家族間の借金の注意点|借用書の書き方と贈与税にならない返し方
家族からお金を借りたとき、返済を続けていても借用書や記録がなければ、後で「借りたのか、もらったのか」が分からなくなります。家族間の貸し借りが贈与とみなされるかどうかは、国税庁が「真に金銭の貸借であると認められるか」で見るとしています。借用書の項目を決め、返済を振込で残し、実際に返し続けることが基本です。この記事では、書き方の見本から返済の記録、贈与と見られやすいパターンまでを順に説明します。
借用書に書く項目の見本
家族だからと口約束にしない理由は、金額・期日・返し方が曖昧だと、トラブルや税の判断のどちらでも不利になるためです。借用書は次の項目をそろえます。
| 項目 | 書き方の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 日付 | 借りた日(お金を受け取った日) | 利息は受け取った日から数える(民法589条2項) |
| 貸主・借主 | 住所・氏名・署名(押印) | 誰と誰の約束かを残す |
| 金額 | 「金300,000円」のように数字の前後に「金」「円」を付け、元本の総額を1つ書く | 後から数字を足されにくくする |
| 渡し方 | 銀行振込、振込日 | 通帳に記録が残る |
| 返済期日・方法 | 毎月25日に3万円ずつ、振込 | 確定した期日が来た時から、払わなければ遅れた扱いになる(412条1項) |
| 利息 | なし、または年○% | 特約がなければ請求できない(589条1項) |
| 遅れたとき | 遅れたら残りをまとめて返す、など | 話し合いの目安になる |
見本を文章にすると、次のようになります。
借用書 私は、○○(貸主)から、令和○年○月○日に金○○円を借り受けました。返済は、令和○年○月から毎月25日限り金○円を、貸主の指定する口座へ振込で行い、完済は令和○年○月とします。利息は付けません。返済が2か月続けて遅れたときは、残額を一括で返します。 令和○年○月○日 借主 住所・氏名(署名・押印) 貸主 住所・氏名(署名・押印)
作るときの注意点は3つあります。
- 返済期日を決める。 期日を決めずに貸すと、貸主は相当の期間を定めて返済を求める形になります(民法591条1項)。借主は、いつでも返すことができます(同条2項)。
- 利息を付けるなら上限を守る。 利息制限法は、元本が10万円未満なら年20%、10万円以上100万円未満なら年18%、100万円以上なら年15%を超える部分を無効とします(1条)。
- 紙で作る場合は印紙税を確認する。 金銭借用証書は印紙税の課税対象の文書です。借入金額が1万円未満なら非課税、1万円以上10万円以下なら200円、10万円を超え50万円以下なら400円です。それより大きい金額の区分は国税庁のNo.7140で確かめます。
贈与とみなされないための国税庁の考え方
親子など特別の関係にある人どうしの貸し借りでも、国税庁は、返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借と認められる場合には、借入金そのものは贈与にならないとしています(No.4420)。一方、次のような借り方は贈与として扱われるとしています。
- 実質は贈与なのに、形式だけ貸借にしているもの
- 「ある時払いの催促なし」や「出世払い」のような貸借(借入金そのものが贈与として扱われる)
- 無利子などの場合は、利子相当額の利益を受けたとして贈与として扱われる場合がある
| 項目 | 見られにくい形 | 見られやすい形 |
|---|---|---|
| 書面 | 金額・返済期日・方法を書いた借用書がある | 書面がない、期日が空欄 |
| 返済 | 決めた日に決めた額が振り込まれている | 催促がなく、返済の事実がない |
| 条件 | 「ある時に返す」ではなく、期日がある | 出世払い、ある時払い |
| 返済能力 | 収入から返せる額である | 収入からみて返せるはずがない額 |
借用書があっても、実際に返していなければ貸借と認められるとは限りません。国税庁のページには、何%の利率なら問題ないという目安は示されていないので、利率の数字を自分で決めてよいと考えず、判断が必要なときは税務署や税理士に聞きます。
贈与税の基礎控除は、1年間(1月1日から12月31日)にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税がかからず申告も不要です(No.4402)。ただし、貸借として認められる借入金そのものは、そもそも贈与の対象ではありません。夫婦や親子などの扶養義務者から、生活費や教育費に充てるために受け取るお金で通常必要と認められるものは、贈与税がかかりません。なお、必要な都度直接これらに充てるものに限られ、預金や投資に回すと対象外です(No.4405)。親が子の借金の返済を引き受ける場合は別の整理が必要で、これは借金を親が肩代わりする前に|贈与税と繰り返しを防ぐ条件で扱っています。
返済の記録の残し方
返済は、現金の手渡しにしないのが基本です。
- 銀行振込にする。 通帳に日付と金額が残ります。振込名義が借主本人であることも確認します。
- 返済表を作る。 返済日、金額、残高を1枚の表にします。借主と貸主が、数か月に1度、残高を一緒に確かめます。
- 受け取った側は受領を書面に残す。 現金で受け取った場合は、日付・金額・「○○の返済として受け取りました」と書いたメモに署名します。書き方は個人間の借金返済の領収書の書き方|残す項目とテンプレートに項目があります。
