任意整理に応じない業者はある?和解できないときの次の手
あります。任意整理は、弁護士・認定司法書士が借入先と話し合って返し方を決め直す手続きで、業者には和解に応じる義務がありません。ただ、応じてもらえなくても行き止まりではありません。条件を見直して交渉を続ける、その会社だけ外す、特定調停・個人再生・自己破産に切り替えるといった次の手があり、どれを選ぶかは「業者の同意が要る手続きか」と「家計がどこまで返せるか」で決まります。
任意整理に応じない業者はある|和解は義務ではない
民法695条は、和解を「当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約する」ものと定めています。任意整理の和解もこの契約の一つで、相手が譲歩しなければ成り立ちません。日本弁護士連合会の規程が任意整理を「裁判外で債権者と交渉をして処理する事件」と定めているとおり、裁判所が条件を決めてくれる手続きではないのです。
話がまとまらないときは、次のような点で条件が折り合っていません。日本司法書士会連合会の指針の解説は、安易に将来利息や遅延損害金を付ける和解を、依頼者の利益を損なう処理の例に挙げており、依頼先もこの2点は簡単には譲れません。
| 折り合わない点 | 中身 | 本人が考えること |
|---|---|---|
| 分割の回数 | 業者が短い回数を求め、月の返済額が上がる | 月にいくらまで増やせるか |
| 将来の利息 | 和解後の利息を付けるかどうか | 利息付きでも返せるか、総額はいくらか |
| 和解までの遅延損害金 | 返済を止めていた間の損害金を足すか | 一括で足される額はいくらか |
| 引き直し計算の方法 | 取引の数え方で残高が変わる | 依頼先の計算と業者の計算の差 |
どの会社がどう応じるかは、取引の内容や時期で変わります。このサイトでは会社ごとの傾向は扱いません。依頼先に「この会社との交渉で予想される条件」を面談の時点で聞いておくのが確かです。遅延損害金と将来利息の扱いは任意整理で延滞損害金と将来利息はどうなるかで詳しく扱っています。
和解できないときの次の手|分かれ道で整理
応じない会社が出たときに残る道を、業者の同意が要るかどうかで並べます。
- 月の返済額を増やせる → 条件を見直して交渉を続けてもらう
- その会社だけ契約どおり返せる → その会社を外し、ほかの会社は任意整理のまま
- 裁判所の場で話し合いたい → 特定調停(簡易裁判所。合意は強制されない)
- 収入が続き、借金を大きく減らす必要がある → 個人再生(業者一社の反対だけでは決まらない)
- 返せる見込みがない → 自己破産(業者の同意は要件ではない)
| 手続き | 業者の同意 | 対象 | 決める人 |
|---|---|---|---|
| 任意整理 | 一社ずつ要る | 選んだ会社 | 当事者の合意 |
| 特定調停 | 原則として要る | 相手方にした会社 | 合意。裁判所が調停に代わる決定をすることもある |
| 個人再生(小規模個人再生) | 反対が一定数を超えなければよい | すべての債権者 | 裁判所 |
| 個人再生(給与所得者等再生) | 決議はない | すべての債権者 | 裁判所 |
| 自己破産 | 要らない | すべての債権者 | 裁判所 |
特定調停は、簡易裁判所の調停委員会が間に入って返し方を話し合う手続きです。合意の見込みがなければ不成立で終わりますが、裁判所が「調停に代わる決定」をすることもあり(特定調停法18条・20条、民事調停法17条)、その内容は経済的再生に役立つ公正・妥当なものでなければならないとされています(特定調停法17条2項)。成立した調停調書は確定判決と同じ効力を持つので、決めた返済を怠ると差押えを受けうる点が任意整理との違いです。流れは債務整理の特定調停とはで確かめてください。
個人再生では、小規模個人再生でも、反対の回答が議決権者の半数に満たず、かつ議決権の額の2分の1を超えなければ可決とみなされます(民事再生法230条6項)。給与所得者等再生には決議がなく、裁判所が債権者の意見を聴いたうえで認可するかを決めます(240条・241条)。対象はすべての債権者で、一社だけを選ぶことはできません。反対する業者がいる場合の考え方は個人再生に反対する業者がいたら、任意整理との比べ方は任意整理と個人再生の違いにあります。
自己破産では、債権者は免責について意見を述べられますが(破産法251条)、免責するかは裁判所が決めます(252条)。違いは任意整理と自己破産の違いで比べられます。
応じない業者から訴えられたとき
受任通知で直接の請求をしないよう求められたのに、貸金業者がなお電話や訪問で返済を求めることは禁じられていますが(貸金業法21条1項9号)、裁判を起こすことまで止める条文ではありません。和解できない会社が、訴えや支払督促で請求してくることはありえます。
