取り立てが会社に来たら?勤務先への連絡が許される場合と対処
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貸金業者は、取り立てのために勤務先へ自由に電話できるわけではありません。貸金業法21条1項3号は、正当な理由がないのに、勤務先に電話・電報・FAXをすること、勤務先を訪問することを禁じています。ただし条文は「正当な理由がないのに」が条件で、金融庁の監督指針には、勤務先への連絡が許されうる例も挙がっています。いま会社に連絡が来ているなら、日時・相手・内容を記録し、連絡できる方法を業者に伝え、続くときは窓口に相談します。脅す言葉や押しかけがあるときは、緊急なら110番、緊急でない相談は警察相談専用電話の#9110です。
勤務先への取り立てで禁じられていること
貸金業法21条1項は、貸金業を営む者と、その取り立てを委託された者に、威迫することと、私生活や業務の平穏を害する言動を禁じています。貸金業者から債権を譲り受けた会社にも、同じ規制が準用されます(同法24条2項)。条文が「業務の平穏」まで書いているのは、取り立てが職場の仕事に響くことを想定しているからです。勤務先や職場に関わる号を、早見表にまとめます。
| 号 | 禁じられていること | 職場でのたとえ |
|---|---|---|
| 3号 | 正当な理由がないのに、勤務先などに電話・電報・FAXをする。勤務先などを訪問する | 本人あての取り立てを会社の代表番号にかける。受付まで来る |
| 4号 | 勤務先などで退去すべき旨の意思を示されたのに、退去しない | 帰るよう言っても、受付やロビーに居続ける |
| 5号 | 貼り紙・立看板その他どんな方法でも、借入れに関する事実を債務者等以外に明らかにする | 同僚や上司に、借金や延滞があることを話す |
| 7号 | 債務者等以外の者に、代わりに返済するよう要求する | 上司や同僚に「立て替えてほしい」と求める |
| 1号 | 正当な理由がないのに、午後9時から午前8時までの間に、電話・FAXをする。自宅を訪問する | 夜間や早朝に携帯電話へかける(時間帯は施行規則19条1項) |
21条1項に違反した場合の罰則は、2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です(同法47条の3第1項3号)。表は禁止の内容を示すだけで、あなたに起きた出来事が違反にあたるかを決めるものではありません。あたるかどうかは、日時、回数、言葉づかい、頼んだ内容などの事実で判断されます。
また、21条は貸金業を営む者への規制です。銀行や信用金庫のローンは貸金業にあたらず(同法2条1項)、21条は直接は及びません。ただし、貸金業者が保証会社として求償権を取り立てる場合は、21条が適用されうると金融庁の監督指針にあります。家賃や税金の請求も別の仕組みなので、勤務先に連絡が来たときは、まず請求元がどこかを確かめます。
「正当な理由」があるとされる場合:金融庁の監督指針の例
3号は「正当な理由がないのに」が条件です。金融庁の「貸金業者向けの総合的な監督指針」は、この「正当な理由」を個別の事実関係に即して判断するものとしたうえで、勤務先などへの連絡について、次のような場合が該当する可能性が高いと例を挙げています。
- 債務者等に自発的な承諾がある場合
- 債務者等と連絡をとるための合理的な方法が他にない場合
- 債務者等の連絡先が不明なとき、連絡先を確認する目的で、債務者等以外の者に電話をする場合
3番目の例には但し書きがあります。債務者等以外の人から「電話をしないでほしい」と求められたのに、さらに電話をかけることは、平穏を害する言動にあたるおそれが大きいとされています。指針は、反復継続して電話をかけることも、平穏を害するおそれが大きい例に挙げています。
この例から、実際に気をつけられることが3つあります。
- 申込書や電話で「勤務先なら連絡がつく」と自分から伝えると、承諾があったと業者に言われる材料になりえます。連絡先として伝える番号は、携帯電話など、仕事中でない時間に出られるものにします。
- 携帯電話が通じない、番号が変わった、着信を拒否したといった状況が続くと、「他に方法がない」と言われやすくなります。連絡のつく番号と時間帯を、一度は業者に伝えておく意味があります。
- 例は「可能性が高いもの」の列挙で、あなたの場合の結論を示すものではありません。勤務先への電話が許されるかどうかは、窓口に事実を伝えて確かめます。
会社に電話が来たその場での受け答え
自分が電話に出たときは、相手の名乗りと用件を確かめ、その場で支払いの約束をしないのが基本です。貸金業者は、相手方から請求があれば、商号・取り立てを行う者の氏名・債権の内容などを書面で明らかにしなければなりません(貸金業法21条3項、施行規則19条5項・6項)。従業者が名前を聞かれたときは、従業者証明書を見せる方法でもよいとされています。
文例(会社の電話に出たとき):「勤務先へのお電話は控えてください。ご連絡は携帯電話の○○にお願いします。平日は○時以降なら出られます。会社名と担当のお名前、どの契約のお話かを教えてください」
