任意整理を弁護士に頼むと何が変わる?受任から和解までに自分がすること
この記事のもくじ
任意整理を弁護士に頼むと、面談と委任契約 → 受任通知 → 取引履歴の取り寄せ → 引き直し計算 → 和解案の交渉 → 和解の成立 → 返済の開始の順に進みます。業者とのやり取りは弁護士が代わりに行いますが、依頼者にもその間にすることがあります。中心は、費用の積立を続けること、弁護士からの連絡に応じること、新しい借入をしないことの3つです。
任意整理を弁護士に頼んだ後の全体の流れ
まず、それぞれの段階で弁護士がすることと、自分がすることを並べます。期間の目安は任意整理の手続きの流れ|相談から和解・返済開始までの8段階で扱うので、ここでは「誰が何をするか」に絞ります。
| 段階 | 弁護士がすること | 自分がすること |
|---|---|---|
| 1 面談・委任契約 | 借金・収入・生活の状況を聞き、方針と不利益、費用を説明する | 借入先の一覧と家計の状況を伝え、契約書と費用の書面を受け取る |
| 2 受任通知 | 各業者に、依頼を受けたことを書面で知らせる | 業者に直接返済しない。業者から連絡が来たら弁護士に伝える |
| 3 取引履歴の取り寄せ | 業者に、借入れと返済の記録を出してもらう | 契約書・利用明細が手元にあれば渡す |
| 4 引き直し計算 | 利息制限法の上限の利率で計算し直し、本当の残高を出す | 結果の説明を受け、分からない点を聞く |
| 5 和解案の交渉 | 返済の額・回数を業者と話し合う | 毎月いくらなら返せるかを伝え、積立を続ける |
| 6 和解の成立 | 和解の書面を交わし、その写しを本人に渡す | 和解の内容(月の額・回数・始まる月)を確かめる |
| 7 返済の開始 | 送金の代行を引き受けた場合は、代わりに送金する | 決まった日に、決まった額を払い続ける |
依頼する日まで:面談と委任契約で確かめること
弁護士の任意整理には、日本弁護士連合会(日弁連)の「債務整理事件処理の規律を定める規程」が当てはまります。規程は、受任する予定の弁護士が自ら本人と面談して、借金の内容、本人と家族の資産・収入・生活費、不動産があればその扱いの希望、手続きへの意向を聞くことを求めています(面談が難しい特段の事情があるときは、その事情がやんだ後すみやかに面談すればよいとされています)。
面談の後、弁護士は方針と見通し、費用、そして予想される不利益を説明することになっています。規程が例に挙げる不利益は、信用情報機関に情報が登録されて借入れなどに支障が出るおそれ、持っている財産を失う可能性などです。受任した後は、担当する弁護士の氏名と事務所の所在地をすみやかに本人に示すことも決められています。
面談の場で確かめておきたいのは、次の点です。
- 担当する弁護士は誰か(事務員ではなく、弁護士本人と話したか)
- どの借入先を任意整理の対象にするか(保証人がいる借金・車のローンなどを外すか)
- 費用の総額と、支払いの方法(積立の月額)
- 信用情報への登録など、自分の場合に予想される不利益
- 連絡の方法(電話・メール・郵便)と、進み具合の知らせ方
弁護士の名前は、日弁連の「弁護士検索」で、登録されている弁護士の基本情報として確かめられます。弁護士に頼むことで何を任せられるかの全体は、債務整理を弁護士に頼むと何をしてくれるかでも説明しています。
受任通知から和解案まで:弁護士がすること
委任契約を結ぶと、弁護士は各業者に受任通知を送ります。日弁連の規程も、任意整理の基本の事務として「受任したことを通知し、取引履歴の開示を求めること」を挙げ、そこには本人や家族、保証人への請求を控えるよう求めることも含まれています。
取引履歴は借入れと返済の記録で、貸金業法19条の2により、借りた本人や代理の弁護士は業者に閲覧や写しを求められ、業者は原則断れません。これを利息制限法の上限の利率(元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)で計算し直すのが引き直し計算で、ここで残高が決まります。もともと上限以下の利率の借入れでは残高が減らないこともあります。計算の方法は過払い金の計算方法|取引履歴から引き直し計算する手順で扱っています。
計算で残高が決まると、弁護士は将来の収入から返す前提で、毎月の額と回数を業者と話し合います。日司連の説明では、任意整理の分割はおよそ3年程度の和解が多いとされています。将来の利息や遅延損害金をどう扱うかも交渉の中身になるので、気になる人は任意整理で延滞損害金と将来利息はどうなるかを読んでおくと、説明が理解しやすくなります。
弁護士にしか頼めない場面:司法書士との分かれ目
任意整理は認定司法書士にも頼めますが、次の場面では弁護士に頼むことになります。依頼先を決める前に、自分の借入に当てはまるかを見ておくと、頼み直しを避けられます。
| 場面 | 弁護士 | 認定司法書士 |
|---|---|---|
| 1社の借金が140万円を超える | 金額に関係なく交渉を代理できる | 個別の債権の価額が140万円を超える会社の和解は代理できない(最高裁平成28年6月27日判決) |
| 業者から訴えられた | 裁判所の種類や金額に制限なく代理人になれる | 簡易裁判所で扱う140万円以下の範囲に限られる(司法書士法3条1項6号) |
