債務整理の預り金とは?積立金の使われ方と返金される場合
債務整理の預り金とは、弁護士や司法書士に依頼して貸金業者への返済をいったん止めている間に、毎月事務所に預けるお金のことです。積立金と呼ぶ事務所もあり、検索では「プール金」と呼ばれることもあります。主な使い道は、事務所の費用の支払い、和解した後の返済の元手、裁判所に納める費用の3つです。預けた時点では依頼者のお金なので、何に充てたかの明細を受け取り、余れば精算して返してもらうのが基本です。
債務整理の預り金とは:何に使われるお金か
依頼して受任通知を出すと、貸金業者からの本人への督促は止まります。方針が決まるまでは、毎月の返済もいったん止める扱いになることが多く、止めるかどうかは依頼先の指示に従います。その間に何もしないと、費用の支払いが滞ったり、和解した後の返済を始められなかったりします。そこで、これまで返済に回していたお金の一部を、事務所に毎月預ける形を取ることがあります。
| 使い道 | いつ使われるか | 確かめること |
|---|---|---|
| 事務所の費用(着手金・報酬・実費) | 積み立てた額から、契約で決めた時期に | 費用の総額と、充てる順番 |
| 和解後の返済の元手 | 和解の成立後、最初の返済のときなど | 一括で払う和解に使うのか、毎月の返済に回すのか |
| 裁判所に納める費用 | 自己破産・個人再生の申立てのとき | 収入印紙・予納金など、申立先の裁判所が求める額 |
| 支払代行で振り込む返済金 | 和解後、毎月 | 代行を使うかどうかは自分で選べるか |
積立には、お金の役目のほかに、毎月決まった額を続けて用意できるかを確かめる意味もあります。和解した後は、月々の返済を何年か続けることになるからです。日本司法書士会連合会(日司連)は、任意整理の分割期間について、およそ3年程度の和解が多いと説明しています。
個人再生では、裁判所の運用として、計画どおりの額を一定期間積み立てる「履行テスト」が行われることがあります。これは事務所の預り金とは目的が違うため、個人再生の履行テストと積立の目的で分けて説明しています。
預り金と費用・返済の関係(筆者の計算例)
ここでは、3社の任意整理を依頼し、毎月3万円を6か月預ける場面を置いて、筆者が計算します。金額は計算の手順を見せるための条件です。
- 預けた合計:3万円×6か月=18万円
- 事務所の費用(税込の総額として見積もられた額):13万2,000円
- 郵送料などの実費:3,000円
- 残り:18万円−13万2,000円−3,000円=4万5,000円
この4万5,000円の扱いは、事務所によって分かれます。依頼者の口座に振り込んで返す形もあれば、本人の同意を得て、和解後の最初の返済に充てる形もあります。どちらでも、充てた先と額が明細に書かれていれば、依頼者は自分のお金の行き先を確かめられます。
費用の総額そのものの見方は債務整理の料金の見積書で確かめる項目に、費用を抑える公的な手段は債務整理を安い費用で頼むには|公的な手段と費用の抑え方にあります。
法律の面では、事務所が預かるお金は委任の決まりの中で扱われます。
| 民法の条文 | 定めていること | 預り金での意味 |
|---|---|---|
| 649条 | 費用がかかるときは、受任者の請求で委任者が前払いする | 実費を先に預ける根拠 |
| 646条 | 受任者は、仕事の中で受け取った金銭を委任者に引き渡す | 使わなかったお金は依頼者のもの |
| 645条 | 委任者が求めれば、受任者はいつでも処理の状況を報告し、終わった後は遅滞なく経過と結果を報告する | 預り金の残高や使い道を聞いてよい |
日司連の指針の解説は、支払代行で返済金を預かる場合、依頼者ごとに預金口座を作るなどして、事務所や他の依頼者の財産と分けて管理するのが望ましいとしています。
余ったとき・途中でやめたとき・今月だけ払えないとき
余ったとき 手続きが終われば、預り金は精算します。日司連の指針17条は、司法書士が事件の終了後、遅滞なく費用を精算し、預かった書類なども返すよう定めています。解説は、事件が終わったら金銭は精算し、取引履歴や和解契約書などの書類もすべて本人に返すべきだとしています。弁護士に頼んだ場合も、民法646条と645条のとおり、明細と残りの返金を求められます。
途中でやめたとき 民法651条は、委任はどちらの側からもいつでも解除できると定めています。報酬は、648条3項により、仕事が途中で終わったときは、すでにした仕事の割合に応じて請求できます。積立金は、このとき残額の計算に使う明細が必要になります。解約したら一切返さないという条項の見方と、返金の条件を見積書で確かめる項目は債務整理の料金の見積書で確かめる項目|総額・追加費用・返金の条件にまとめています。ここでは、解約の前に、積立金の残高と使い道の明細を書面でもらっておくことだけ押さえてください。
