債務整理を弁護士に頼むと何をしてくれる?依頼者がすることと流れ
この記事のもくじ
債務整理を弁護士に頼むと、弁護士は貸金業者などに受任通知を送り、取引の記録を取り寄せて借金の額を確かめ、任意整理なら交渉、自己破産や個人再生なら代理人として裁判所に申し立てます。依頼者のほうも、書類を集める、家計表をつける、毎月決まった額を積み立てる、弁護士からの連絡に応える、という役目を受け持ちます。弁護士との連絡が取れなくなったり、積立が止まったりすると、委任契約の条項によっては弁護士が辞任することがあります。
債務整理を弁護士に頼んだ後の流れ:双方がすることの対の表
弁護士法3条は、弁護士の職務を、訴訟事件・非訟事件その他一般の法律事務としています。債務整理では、交渉も裁判所の手続きも、金額に関係なく代理人として扱えます。依頼の後は、弁護士と依頼者がそれぞれ別の仕事を受け持ちながら進みます。
| 段階 | 弁護士がすること | 依頼者がすること |
|---|---|---|
| 1 契約の直後 | 委任契約書と費用の書面を渡す。対象にする借入先を確定する | 借入先・残高・延滞の有無を伝える。漏れている借入先がないか見直す |
| 2 受任通知 | 借入先に受任通知を送り、今後の連絡を弁護士にするよう伝える | 届いた督促状や電話の記録を弁護士に渡す。新たに借りない |
| 3 借金の調査 | 取引履歴を取り寄せ、利息制限法の上限で計算し直す | 契約書・利用明細・通帳など、手元の書類を集める |
| 4 方針の決定 | 任意整理・個人再生・自己破産のどれで進めるかを説明する | 家計表をつけ、毎月いくらなら返せるかを示す |
| 5 交渉・申立て | 任意整理なら和解の交渉、破産・再生なら申立書を作り代理人として申し立てる | 毎月の積立を続ける。裁判所に出す書類の材料をそろえる |
| 6 和解・決定の後 | 和解書の確認、裁判所とのやり取り、終了の報告と精算 | 和解や計画どおりに返済する。住所・勤務先・収入が変わったら知らせる |
全体の段取りと期間の目安は債務整理の手続きの流れにまとめています。ここからは、それぞれの役目の中身を見ていきます。
弁護士がすること:受任通知・取引履歴・交渉・申立て
受任通知 貸金業法21条1項9号は、債務者が弁護士などに借金の処理を任せ、書面でその通知があった後に、貸金業者が正当な理由なく電話・FAX・訪問などで本人に返済を求め、直接求めないよう言われてもさらに求めることを禁じています。名宛人は貸金業を営む者と、その取立てを任された者です。債権回収会社(サービサー)については、サービサー法18条8項が、弁護士に処理を任せた旨の通知の後の訪問や電話での請求を禁じています。止まる請求と止まらない支払いの線は債務整理の受任通知で止まるもの・止まらないもので詳しく扱っています。
取引履歴の取り寄せと引き直し計算 貸金業者は、債務者ごとに貸した額や受け取った額を帳簿に記録しています。貸金業法19条の2は、債務者や以前に債務者だった人が帳簿の閲覧や謄写を求められると定め、施行規則17条の2は、本人から代理権を与えられた人もこれを求められるとしています。弁護士はこの記録を取り寄せ、利息制限法1条の上限で計算し直します。
| 元本 | 利息制限法の上限 |
|---|---|
| 10万円未満 | 年20% |
| 10万円以上100万円未満 | 年18% |
| 100万円以上 | 年15% |
昔の借入で上限を超える利率が使われていた場合は、計算し直すと残高が減ったり、過払い金が見つかったりすることがあります。上限の内側の利率で借りている場合は、計算し直しても残高は変わりません。
交渉と申立て 任意整理では、計算し直した残高をもとに、将来の利息や分割の回数を貸金業者と交渉します。自己破産・個人再生では、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に、弁護士が代理人として申し立てます。申立ての後も、裁判所からの照会への回答や、期日の出席を代理人として受け持ちます。
受任の前後に守ることになっている手順(日弁連の規程) 日本弁護士連合会(日弁連)の「債務整理事件処理の規律を定める規程」は、債務整理を受ける弁護士に、次の手順を求めています。依頼者から見ると、弁護士の動きが正しい順で進んでいるかを確かめる物差しになります。
- 受任する予定の弁護士が自ら本人と面談し、債務の内容、収入や資産などの生活の状況、不動産についての希望を聴く(3条)。面談が難しい特段の事情があるときは、その事情がなくなった後に面談し、それまでも電話や書面などで事項を把握する。
- 受任するときに、事件の処理の方針と見通し、弁護士費用、予想される不利益(破産の資格制限、信用情報への登録、不動産などを失う可能性)を説明する(4条)。
- 受任した後、速やかに、担当する弁護士の氏名と法律事務所の所在地を本人に明示する(7条)。
- 和解契約書など法律事務の結果を示す文書を作ったり受け取ったりしたら、遅滞なく写しを渡す。破産・再生では、裁判所の決定書の写しも渡す(17条)。
- 取引履歴など重要な事項を報告するときは、面談か書面・メールなどで行い、必要に応じて引き直し計算の書面を示す(17条3項)。
依頼者がすること:書類・家計表・積立・連絡
