過払い金のCMや広告を見たら|宣伝の言葉を確かめる3つの点
この記事のもくじ
過払い金のCMや広告は、弁護士・司法書士の事務所が出しているものが多く、過払い金という仕組み自体は実在します。ただし、CMで流れる内容が自分の借金に当てはまるかどうかは、CMだけでは分かりません。確かめるのは「借りた時期」「時効」「費用の総額」の3点です。広告の言い回しには団体の線引きがあり、2026年4月から、過払い金の時効についての表現も日弁連の指針に例として載っています。
過払い金のCMは本当?先に押さえる3つの事実
過払い金とは、利息制限法が定める上限を超えて払った利息のことです。上限は、元本が10万円未満なら年20%、10万円以上100万円未満なら年18%、100万円以上なら年15%で、超えた部分は無効とされています(利息制限法1条)。取引履歴をこの上限の利率で計算し直し、払いすぎが元本を上回ったときに出てくる差額が過払い金です。仕組みの全体は過払い金はいくら戻る?戻る額が決まる仕組みと試算の注意で説明しています。
CMを見る前提として、次の3つを押さえておくと冷静に読めます。
- 過払い金の請求を引き受けられるのは、弁護士と司法書士に限られる。 弁護士でない者が報酬目的で和解の代理などを業とすることは、弁護士法72条が禁じています(法律に別の定めがある場合を除く)。法律事務所と名乗れるのも弁護士だけです(同法74条)。
- 広告の中身には団体の決まりがある。 弁護士は日本弁護士連合会(日弁連)の業務広告の規程と指針、司法書士は日本司法書士会連合会(日司連)の指針が対象です。事実と違う広告、誤解を招く広告、過度な期待を抱かせる広告、不安をあおる広告は、弁護士の業務広告規程が禁じています(同規程3条)。
- CMは、あなたの取引を見て作られたものではない。 全国に向けた広告なので、過払い金が出る可能性のある人と、出る可能性が低い人が同じ画面を見ています。「自分は当てはまるか」は、次の3点で自分で見当をつけます。
確かめる点1:借りた時期で、対象になるかが分かれる
過払い金の元になるのは、上限を超える金利です。貸金業者に対しては、出資法の上限金利が年29.2%から年20%に下がり、いわゆるグレーゾーン金利がなくなったのが2010年(平成22年)6月18日で、この日以降の貸付けは利息制限法の水準(年15〜20%)になります(金融庁の説明)。貸金業者は、利息制限法の上限を超える利息の契約をしてはならないとされています(貸金業法12条の8第1項)。したがって、広告を見て最初に確かめるのは、自分の借入れがこの日より前にさかのぼるかどうかです。
| 自分の借入れ | 見方 |
|---|---|
| 2010年6月18日より前に借りて、そのあとも返し続けた | 上限を超える金利で払った期間があれば、過払い金が出る可能性がある。取引履歴の金利で確かめる |
| 2010年6月18日より前に借りて、すでに完済した | 同じく可能性はあるが、完済から長い時間がたつと時効の問題が出る(次の点2) |
| 2010年6月18日以降に借り始めた | 貸金業者は上限内の金利で貸すのが前提で、過払い金は出にくい |
借り始めの時期は、契約書がなくても、カードの発行時期や通帳の入出金から見当がつくことがあります。金利が上限を超えていたかは、取り寄せた取引履歴で確かめます。対象かどうかを5つの項目で見る方法は過払い金の対象か確かめる5項目|借りた時期と金利の見方にまとめています。
CMに出てくる「長く借りていた方」「昔借りた方」という呼びかけは、この時期の条件を平たく言い換えたものです。呼びかけに当てはまる気がしても、金利が上限内だったなら過払い金は出ません。
確かめる点2:時効を過ぎていないか
過払い金の返還を求める権利にも、時効があります。時効は、期間が過ぎただけでは決まらず、相手が「時効を使う」と主張(援用)して初めて効力が出ます(民法145条)。請求を受けた貸金業者が時効を援用すれば、請求は通りません。日弁連の指針も、時効が完成していれば業者が返金に応じることは期待できないという前提に立っています。
そのうえで、指針は次の表現を問題としています。「時効でも返金されることがあります」のように、依頼すれば時効が完成していても過払い金を回収できるかのような期待を抱かせる言い回しです。この例は、2026年4月1日から施行された改正で加わりました。「ことがあります」と控えめに書かれていても、期待を抱かせる表現とされる点に注意してください。