- 支払督促が届いた:送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てないと、仮執行の宣言がされることがあります(民事訴訟法387条・391条)。異議を出すと通常の裁判に移ります。くわしくは支払督促が届いたときの異議申立ての期限へ。
- 訴状が届いた:答弁書を出さずに最初の期日に欠席すると、請求どおりの判決が出ることがある、と裁判所の簡易裁判所Q&Aは説明しています。簡易裁判所では、被告が争わない場合に、裁判所が5年を超えない範囲で分割払いを定めて支払を命じる決定(和解に代わる決定)の制度もあります(民事訴訟法275条の2)。決定をするかは裁判所の判断です。
- 判決や調書で確定した後:払わなければ給料などの差押えに進みえます。流れは任意整理中の給料差し押さえにまとめています。
裁判所からの書類が届いたら、その日のうちに依頼先へ連絡します。訴訟への対応が委任の範囲に入っているかは事務所ごとに違い、日弁連の規程も、債権者からの請求訴訟に応じて代理人になるときは着手金の追加を認めています。依頼先に伝えることは債務整理中に訴えられたらで確かめてください。
応じないと言われたときに本人がすること
依頼先から「この会社は条件が合わない」と連絡が来たら、次の順で確かめます。
- どの点で折り合わないのか(回数・利息・遅延損害金・計算の方法)を聞く。
- 家計表を見直し、月に上乗せできる額を出す。
- その会社を外した場合と、手続きを切り替えた場合の、月の返済額と費用を比べてもらう。
- ほかの会社との和解をそのまま進めるかを決める。
- 裁判所からの書類(特別送達の封筒)が届いたら、開けて期限を確かめ、すぐ依頼先に送る。
依頼先への聞き方の例:「C社が和解に応じないと聞きました。折り合わないのは回数ですか、利息ですか。月にあと5,000円なら増やせます。C社を外した場合と、特定調停や個人再生に切り替えた場合で、毎月の返済額と追加の費用がどう変わるかを教えてください。」
依頼せずに自分で業者に条件を持ちかける方法と限界は借金の減額交渉は自分でできる?任意整理を本人が進める流れで確かめられます。
和解した後に返済が苦しくなったときの話し合い直し(再和解)は、任意整理の再和解とはで扱います。一部の会社だけを対象にする考え方は、前の記事の任意整理は一社だけでもできるか、カード会社のリボ払いの扱いは、次の記事のリボ払いは任意整理できるかで続けて読めます。
よくある質問
Q. 業者が任意整理を断ることは許されているのですか?
任意整理の和解は、双方が譲り合って結ぶ契約です。業者に和解を義務づける法律はないので、断られることも、条件が合わずに話がまとまらないこともあります。一社の同意に左右されないのは、裁判所が決める個人再生と自己破産です。ただし小規模個人再生は、反対する債権者が半数以上、または債権額の2分の1を超えると進められません。
Q. 一社が応じないと、ほかの会社との和解もやり直しになりますか?
和解は一社ずつ結ぶので、ほかの会社との和解はそのまま残ります。ただ、応じない会社への返済が契約どおりに残ると、家計の計算が変わります。全体で返していけるかを依頼先と計算し直し、回らないなら手続きそのものを見直します。
Q. 応じない業者だけを特定調停にすることはできますか?
特定調停は、相手方にする債権者を決めて、その住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てる手続きです。ほかの会社は任意整理のままにして、応じない会社だけを相手方にする形もとれます。調停でも合意が強制されるわけではない点は、任意整理と同じです。
出典・参考にした公的な情報
- 民法(第695条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(第7条・第17条・第18条・第20条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 裁判手続 簡易裁判所の民事事件Q&A(特定調停・訴訟の相手方になった場合)(裁判所)
- 民事調停(裁判所)
- 民事再生法(第221条・第230条・第237条・第240条・第241条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法(第251条・第252条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事訴訟法(第275条の2・第387条・第391条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 貸金業法(第21条)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 債務整理事件処理の規律を定める規程(会規第93号)(日本弁護士連合会)
- 債務整理事件の処理に関する指針の解説(日本司法書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。