その場で払う日を口にしないのには理由があります。21条1項2号は、債務者等が弁済や連絡の時期を申し出たのに、その申出が相当でないなどの正当な理由がないまま、夜間以外の時間帯に電話・FAX・訪問をすることを禁じています。申し出た時期に合わせてもらうための条文と読めます。ところが監督指針は、この「正当な理由」の例として、直近で弁済や連絡の申出が守られていない場合を挙げています。守れるか分からない日付を言うと、あとで連絡を控えてもらう根拠が弱まります。払う日を伝えるなら、収入の入る日を確かめてからにします。
同僚や受付が電話を受けたときのために、自分から職場の誰かに借金の事情を話す必要はありません。あとで、誰が電話を受け、何を聞かれ、何を言われたかを本人から聞けるなら、その内容を記録に足します。借金の話を同僚に伝えられていた場合は5号の問題になりうるので、窓口に伝えます。
記録の残し方:あとで窓口に見せられる形にする
窓口に相談するときは、事実が日付順に並んでいると話が通じます。1回ごとに、次の表の項目を残します。
| 項目 | 残すこと |
|---|---|
| 日時 | 年月日、電話をとった時刻、通話の長さ |
| 相手 | 会社名、担当者名、電話番号(着信履歴の画面を撮影) |
| 受けた人 | 自分が出たか、同僚や受付が出たか。誰が内容を聞いたか |
| 内容 | 請求された金額、期限、「会社に行く」などの発言。大声・脅す言葉があればそのまま書く |
| 自分の返事 | 伝えた連絡先、約束したことがあるか(原則しない) |
| 業務への影響 | 会議が止まった、取引先からの電話に出られなかった、など |
メモは、その日のうちに書きます。通話を録音できる環境なら、録音も記録の1つです。相手から届いた郵便物や、公式の窓口に出す書面は、封筒ごと保管します。
続くとき・脅されるときの相談先
身の危険を感じる、会社に押しかけてきて帰らない、脅す言葉を使うといったときは、緊急なら110番です。緊急でない相談は、最寄りの警察署か警察相談専用電話の#9110に電話します(受付時間は都道府県警察で違います)。
登録を受けた貸金業者の取り立てについての苦情は、金融庁の案内で、日本貸金業協会と国民生活センターが相談先に挙がっています。ヤミ金融(無登録の業者)の通報・相談先は、警察、消費生活センター、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会です。各窓口の番号と受付時間は、借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方にまとめています。
取り立てそのものを根本から止めたいときは、弁護士や認定司法書士に債務整理を依頼し、受任通知を出してもらう方法があります。仕組みは債務整理の受任通知とは?督促が止まる仕組みと止まらない支払いで説明しています。督促状が会社に届く場合の別の仕組みは督促状が会社に届くことはある?勤務先に届く場合と対応に、取り立て全体の禁止行為は取り立てが怖いとき|法律で禁止されている取立てと連絡先の一覧にあります。自宅への訪問については、取り立てが家に来るときの対応|訪問できる時間の決まりと連絡先で扱っています。
よくある質問
Q. 勤務先に電話が来ると、会社に借金を知られてしまいますか?
電話があっただけで、借金の中身まで会社に伝わるとは限りません。貸金業法21条1項5号は、借入れに関する事実などを債務者等以外の者に明らかにすることを禁じています。同僚や上司に借金の話をされた、延滞を口にされたという場合は、誰が・いつ・何を言われたかを記録して、窓口に伝えます。
Q. 弁護士や司法書士に頼めば、会社への電話は止まりますか?
依頼を受けた弁護士・認定司法書士の通知が業者に届き、直接請求しないよう求めたのに、正当な理由なく電話・FAX・訪問で返済を求め続けることは、21条1項9号で禁じられます。本人への電話であれば、かける先が勤務先でも対象になりえます。通知が業者に届く前の電話は止まらないので、届いた日を事務所に確かめます。
Q. 会社の電話が使えず、仕事に支障が出ています。すぐにできることは何ですか?
条文は「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」を禁じています。業務に支障が出ていること自体が、記録に残す価値のある事実です。回数と時間をメモに残し、連絡のつく携帯電話の番号と時間帯を業者に伝えたうえで、続くようなら窓口に相談します。
出典・参考にした公的な情報
- 貸金業法 第21条・第47条の3(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法施行規則 第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業者向けの総合的な監督指針 II-2-19 取立行為規制(金融庁)
- ご意見、各種相談・情報提供等(緊急通報は110、緊急でない相談は#9110)(警察庁)
- 相談窓口(登録貸金業者にかかる苦情・相談先、ヤミ金融についての通報・相談先)(金融庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。