家族の借金と保証人・相続 / Q&A

借金を親が肩代わりする前に|贈与税と繰り返しを防ぐ条件

この記事のもくじ
  1. 肩代わりが贈与になる場合・ならない場合
  2. 肩代わりしても借金を繰り返す危険
  3. 肩代わりより、相談を先にしたほうがよい場合
  4. 肩代わりすると決めたときの手順

親が子供の借金を返すと、その額が子供への贈与とみなされて贈与税の対象になることがあります(相続税法8条)。ただし、子供が資力を失って返せない状態で、扶養義務者の親が返した場合は、返せない部分が除かれます。当てはまるかどうかは税務署か税理士の判断になります。税とは別に、肩代わりしても原因が残ると借金は繰り返されやすく、肩代わりより先に相談窓口へ行ったほうがよい場合もあります。この記事では、税の考え方、繰り返しを防ぐ条件、相談を優先する場合の順に書きます。

肩代わりが贈与になる場合・ならない場合

条文の骨組みは次のとおりです(相続税法8条)。

  • 対価を払わずに、債務の免除・引受け・第三者のためにする債務の弁済による利益を受けたとき、その債務の額に相当する金額を、贈与により取得したものとみなす。
  • ただし、債務者が資力を喪失して弁済が困難な場合に、その債務者の扶養義務者が債務の引受け・弁済をしたときは、弁済が困難である部分の金額は、みなさない。

親は子の扶養義務者です。ですから、子供が収入や財産がなく返せない状態であれば、親が返したうち「返せない部分」は贈与とみなされません。反対に、子供に返す力があるのに親が返した場合や、返せる部分を超えて親が返した場合は、その部分が贈与として扱われるおそれがあります。「親の肩代わりに贈与税はかからない」「いつもかかる」のどちらでもなく、条件で変わります。

贈与税の仕組みは国税庁の案内(No.4402)にあります。暦年課税の贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除110万円を引いた残りにかかり、合計が110万円以下なら申告は不要です。110万円を超える場合は、もらった年の翌年2月1日から3月15日までに申告と納税をします。

次は、筆者の計算による例です(他に贈与はなく、相続税法8条の例外が当てはまらないと仮定)。国税庁の速算表(No.4408)では、基礎控除後の課税価格が200万円以下の税率は10%です。

親が返した額 基礎控除後の額 贈与税額(筆者の計算)
100万円 0円(110万円以下) 0円(申告も不要)
300万円 190万円 約19万円(190万円×10%)

例外が当てはまる場合は、この税額が下がります。同じ300万円でも、子供が返せない状態にあって、弁済が困難な部分に当たれば、その部分は贈与とみなされません。どの部分が「困難」とされるかは収入・財産・ほかの借金によるため、自分で決めずに税務署の相談窓口か税理士に聞きます。

親の肩代わりと贈与税の考え方(相続税法8条)
  1. 親が子の借金を業者に払う → 子は「債務の弁済による利益」を受ける
  2. 原則 → その額が贈与とみなされる。年間110万円以下なら申告は不要
  3. 例外 → 子が資力を喪失して弁済が困難、かつ親が扶養義務者 → 困難な部分はみなされない
  4. 適用の判断 → 税務署・税理士に確かめる

親が「貸す」形にして贈与と見られない条件(国税庁 No.4420)と、借用書の書き方、返済記録の残し方は家族間の借金の注意点|借用書の書き方と贈与税にならない返し方で説明しています。

肩代わりしても借金を繰り返す危険

税の問題より大きいのは、繰り返しです。肩代わりで返済は終わっても、借金の原因が残っていれば、また借りてしまいます。

  • 収入が足りないのが原因:生活費の不足は家計の見直しと収入の確保が先です。
  • 買い物・後払いが原因:使い方を変えないと、同じことが起きます。
  • ギャンブルなど依存が原因:金融庁のリーフレットは、ギャンブル等依存症は意思の強弱に関係なくなりうる精神疾患の1つで、家族が肩代わりをすると適切な治療や診断に結びつかず、新たな借金を作ったり回復を妨げたりすることがあると注意しています。