弁護士がどれだけ動いても、依頼者の手元にしかない材料があります。裁判所のQ&Aは、自己破産の申立てに要る書類の例として、申立書のほかに、住民票の写し、事情説明書、債権者一覧表、財産目録、源泉徴収票や給料明細書、最近まで勤めていた場合の退職金支給額証明書を挙げています。どれが要るかは申立先の裁判所で違うため、弁護士の指示に沿って集めます。
依頼者が受け持つことを、時期の順に並べます。
- 借入先を漏れなく伝える。 家族や友人からの借金、携帯電話の端末代の分割、後払いの決済も、対象になるかを含めて伝えます。
- 手元の書類を集める。 契約書、利用明細、督促状、通帳、給料明細、保険証券、車検証など。
- 家計表をつける。 収入と支出を月ごとに書き出します。東京地方裁判所の個人再生の案内では、提出書類に直近2か月の家計全体の状況が挙がっています。つけ方は借金返済中の家計簿のつけ方を参考にできます。
- 毎月の積立を続ける。 返済を止めている間に事務所へ預けるお金の使い道は債務整理の預り金とは何かで説明しています。
- 新たな借入や、特定の会社への返済をしない。 判断に迷う支払いは、払う前に弁護士に聞きます。
- 連絡に応える。 書類の追加や、裁判所からの質問への回答を頼まれたら、期限までに返します。
連絡が取れなくなると辞任になる場合
民法651条は、委任はどちらの側からもいつでも解除できると定めています。弁護士との委任契約書に、弁護士が辞任できる場合を定めた条項があるかを、契約の前に確かめておきます。委任契約書の辞任の条項に挙げられていることがある場面は、次のとおりです。
- 電話やメールに長く応えず、書類も届かない
- 積立や費用の支払いが続けて遅れ、その連絡もない
- 借入先や財産を隠していたことが分かった
辞任されると代理人がいなくなるため、貸金業者からの請求が再び本人に届きうるうえ、交渉や申立ての準備もそこで止まります。民法645条は、委任者が求めれば受任者がいつでも処理の状況を報告するよう定めているので、こちらから進み具合を聞くこともできます。連絡を取りやすくしておくことが、辞任を防ぐいちばんの手立てです。
文例:「来週は入院のため、電話に出られない日が続きます。その間はメールで連絡をいただけますか。今月の積立は、退院後の25日までに入れます。」
辞任の条件と、辞任された後の動き方は債務整理で弁護士が辞任するのはどんなときかにまとめています。
依頼の前に確かめることと、依頼先の選択肢
契約の前に、次の点を弁護士に聞いておくと、依頼後の役割分担がはっきりします。
- 面談した弁護士本人から、方針・費用・不利益の説明を受けられたか
- 受任通知を送る時期と、通知の後に止まる請求・止まらない支払いの一覧
- 依頼者が集める書類と、その期限
- 毎月の積立の額と使い道、遅れたときの扱い
- 辞任になる条件と、その前にどんな連絡があるか
- 進み具合の報告を、どのくらいの間隔で受けられるか
借入先が1社あたり140万円以下で任意整理を考えているなら、認定司法書士も依頼先の候補になります。どちらに頼むかの線は債務整理は弁護士と司法書士どっちかで確かめられます。
弁護士の事務所に依頼するなら、選ぶときは、所属する弁護士会の会員検索で氏名を確かめること、担当の弁護士本人から方針と不利益の説明を受けられるか、費用と積立の額を書面で示してもらえるか、連絡の手段と報告の間隔が自分の生活に合うかを見ます。
よくある質問
Q. 弁護士に依頼した後も、貸金業者への返済は続けるのですか?
受任通知を出した後は、方針が決まるまで返済をいったん止める扱いになることがあり、止めるかどうかは弁護士の指示に従います。止めている間に、費用や和解後の返済の元手として、毎月一定額を事務所に預けるよう求められることがあります。自分の判断で一部の会社にだけ払うことは、手続きによっては問題になるので、事前に相談します。
Q. 弁護士に頼むと、家賃や税金、銀行のローンの請求も止まりますか?
貸金業法21条1項9号の禁止は、貸金業を営む者とその取立てを任された者が相手です。家賃や税金は貸金業ではないため、この条文は及びません。銀行のローンや、債権回収会社からの請求の扱いも含め、どの請求が止まり、どれを払い続けるかを依頼の時に弁護士に一覧で確かめます。
出典・参考にした公的な情報
- 弁護士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 債務整理事件処理の規律を定める規程(会規第93号)(日本弁護士連合会)
- 貸金業法 第19条の2・第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法施行規則 第17条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 債権管理回収業に関する特別措置法 第18条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 「多重債務」に陥り(取引履歴の取り寄せと引き直し計算の説明)(日本司法書士会連合会)
- 利息制限法 第1条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第645条・第651条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 民事事件Q&A(破産・個人再生の申立てと必要な書類)(裁判所)
- 個人再生手続の申立てに当たって(令和7年11月1日以降適用)(東京地方裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。