時効の期間と数え方は、完済の日や最後に取引した日で変わります。具体的には過払い金の時効はいつまで?完済日から数える期限と確かめ方で説明しています。手元では、次の3つの日付を先に調べておくと、広告に左右されません。
- 最後に借りた日、または最後に返した日(通帳、カード明細、完済証明書)
- 完済した日(完済証明書、業者からの通知)
- 同じ業者から借り直した日があるか(取引がつながったものとして扱われるかで、数え方が変わることがある)
一方で、「今すぐ請求しないとあなたの過払金は失われます」のように、期限を一律に急がせる表現も、日弁連の指針は不安をあおる例に挙げています。時効が近い人にとって急ぐ理由はありえますが、期限は広告ではなく、あなたの最後の取引日から数えて決まります。
確かめる点3:費用の総額はいくらか
CMで目に入りやすい「着手金0円」「相談無料」は、費用がまったくかからないという意味とは限りません。日弁連の指針は、「着手金0円」とうたいながら、手数料や管理料などの名目で別に金銭を受け取る場合(別に受け取る旨の明瞭な表示がある場合を除く)を、不正確な表現の例としています。表示より著しく高い着手金を受け取る「着手金〇万円〜」も同じ扱いです。
過払い金の成功報酬には、弁護士会・司法書士会が定める割合の上限があります。率と計算の例は過払い金請求の費用|成功報酬や手数料の見方と見積もりの確認に任せ、ここでは広告の数字の読み方に絞ります。広告に「報酬○%」とだけあれば、その率が上限内か、消費税が別かを、見積書で確かめます。
上限のある成功報酬のほかに、事案によって別の報酬(解決報酬金など)や実費がかかることがあります。弁護士の解決報酬金は、日弁連の施行規則(2条)で1社あたり2万円以下が上限です(事業者が事業用資金を借りた商工ローンなどで、物的担保か人的担保が付いている場合は5万円)。広告の数字だけでは総額は決まらないので、依頼の前に、報酬の種類・金額・算定方法を書面で出してもらいます。見方は債務整理の料金の見積書で確かめる項目|総額・追加費用・返金の条件で、過払い金に特化した費用の項目は過払い金請求の費用|成功報酬や手数料の見方と見積もりの確認で扱います。
| 確かめる点 | 広告で見かける言葉 | 手元で調べること | 事務所に聞くこと |
|---|---|---|---|
| 借りた時期 | 「長く借りていた方」「昔の借金も」 | 借り始めの時期、取引履歴の金利 | 上限を超える金利の期間があったか |
| 時効 | 「時効でも返金」「今すぐ請求を」 | 最後の取引日、完済日 | 期限をどの日付から数えるか |
| 費用の総額 | 「着手金0円」「成功報酬のみ」 | 過払い金の見込みの有無 | 報酬の種類・金額・算定方法を書面で |
団体が問題とする過払い金広告の言い回し
過払い金の広告で、弁護士・司法書士の団体が線を引いている言い回しを、集めておきます。当てはまる広告を見たら、その言葉を信じる前に、上の3点を確かめてください。個別の広告を違反と判断するのは各団体で、この表はその判断ではなく、読み方の目安です。
| 広告の言い回し | 団体の考え方 |
|---|---|
| 過去の回収例を並べて、同じ結果になると思わせる | 日弁連の指針は、他の事件を例に出し、同じ結果になると思わせる表現を、誤導のおそれのある例とする。日司連の解説も、過去の過払い金の実績を示し、全員が請求できるかのように見せる広告を問題とする |
| 「過払い金専門」と掲げ、ほかの借金を整理せずに過払い金だけ取り戻しても不利益がないように見せる | 日弁連の債務整理事件処理の規程は、他の債務の処理を行わずに過払い金の返還だけを行うことに不利益がないかのように誤認させるおそれのある広告を禁じる(18条3項)。「専門」とうたうこと自体を禁じるものではない |
| 勝訴率を示す | 日弁連の業務広告規程は、訴訟の勝訴率の表示を禁じる(4条1号) |
| 面談の前から「過払い金があります」と思わせる | 日司連の指針は、面談の前に、過払い金の発生や減額を期待させる表示を禁じる(19条2項) |
| 借入額などを入れるだけで結果が出る診断 | 日弁連の指針は、入力だけで処理方針や減額の可能性が判断できるかのような表現を誤導のおそれのある例とする(2026年4月施行) |
「診断」の仕組みと使い方は借金減額診断とは?仕組みと使う前に知っておきたい注意点に、広告が何度も出る理由は借金減額は怪しい?広告がうざいほど出る理由と確かめ方にあります。
