経済的DVで借金を強いられるとき|お金を渡されない人の相談先
配偶者から借金を強いられる、生活費を渡されないといった状態は、経済的DVとして相談できます。まず、身の危険を感じているなら110番へ。そうでなければ、**DV相談プラス(0120-279-889、電話は24時間)**か、**DV相談ナビ(#8008)**に連絡してください。#8008は、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。ここでは、経済的DVにあたりうる状態、身の安全を先にする順番、自分名義の借金と生活費を整理する道筋を示します。個別の判断は、窓口と弁護士・司法書士が事情を聞いて行います。
まず、どこに相談するか
経済的なことで追い詰められている人が使える窓口を、順に並べます。
| 窓口 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| DV相談プラス(内閣府)0120-279-889 | 電話は24時間。チャットは12時〜22時。男性向けの専用の時間帯もある | 夜でも相談したい。チャットで文字から始めたい |
| DV相談ナビ #8008 | 最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながる。相談は各機関の受付時間内 | 近くの窓口を知りたい。一時保護などを相談したい |
| 警察(110番) | 身の危険が迫っているとき | 暴力や脅しで、いま安全が守れない |
DV相談ナビ(#8008)は、一部のIP電話などからはつながりません。つながらないときは、都道府県や市町村の配偶者暴力相談支援センターに直接電話します。
配偶者暴力相談支援センターは、配偶者暴力防止法3条3項で、被害者の相談、心身の健康の回復のための指導、緊急時の安全確保と一時保護、就業や住宅の確保などの自立の援助、保護命令の制度についての情報提供、保護施設の利用についての情報提供を行うと定められています。借金の整理そのものを担う窓口ではありませんが、「安全を確保してから、お金の問題に進む」順番を一緒に考えてくれます。
経済的DVにあたりうる状態の例
内閣府男女共同参画局は、暴力を身体的、精神的、性的の3つに分け、精神的なものの注記で、次の行為が「経済的なもの」と分類される場合もあると書いています。
- 生活費を渡さない
- 外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
また、内閣府の令和5年度調査(令和6年3月公表)は、結婚したことのある1,838人に、配偶者からの「経済的圧迫」の経験を聞いています。例として挙げられたのは、生活費を渡さない、給料や貯金を勝手に使われる、外で働くことを妨害される、の3つです。「ある」と答えた人は、全体の7.8%、女性の9.1%、男性の6.1%でした。同じ調査で、配偶者から何らかの被害を受けた462人のうち、44.2%は、被害について誰にも打ち明けたり相談したりしていません。
「借金を強いる」は、内閣府の例示には書かれていません。ただ、お金を使って相手を支配している状態であれば、相談の対象になりえます。次のような状態が当てはまるかを、窓口で話してみてください。
| 状態の例 | お金の面で起きること | 最初の動き |
|---|---|---|
| 生活費を渡されず、カードや借入れで穴埋めしている | 自分名義の借金が増える | 公的な窓口に相談し、借入一覧を作る |
| 配偶者の事業や趣味のために、自分名義で借りさせられる | 契約者として返済を求められる | 契約の経緯を整理して、弁護士・司法書士に見せる |
| 給料や通帳を取り上げられている | 返済も生活費もやりくりできない | 安全を確保してから、通帳の記録を押さえる |
| 返済しないと脅される | 返済の判断を迫られる | 脅しの内容を記録し、110番や窓口へ |
| 順番 | やること | 窓口・参照 |
|---|---|---|
| 1 | 身の安全を決める。危険なら110番、安全な場所を考える | 110番、DV相談プラス、#8008 |
| 2 | 話せる範囲で窓口に状況を伝える | DV相談プラス、配偶者暴力相談支援センター |
| 3 | 借入れと生活費の状況を書き出す | 借入一覧、通帳や明細の写し |
| 4 | 借金は弁護士・司法書士や公的な窓口で整理する | 法テラス、財務局の多重債務相談窓口 |
| 5 | 生活費の請求や離婚は、落ち着いてから選ぶ | 家庭裁判所、弁護士 |
身の安全を先にする:相談や準備を相手に知られないために
配偶者が相談の事実に気づくと、状況が悪化する人もいます。次のことに気をつけてください。
- 履歴を残さない:検索履歴、通話履歴、メッセージ、メールを、相手に見られない方法で管理する。相手が使う端末では、相談の準備をしない。
- 連絡の時間と手段を選ぶ:相手が不在の時間や、相手が見ない端末、チャットを使う。
- 持ち出すものを少しずつ用意する:健康保険証、身分証、通帳やキャッシュカード、借入れの契約書や明細、印鑑、子どもの保険証や母子健康手帳など。すぐに持ち出せる場所に、まとめておく。
- 危険を感じたら、整理は後回し:命や体の安全が第一で、借金の整理は、安全が確保できてから進めます。