| 任意整理から個人再生・自己破産へ切り替える | 申立ての代理人として手続きに出られる | 裁判所に出す書類の作成が中心で、申立ての代理人にはなれない |
司法書士に頼める範囲の詳しい数え方は任意整理は司法書士に頼める?1社140万円の線と確かめ方にあります。面談では、1社ごとの残高の一覧を見せたうえで、「1社でも140万円を超えそうな会社はあるか」「返済が苦しいときは他の手続きに切り替えられるか」を聞いておくと、後から頼み直す手間が減ります。
和解までの間に自分がすること
業者とのやり取りを任せた後も、依頼者が動かないと手続きは止まってしまいます。和解までの間に続けることを、チェックリストにします。
- 毎月の積立を、決めた日に入れる(遅れそうなら先に連絡する)
- 弁護士からの電話・メール・郵便に、数日以内に返事をする
- 業者から電話や郵便が届いたら、開けた内容を弁護士に伝える
- 裁判所から書類が届いたら、その日のうちに弁護士に知らせる
- 新しい借入れやカードの利用をしない
- 引っ越し・転職・収入の変化があれば、すぐ弁護士に伝える
- 申告し忘れていた借入先に気づいたら、すぐ弁護士に伝える
新しい借入れをしない理由は、手続きの前提が崩れるからです。毎月いくら返せるかをもとに和解案を作っているので、借金が増えれば計画が成り立ちません。くわしくは任意整理中に新たな借り入れをした場合に起きることにまとめています。連絡がつかない状態が続くと辞任につながることもあります。
業者から直接電話が来たときは、自分で交渉しようとせず、次のように伝えて切ってかまいません。
文例(業者からの電話):「その件は○○法律事務所の○○弁護士に依頼しています。お話は弁護士にお願いします。」
和解が成立した後:返済の始まり方
和解がまとまると、業者との間で和解の書面が交わされます。日弁連の規程は、和解契約書などの手続きの結果を示す書面を受け取ったときは、その原本か写しを遅れずに本人に渡すことを弁護士に求めています。受け取ったら、毎月の額、回数、最初の支払日、遅れたときの扱い(一括で請求される条件など)を確かめましょう。
返済は、自分で各業者に振り込む方法と、弁護士に送金を代行してもらう方法があります。代行の手数料は、日弁連の規程の施行規則で、1回の送金・1社あたり、振込の実費を含めて1,000円までとされています。社数が多いほど手数料も増えるので、自分で振り込めるなら使わない選択もできます。和解後に返済が苦しくなったときの考え方は、任意整理の返済が払えないときの再和解で扱っています。
依頼する事務所を選ぶなら、選ぶときは「受任する弁護士本人と面談できるか」「費用の総額を書面で出してもらえるか」「進み具合をどう知らせてもらえるか」を確かめてください。費用を一度に払えない場合は、前の記事の任意整理の費用が払えないときの分割払いと法テラスの立替を、司法書士にも頼めるかを知りたい場合は、次の記事の任意整理を司法書士に頼むときの1社140万円の線を読んでください。
よくある質問
Q. 任意整理を弁護士に頼んだら、業者からの電話はいつ止まりますか?
止まる根拠は、弁護士が送る受任通知です。貸金業法21条1項9号により、受任通知で直接の請求をしないよう求められた貸金業者は、なお電話や訪問で返済を求めることが禁じられます。通知が業者に届くまでの間や、貸金業者ではない相手からの連絡は残ることがあるので、電話が来たら依頼先の弁護士に伝えてください。
Q. 依頼した後に、新しく借入先が見つかったらどうすればよいですか?
気づいた時点で、すぐ弁護士に伝えてください。届け出ていない借入先には受任通知が送られないので、その会社からの請求は続きます。日弁連の規程は、債権者の数が申告より増えたときを着手金を追加できる例に挙げているので、費用が変わるかも合わせて聞いておきましょう。
Q. 和解の内容に納得できないときは、断れますか?
和解は本人の代理として結ぶものなので、和解案を受け入れるかは最終的に本人が決めます。返済の額が家計に合わない、対象にする会社を変えたいといった希望は、和解の前に弁護士へ伝えてください。日弁連の規程は、受任の際に方針や見通しを説明することを弁護士に求めているので、説明と違う点があれば理由を聞いてかまいません。
出典・参考にした公的な情報
- 債務整理事件処理の規律を定める規程(会規第93号)(日本弁護士連合会)
- 債務整理事件処理の規律を定める規程施行規則(規則第145号)(日本弁護士連合会)
- 貸金業法 第19条の2・第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 利息制限法 第1条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 「多重債務」に陥り(相談事例)(日本司法書士会連合会)
- 「多額の借金」返済限度を超えた(相談事例)(日本司法書士会連合会)
- 弁護士検索(日本弁護士連合会)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 最高裁判所 平成28年6月27日 第一小法廷判決(認定司法書士の代理の範囲)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。