今月だけ払えないとき 病気や収入の減少で、ある月の積立が難しくなることはあります。大切なのは、支払日より前に事務所へ連絡することです。何の連絡もなく遅れが続くと、契約書の条項によっては、事務所が辞任したり契約を解除したりすることがあります。辞任になると代理人がいなくなり、止まっていた貸金業者からの請求が再び始まりえます。どんなときに辞任になるかは債務整理で弁護士が辞任するのはどんなときかで扱っています。
文例:「今月の積立3万円が、収入が減ったため期日までに用意できません。来月10日までに1万5,000円、翌月から元の額に戻す形でお願いできないでしょうか。積立の期間が延びる場合、和解の時期や費用に影響があるかも教えてください。」
契約の前に確かめる項目と聞き方
預り金をめぐる行き違いは、「何に使うお金か」「いつ返るお金か」が契約であいまいなときに起きやすくなります。委任契約書と費用の説明書面で、次の項目を確かめます。弁護士に頼む場合も、日弁連の規程5条が、費用の説明と委任契約書の書き方で依頼者に誤解が生じないよう努めることを求めています。
| 項目 | 見るところ |
|---|---|
| 毎月の額と回数 | 何か月、いくら預けるか。家計表で払える額か |
| 使い道 | 費用・実費・返済の元手・裁判所の費用のどれに充てるか |
| 充てる順番 | 費用を先に引くのか、返済の元手を先に残すのか |
| 管理の仕方 | 事務所の口座と分けているか |
| 報告 | 残高と使い道の明細を、いつ・どう受け取れるか |
| 終わったときの精算 | 余りを振込みで返すのか、返済に充てるのか |
| 途中でやめたときの返金 | 解約の時期ごとに、いくら返るかの計算 |
| 遅れたときの扱い | 何か月の遅れで辞任・解除になるか、その前に連絡はあるか |
文例:「毎月の預り金は、費用と和解後の返済のどちらに、どの順番で充てられますか。残高と使い道の明細は、どのくらいの間隔でいただけますか。途中で解約した場合に返金される額の計算も、書面で教えてください。」
受任通知を出した後に止まる請求と止まらない支払いは債務整理の受任通知で止まるもの・止まらないものに、依頼先を弁護士にするか司法書士にするかは債務整理は弁護士と司法書士どっちかにまとめています。精算や返金で事務所と話がまとまらないときは、司法書士なら各都道府県の司法書士会が苦情の窓口です。契約の条項について相談したいときは、消費生活センターなど借金の公的な相談窓口と受付時間も使えます。
よくある質問
Q. 債務整理の預り金は、そのまま事務所の報酬になるお金ですか?
預けた時点では依頼者のお金で、契約で決めた使い道(報酬・実費・返済の元手など)に充てられたときに初めて支払いになります。民法646条は、受任者が仕事の中で受け取った金銭を委任者に引き渡すよう定めています。何にいくら充てたかは、明細で示してもらえます。
Q. 任意整理の積立が今月だけ払えないときは、どうすればよいですか?
支払日の前に、払えない理由と、いつ・いくらなら払えるかを事務所に伝えます。黙って遅れると、契約書の条項によっては辞任や解約に進むことがあります。翌月にまとめて払う、積立の期間を延ばす、といった扱いができるかは事務所との話し合いで決まります。
Q. 手続きが終わって余った預り金は返ってきますか?
費用と返済の元手に充てた残りは、精算して返すのが原則です。日本司法書士会連合会の指針17条は、司法書士が事件の終了後に遅滞なく費用を精算するよう定めています。返し方(振込みか、和解後の初回返済に充てるか)は契約書で確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 債務整理事件の処理に関する指針(令和7年理事会決定・改正)(日本司法書士会連合会)
- 債務整理事件の処理に関する指針の解説(日本司法書士会連合会)
- 「多重債務」に陥り(受任通知で返済の請求が止まる仕組み)(日本司法書士会連合会)
- 「多額の借金」返済限度を超えた(任意整理の分割期間の説明)(日本司法書士会連合会)
- 情報提供フォーム(司法書士への苦情は各司法書士会へ)(日本司法書士会連合会)
- 債務整理事件処理の規律を定める規程(会規第93号)(日本弁護士連合会)
- 民法 第645条・第646条・第648条・第649条・第651条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 消費者契約法 第9条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 民事事件Q&A(破産・個人再生の申立て)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。