歴を求める。
- 古い請求の裏にある裁判の有無:支払督促や判決書が過去に届いていないか。
夜逃げや引っ越しをした場合の注意
家賃を滞納したまま、行き先を告げずに引っ越した(いわゆる夜逃げ)場合も、時効は止まらず、進んでいきます。ただし、次の点に注意します。
- 裁判が進んでいるかもしれない:相手の住所が分からないとき、裁判所に申し立てると、送達を裁判所が定める方法で行う「公示送達」があります。効力は2週間で生じます(民事訴訟法110条・112条)。この場合、本人が知らないうちに判決が出ていて、判決が確定すると、時効の期間は10年になります(民法169条)。
- 支払督促が旧住所に届いている:督促への異議は、受け取ってから2週間以内に出さないと、仮執行宣言が付く場合があります。旧住所に届いて受け取っていない書類があれば、請求元に確かめます。
- 住民票を残している場合:書類が住民票の住所に送られ、転送されないままになっていることがあります。
古い家賃の請求が突然来たときは、「時効だから払わない」と決める前に、裁判の有無を書面で尋ねること、書面での説明を求めることが、最初の対応です。
請求の書面で確かめることと、請求が来たらすること
請求を受けたら、次の順に進めます。
- 払う約束をしない:電話口で、一部の入金や分割の約束をすると、承認として時効が数え直しになる可能性があります。「書面で請求の内訳を送ってください」と伝えます。
- 請求の内訳を書面で受け取る:滞納月、家賃額、遅延損害金、立替日、請求元の名前を確認します。
- 契約日と最後の入金日を調べる:賃貸借契約書、通帳、家賃の振込記録で、最後に払った月を見ます。
- 裁判や支払督促の有無を、書面で確かめる:電話はしません。裁判所名と事件番号の有無だけを書面で尋ねるか、先に簡易裁判所に問い合わせるか、弁護士・認定司法書士に調べてもらいます。確定していれば時効は10年です。
- 時効が成立しうる場合は、通知書で援用する:書き方は借金の時効援用の書き方、手順は借金の時効援用のやり方にまとめています。
時効の考え方の全体は借金の時効は5年?援用の仕組みと時効が止まる・やり直しになる場合にあります。現在の賃貸借が続いていて滞納が重なっているときは、退去や明け渡しの話が別にあるので、家賃滞納は何ヶ月で退去になる?信頼関係と明け渡しの流れで確かめてください。
敷金の精算や原状回復の費用は、家賃とは別の債権で、時効の起算の考え方も同じとは限りません。請求の中にこれらが含まれるときは、項目ごとに内訳を求め、判断は弁護士・司法書士に確かめます。窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方で案内しています。
よくある質問
Q. 家賃を滞納したまま引っ越して何年かたちました。もう時効ですか?
引っ越しただけでは時効は決まりません。家賃は、権利を行使できると知った時から5年が基本ですが、引っ越し先が分からない間に裁判が進み、判決で10年になっていることもあります(民法169条)。最後に払った日、契約の時期、裁判の有無を、請求の書面で確かめます。
Q. 保証人(連帯保証人)にも時効は関係しますか?
保証人も時効を援用できます(民法145条)。借りた本人(主たる債務者)に裁判や承認があって時効が延びたり更新されたりすると、その効力は保証人にも及びます(民法457条1項)。保証人に請求が来たときも、本人の借金と同じ項目を確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第145条・第147条・第150条・第152条・第166条・第169条・第457条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(施行日・経過措置)(法務省)
- 民法の一部を改正する法律 新旧対照条文(改正前の第169条)(法務省)
- 民事訴訟手続のデジタル化(改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則の概要)(裁判所)
- 民事訴訟法 第110条・第112条(公示送達)・第382条〜第396条(支払督促)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 支払督促を受けた場合はどうしたらいいですか?(民事事件Q&A)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。