もう一つの危険は、肩代わりした側が苦しくなることです。財務局に寄せられた多重債務の相談は2024年に6,552件で、借金のきっかけ(複数回答)には「他人の債務保証・借金の肩代わり」が274件ありました(金融庁アンケート調査)。相談件数6,552件に対する274件で、複数回答のため単純な割合ではありません。親子に限った数字ではありませんが、他人の保証や肩代わりをきっかけに借金を抱える人が実際にいることが分かります。

肩代わりを考えるなら、次の条件がそろっているかを先に確かめます。

  1. 借入先・残高の全体が一覧になっている(一部だけ返しても残りで追い詰められる)
  2. 借りた原因が分かっていて、手が打たれている(家計の改善、依存の相談)
  3. 親が出す額に上限がある(老後資金・医療費を崩さない範囲)
  4. 返済の条件を紙に書いてある(金額・期限・方法)
  5. 返済の記録が残る形になっている(振込など)
  6. 次に同じことがあっても、肩代わりしないと決めてある

肩代わりより、相談を先にしたほうがよい場合

次のどれかに当てはまるなら、お金を出す前に相談窓口へ行きます。

状況 先にすること
ギャンブル・買い物などをやめられない様子がある 依存の相談先と貸付自粛制度。家族が借金を繰り返すときを読む
借入先が多く、総額が親の貯金で払える額を超える 公的な窓口で債務整理を含む選択肢を聞く。窓口は借金の相談窓口の番号と受付時間にある
督促・裁判所の書類が届いている 書類を持って窓口へ。期限があるものが多い
親が保証人になっている 保証人の立場と請求の範囲を確かめる。連帯保証人とは?を読む
子供が成人しているが本人が事情を話さない 本人と一緒に確かめる。子供の借金の相談を読む

債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産・特定調停があり、親が全額を返す以外の道もあります。どれを選ぶかは、窓口や弁護士・司法書士の面談で、収入や財産を見て決めます。選択肢を聞かずに親のお金で完済してしまうと、あとで比べることができません。

肩代わりすると決めたときの手順

相談したうえで、それでも親が返すと決めたときは、次の順に進めます。

  1. 業者から取引履歴と、いまの残高・払込先を取り寄せる。メールや電話で至急の振込を求める連絡は、本物の業者かを確かめてから対応する。
  2. 親が業者に直接払うのか、子供に渡して子供が払うのかを決める。直接払うほうが、使い道がはっきりする。
  3. 完済したら、完済証明書と契約の解約を確認する。
  4. 払った額、日付、払込先を記録し、本人に返済の約束を書面で残す。
  5. 贈与税の対象になるか、税務署の相談窓口か税理士に確かめる。その年の贈与の合計が110万円を超えるなら、翌年2月1日から3月15日までの申告期間に気をつける。

親に打ち明ける側の準備は借金を親に相談するときの伝え方に、家族に知られたあとの話し合いは自分の借金が家族にバレたときにまとめています。

お金を頼まれて貸すかどうか迷うときは家族に借金させない断り方|お金を頼まれたときの文例と貸す前の確認も読んでください。

よくある質問

Q. 親が子供の借金を業者に直接払うと、贈与税がかかりますか?

対価なしで第三者のために債務を弁済してもらった利益は、原則として贈与により取得したものとみなされます(相続税法8条)。ただし、子供が資力を喪失して弁済が困難なときに、扶養義務者である親が弁済した場合は、弁済が困難な部分の金額は除かれます。当てはまるかは税務署か税理士に確かめてください。

Q. 子供が親から借りた形にして、借用書を作れば贈与になりませんか?

国税庁は、親子間の金銭の貸借でも、返済能力や返済状況から真に貸借と認められれば借入金そのものは贈与にならないとしています。反対に、ある時払いの催促なしや出世払いのような貸借は、借入金そのものが贈与として扱われます。借用書があれば足りるわけではなく、実際の返済が問われます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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