広告を見たあと、電話する前にすること
最初の連絡で、相手の対応を見るために使える文例です。
文例:「CMを見て問い合わせました。借り始めは2008年ごろで、完済は2015年です。過払い金があるか調べてもらうとき、費用の総額と、時効の期限をどの日付から数えるかを、書面で教えていただけますか。」
進め方は次の順番が安全です。
- 借り始めの時期、最後の取引日、完済日をメモする。
- 借入先の業者名を書き出す(カード名やローン名でも足りる)。取引履歴は過払い金の調査に必要な取引履歴の取り寄せ方|業者への請求手順の手順で業者に請求できる。
- 弁護士なら日弁連の弁護士検索、司法書士なら日司連の司法書士検索で、氏名と所属を確かめる。司法書士検索では、任意整理などの交渉を代理できる簡裁代理権の有無も見られる。
- 面談する弁護士・司法書士が誰かを聞き、費用の書面を受け取ってから決める。
契約したあとで費用や説明に納得できなくなったときは、契約書の解約・精算の条項を読み返し、消費者ホットライン188(地元の消費生活センターにつながる)に相談できます。公的な窓口の一覧は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方にあります。
事務所を比べる段階に進むときは、順位ではなく確認点で選ぶ方法を過払い金請求の事務所の選び方|法律事務所を比べる前の確認点にまとめています。全体の入口は過払い金請求の流れと時効|昔の借金で確かめる順番と戻る条件です。
CMの言葉は、あなたの借金の事情ではなく、一般の人に向けて作られています。借りた時期、最後の取引日、費用の総額の3つを自分の資料で確かめれば、CMを見ても落ち着いて判断できます。
よくある質問
Q. CMで見た事務所に頼まないと、過払い金は戻りませんか?
戻るかどうかは、事務所の知名度ではなく、あなたの取引履歴を上限の利率で計算し直した結果で決まります。弁護士・司法書士に頼む方法のほか、自分で請求する方法もあります。CMの事務所に決める前に、借りた時期・最後の取引日・費用の総額の3点を手元で確かめてください。
Q. CMを見て電話すれば、過払い金が戻ると決まっていますか?
決まっていません。過払い金があるかどうかは、取引履歴を取り寄せて計算するまで分かりません。日本司法書士会連合会の指針は、司法書士が面談をする前に、過払い金の発生や債務の減額を期待させる表示をすることを禁じています。電話で最初に言い切られたら、その根拠を聞いてください。
Q. 過払い金の広告は詐欺ではないのですか?
広告を出しているのが弁護士・司法書士の事務所であれば、広告の内容は団体の規程や指針の対象です。ただし、弁護士・司法書士でない業者が報酬を得て請求の交渉を引き受けることは、弁護士法72条(法律に別の定めがある司法書士などを除く)で禁じられている行為に当たるおそれがあります。氏名と所属を、弁護士検索・司法書士検索で確かめてから話を進めてください。
出典・参考にした公的な情報
- 業務広告に関する指針(令和8年2月19日改正)(日本弁護士連合会)
- 弁護士等の業務広告に関する規程(会規第44号)(日本弁護士連合会)
- 債務整理事件処理の規律を定める規程(会規第93号)(日本弁護士連合会)
- 債務整理事件処理の規律を定める規程施行規則(規則第145号)(日本弁護士連合会)
- 債務整理の弁護士報酬のルールについて(日本弁護士連合会)
- 債務整理事件の処理に関する指針(令和7年)(日本司法書士会連合会)
- 債務整理事件の処理に関する指針の解説(令和7年4月)(日本司法書士会連合会)
- 貸金業法のキホン(上限金利の引下げとグレーゾーン金利の撤廃)(金融庁)
- 貸金業法(第12条の8)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 利息制限法(第1条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法(第145条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条・第74条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士検索(日本弁護士連合会)
- 司法書士検索(日本司法書士会連合会)
- 消費者ホットライン188(消費者庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。