- 返すたびに、残高を確認し合う。 借主が一部を返すことは、借金を認める「承認」にあたる可能性があり、承認があると時効は、その時から新たに進み始めます(民法152条)。貸主の請求権は、権利を行使できると知った時から5年などで時効にかかります(166条1項)。返済が続いている間は問題になりにくく、返済が止まったときに効いてきます。
返済が止まったまま長く放置すると、貸主の請求権が時効で消える場合があります(166条1項)。貸主は催促をしないままにせず、期日と残高を年に1度は書面で確認します。
貸主が亡くなった場合、返済されていない分は貸主の相続財産に含まれ、相続人が受け取る側になります(民法896条)。借主は、相続人から借用書と返済表を求められても示せるように、控えを保管します。
返ってこないとき:貸した側の催促と時効
返済が止まったとき、貸した側が黙っていると、話し合いの機会も記録も失われます。次の順で動きます。
- 残高と最後に返ってきた日を確かめる:返済表と通帳の振込記録から、元本の残りを出します。
- 責めずに、書面で期日を決め直す:口頭だけにせず、メッセージや書面で残します。
- それでも返事がないときは、日付と内容を残せる形で催告する:催告があると、その時から6か月を過ぎるまで時効は完成しません(民法150条1項)。ただし、6か月の間に裁判上の請求などをしなければ、時効が止まり続けるわけではありません。
文例(催促):「令和○年○月に貸した30万円のうち、現在の残りは18万円です。先月から返済が止まっているので、○月○日までに、今後の返済の日と額を知らせてください。事情があれば先に聞かせてください」
貸した金銭の返還を求める権利は、権利を行使できると知った時から5年(166条1項1号)、権利を行使できる時から10年(同項2号)で時効にかかります。借用書に返済期日があるなら、その期日の翌日から数えます。返済が一部でも続いている間は、借主の承認として時効は新しく進み始めます(152条)。相手が返せる収入がなく、生活を崩してまで取り立てる状況でないときは、取り立てを続けるより、返済額を下げて続けられる形にする方法もあります。貸した相手の借金が他にもあり、債務整理を考えているときは、次の節の注意が関わります。
債務整理の前に、家族へ先に返してよいか
返せない状態の人が、家族だけに先に返す場合は注意が要ります。破産手続では、支払不能になった後などに特定の債権者だけに返済した行為が、破産財団のために取り消される(否認される)場合があります(破産法162条1項)。債権者が破産者の親族であるときは、返済の当時に支払不能などを知っていたものと推定される規定もあります(162条2項1号、161条2項3号)。
したがって、他にも借金があって債務整理を考えている場合は、家族への返済を続けるか止めるか、自分で決めずに先に弁護士や司法書士に聞きます。手続きの種類の違いは債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いで比べられます。
貸す側の確認も重要です。貸す額は、返ってこなくても生活が崩れない範囲にします。同じ家族に何度も貸している場合は、借金の繰り返しが起きている合図かもしれません。家族が借金を繰り返すとき|肩代わりをやめて相談につなぐ方法を先に読み、原因を探します。成人した子供への貸し借りは、子供の借金の相談|親が払う前に本人と一緒に確かめることも参考になります。
頼まれて貸したくないときの断り方は家族に借金させない断り方|お金を頼まれたときの文例と貸す前の確認にあります。
よくある質問
Q. 家族間の貸し借りに、利息は付けないといけませんか?
利息は貸主と借主の特約があるときだけ請求できます(民法589条1項)。付けるなら借用書に年利を書き、利息制限法の上限(元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)を超えないようにします。無利息でもよいですが、国税庁は無利子などの場合に利子相当額が贈与として扱われる場合があるとしています。
Q. 借用書がなければ、家族から借りたお金は返さなくてよいですか?
そうとは限りません。消費貸借は、返す約束で金銭を受け取ることで成立し、書面は成立の要件ではありません(民法587条)。借用書がないと、借りたかどうかや金額を後で証明しにくくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第150条・第152条・第166条・第412条・第587条・第589条・第591条・第896条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.4420 親から金銭を借りた場合(国税庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.4402 贈与税がかかる場合(国税庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.4405 贈与税がかからない場合(国税庁)
- 国税庁 タックスアンサー No.7140 印紙税額の一覧表(その1)(国税庁)
- 利息制限法 第1条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第161条・第162条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。