親の借金の時効は使える?相続放棄の3か月との順番と確かめ方
亡くなった親の古い借金は、子が相続していれば請求の相手になります。相続した借金にも時効の考え方は当てはまり、時効が成立していれば、相続人が援用すれば払う義務はなくなります。ただし、相続放棄の期限(自分のために相続があったと知った時から3か月)が過ぎているかどうかで、選べる道が分かれます。請求に応じる前に、「請求の書面を確かめる→3か月の期限を数える→時効を確かめる→放棄か援用かを決める」の順に進めます。
相続した借金にも時効はあるか
借金も相続の対象です。相続人は、相続が始まった時から、亡くなった人の財産に属していた一切の権利義務を引き継ぎます(民法896条)。債務も含まれるので、親が貸金業者や信販会社、個人から借りたお金の返済義務は、相続人が引き継ぎます。
引き継いだ借金の時効は、親が生きているときから進んでいます。相続があったからといって、時効が止まったり、新たに始まったりはしません。債権は、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年で時効によって消滅します(民法166条1項)。ただし、2020年(令和2年)4月1日より前に生じた債権は旧法の期間が使われる場合があり、裁判や支払督促で確定していれば10年になります(民法169条)。時効は援用しなければ使えず(民法145条)、相続人は親の立場を引き継ぐので、援用の主体は相続人になります。
確かめる項目は、親本人の場合と同じです。最後の返済日、契約の時期、裁判や支払督促の有無、途中の支払いや約束の記録を調べます(借金の時効が成立しているか確かめる項目)。ただし、親がどんな借金を持っていたかを、子が詳しく知らないことが多いのが、この場面の難しさです。
請求が来たら最初にすること:書面の4点を確かめる
請求の手紙や電話が来たら、すぐに払う約束や、「親は借りていたのですか」と認める返事をしないで、まず書面の次の4点を確かめます。
- 誰からの請求か:貸金業者、債権回収会社、信販会社、保証会社、個人のどれか。差出人が親の契約先と違うときは、債権が移っていることがあります。
- 何の債権か:契約日、借入の種類、契約番号、請求額の内訳(元本・利息・遅延損害金)。
- いつの分か:最後の取引や返済の時期が書かれているか。書かれていなければ、取引履歴を求めます。
- 裁判の記録がないか:判決書、支払督促、差押えの通知が、親の生前や死後に届いていないか。親の郵便物や書類の中を探します。
相続人は、亡くなった人の信用情報を、法定相続人として開示できます(CICは戸籍などを添えた郵送、JICCは法定相続人または二親等以内の血族など)。親が他にどんな借入をしていたかを探す手がかりになります。手順は家族の借金を調べる方法で説明しています。
相続放棄と時効の援用:どちらを先に考えるか
| 順番 | すること | 見るもの |
|---|---|---|
| 1 | 親の死亡と、自分が相続人になったことを知った日を確定する | 死亡の日、戸籍、先順位の人の放棄の連絡を受けた日 |
| 2 | その日から3か月の期限を数える | 民法915条1項 |
| 3 | 親の財産と借金を調べる(期限が迫るなら、家庭裁判所に期間の伸長を求める) | 通帳、郵便物、信用情報の開示 |
| 4 | 時効が成立しうる借金か確かめる | 最後の返済日、契約時期、裁判の有無 |
| 5 | 放棄・承認・援用のどれにするかを決める | 弁護士・司法書士に確認 |
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認(全部を引き継ぐ)、限定承認、放棄のいずれかを選ばなければなりません。この期間は、利害関係人などの請求で、家庭裁判所が伸ばすことができます(民法915条1項)。期間内に放棄も限定承認もしないと、単純承認とみなされます(民法921条2号)。
請求が来た時期によって、考える順番が変わります。次のように整理できます。
- 死亡を知ってから3か月が過ぎている:期間内に放棄も限定承認もしないと単純承認とみなされるため(民法921条2号)、放棄は原則として期限切れです。古い借金の請求が何年もたって来る場面では、この場合になりやすく、時効が成立しているかの確認が中心になります。死亡を知ってから3か月を過ぎた後に借金の存在を知った場合に放棄できるかは、裁判例の考え方が関係する論点なので、あきらめる前に専門家へ相談します。
- 3か月以内で、借金のほうが資産より多く、引き継ぎたくない:相続放棄を、期限内に家庭裁判所に申述します。放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとみなされ(民法939条)、次の順位の人が相続人になります(子が全員放棄すると、故人の親(子から見て祖父母)、次に故人のきょうだい(子から見ておじ・おば)へ移る場合があります)。放棄の手続と費用(申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手)は裁判所の案内にあります。手順は借金の相続放棄で説明しています。
- 3か月以内で、財産も引き継ぎたく、借金に時効が成立しうる:相続人として、時効を援用する選択肢があります。時効の判断は、専門家に確かめます。
- 3か月以内で、どちらか決められない:期限が迫っていれば、家庭裁判所に期間の伸長を求める方法があります。相続人の調査や財産の整理に時間がかかる場合の選択肢です。
借金の相続全体の流れは借金は相続される?親が亡くなった後に確かめる順番と期限にまとめています。
請求に応じる前に避けたいこと
請求に応じる前に、次の2つの行動で、選択肢を狭めないよう注意します。
- 少額でも払う、払う約束をする:一部の支払いや返済の約束は、承認として時効が新たに進む可能性があります(民法152条)。加えて、相続財産を処分すると、単純承認とみなされることがあります(民法921条1号)。親の預金で返す、親の物を売って返す、といった行為がこれに当たるかは個別の判断なので、放棄を考えている人は、故人の財産に手を付ける前に家庭裁判所・弁護士・司法書士に確かめます。相続人自身のお金で返す場合の扱いも、解釈が分かれるので、返す前に相談します。
- 放棄の申述の前に、援用の通知を出す:放棄と援用を同時に進めてよいか、どちらを先にするかは、事情で判断が分かれます。3か月以内なら放棄の期限が先に来るので、まず期限を確かめ、専門家に順番を相談します。
親が連帯保証人だった場合は、保証債務も相続の対象になりえます(連帯保証人の立場は相続される?)。
専門家に相談する前に用意するもの
- 親の死亡と、自分が相続人と知った日が分かる書類(戸籍、死亡診断書の控えなど)
- 届いた請求書、封筒(日付と差出人が分かるもの)
- 親の通帳、契約書、カード、郵便物
- 取引履歴や信用情報の開示書(取り寄せたもの)
窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方で案内しています。時効援用の通知書の書き方は借金の時効援用の書き方で確かめられます。
よくある質問
Q. 親の借金の時効が成立していれば、子が払う必要はありませんか?
時効が成立していて、相続人が時効を援用すれば、その借金を払う義務は消えます。ただし、期間が過ぎただけでは自動では消えず、裁判や承認があれば期間が延びたり数え直しになったりします。時効が成立しているかは、親の最後の返済日や契約の時期、裁判の有無から確かめます。
Q. 相続放棄をした後に、親の借金の請求が来たらどうしますか?
相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。請求の書面に、受理された事実を伝える手順は[相続放棄した後に督促が来たら](/souzoku-ato-tokusoku/)で説明しています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第145条・第152条・第166条・第169条・第889条・第896条・第915条・第921条・第938条・第939条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法の一部を改正する法律(債権法改正)について(施行日)(法務省)
- 相続の放棄の申述(裁判所)
- 信用情報の開示(郵送・亡くなった方の情報)(株式会社シー・アイ・シー)
- 本人が亡くなられている場合の開示(株式会社日本信用情報機構)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。