一時保護や自立の支援は、配偶者暴力相談支援センターが相談を受けます。保護命令などの制度を使えるかは、事情によって違うため、窓口で確認してください。
自分名義の借金と生活費を整理する
安全の見通しが立ったら、お金の整理に進めます。
借金:自分が契約した借入れは、契約者の借金として扱われるのが原則です。ただし、脅されて契約したといった事情があれば、強迫による意思表示は取り消せる場合があります(民法96条)。取り消せるかは個別の事情で決まるため、弁護士に経緯を見てもらいます。配偶者の名義の借金で、あなたが保証人や連帯債務者ではない場合、契約したのが配偶者だけなら、あなたに返済義務が当然に生じることはありません。夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と行った法律行為の責任は、もう一方も連帯して負います。ただし、第三者に責任を負わない旨を予告していたときは除かれます(民法761条)。借金がこれに当たるかは内容次第で、断定できません。払う義務の有無は家族の借金は払う義務がある?発覚したときの確認と本人を相談につなぐ手順で整理しています。自分の名義を勝手に使われた場合は家族が勝手に自分名義で借金したら|名義の冒用への対応と相談先を見てください。
貸金業者の督促:弁護士・司法書士に債務の処理を依頼し、貸金業者にその旨が弁護士等から書面で通知されたあと、本人が直接要求しないよう求めたのに、なお電話や訪問などで返済を求めることは、貸金業法21条1項9号で禁じられています。配偶者に督促の内容を知られたくない人は、相談の際に連絡方法を依頼先へ伝えてください。
生活費:夫婦は互いに協力し扶助する義務があり(民法752条)、その資産、収入、一切の事情を考えて、婚姻から生じる費用を分担します(760条)。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停で生活費(婚姻費用)の分担を決める方法があります。山口家庭裁判所の案内では、申立てに収入印紙1,200円分と郵便切手が要り、費用は裁判所ごとに確かめます。提出した書類は相手方が見る可能性があります。住所を相手に知られたくない事情があるときは、申立ての前に、窓口か弁護士に相談してください。
今月の食費や家賃が足りないときは、自治体の自立相談支援機関で、家計の相談や住居確保給付金の案内を受けられます。窓口は生活費が足りないときの公的な相談先|家計改善支援と住居確保給付金、専業主婦(夫)の立場からは専業主婦で生活費が足りないとき|夫との話し方と使える窓口にあります。
離婚や別居を考えるとき
離婚するときの借金は、財産分与や名義によって扱いが変わります。結論を急がず、まず安全と生活費を確保してください。離婚と借金の関係は離婚するとき借金はどうなる?財産分与と夫婦の借金の分け方で説明しています。眠れない、気持ちが沈む状態が続くときは、借金で死にたいと思ったとき|24時間つながる相談先と最初の一歩に載せた窓口も使ってください。
よくある質問
Q. 殴られたことはなくても、経済的DVとして相談できますか?
相談できます。内閣府男女共同参画局は、生活費を渡さない、外で働くなと言ったり仕事を辞めさせたりする行為を、精神的な暴力の例として挙げ、経済的なものと分類される場合もあるとしています。ただし、例示された行為のすべてが配偶者暴力防止法上の暴力に当たるとは限らないという注記もあります。
Q. 男性でも相談できますか?
相談できます。内閣府の令和5年度調査では、結婚したことのある男性の6.1%が、配偶者から経済的圧迫を受けたことがあると答えています。DV相談プラスのサイトでも、男性の相談を受け付ける専用の時間帯が案内されています。
Q. 配偶者が勝手に自分名義で借りた借金は、払う義務がありますか?
契約者ではない人に、その借入れの返済義務が当然に生じることはありません。保証人や連帯債務者になっていないかを、契約書で確かめてください。名義を勝手に使われた場合の対応は、別の記事で説明しています。契約の経緯は、弁護士・司法書士や消費生活センターに見てもらいます。
出典・参考にした公的な情報
- 暴力の形態(配偶者からの暴力被害者支援情報)(内閣府男女共同参画局)
- 男女間における暴力に関する調査 報告書(令和5年度)(内閣府男女共同参画局)
- DV相談ナビ・相談窓口の案内(内閣府男女共同参画局)
- 女性に対する暴力の根絶(DV相談プラスの案内)(内閣府男女共同参画局)
- 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 第1条・第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第96条・第752条・第760条・第761条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 婚姻費用分担調停について(裁判所(山口家庭裁判所))
- 貸金業法 第21条(取立て行為の規制)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- DV相談プラス(電話24時間・チャット12〜22時・男性専用回線)(内閣府(運営:社会的包摂サポートセンター))
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。