うつ病で借金が返せないときの債務整理|体調に合わせた進め方
うつ病で働けず、借金を返せないときは、債務整理を「体調への負担が少ない順」に考えます。弁護士・司法書士に依頼すれば、貸金業者への対応は依頼先に任せられ、業者からの直接の督促が止まります(貸金業法21条1項9号)。そのうえで、収入が途絶える間の生活費を傷病手当金などで確保し、手続きは体調の波に合わせて進めます。つらくて死にたい気持ちがあるときは、借金の手続きより先に、24時間つながる電話相談(よりそいホットライン、#いのちSOS など)があります。窓口は借金で死にたいと思ったとき|24時間つながる相談先と最初の一歩にまとめています。
体調がつらいときに、最初にすること
- 督促への対応を、一人で抱えない:業者からの電話や手紙に自分で返事をするのが負担のときは、弁護士・司法書士に処理を委託して書面で知らせると、貸金業者は正当な理由なく債務者に直接弁済を求められなくなります。止まる範囲は債務整理の受任通知とは?督促が止まる仕組みと止まらない支払いで確かめてください。
- 主治医に、お金の不安を伝える:休職や療養の見通しは、傷病手当金などの手続きと、返済計画の立て方の両方に関わります。診察で話しにくいときは、メモにして渡す方法もあります。
- 相談は、短く一度で済むように準備する:借入先、残高、月の返済額、収入の見込みを紙1枚に書くと、面談の時間が短くなります。持ち物のチェック表は債務整理の無料相談を使うコツ|聞くことと持ち物のチェック表にあります。
判断を急がないことも大切です。差押えや裁判の書類が届いている場合を除けば、体調が少し戻ってから決めても間に合うことがあります。書類が届いているかどうかだけは、最初に確かめてください。
手続きごとの、体調への負担の違い
手続きによって、本人がすることの量が違います。表で比べます。
| 手続き | 本人がすること | 収入の条件 | 体調が悪いときの注意点 |
|---|---|---|---|
| 任意整理 | 依頼先との面談、書類集め。裁判所には行かない | 和解後の毎月の返済が続けられる収入が必要 | 和解後に返済が滞ると、再度の見直しが必要になる |
| 個人再生 | 裁判所に出す書類の準備。原則3年(最長5年)の返済 | 将来も継続して収入を得る見込みが要件(民事再生法221条1項) | 休職中や無職の間に使えるかは、収入の見込みしだい |
| 自己破産 | 裁判所に出す書類の準備、財産や事情の説明 | 支払不能であること(破産法15条)。収入の下限は条文にない | 管財事件では管財人への説明義務がある(破産法40条)。同時廃止では債権者集会は開かれない |
| 特定調停 | 簡易裁判所に自分で申し立て、期日に出向く | 調停で決めた返済を続けられる収入が必要 | 申立てから調停の期日までを本人が進める負担が大きい |
読み方を二つ挙げます。
- 返済を続けられる見通しが立たないと、任意整理や個人再生は選びにくい:どちらも、毎月の返済が数年続く手続きです。うつ病で収入がいつ戻るか分からないときは、返済を続ける手続きより、自己破産を含めて検討することになる場合があります。
- 裁判所を使う手続きでも、本人の負担を減らす余地がある:弁護士・司法書士に依頼すると、書類の作成や裁判所とのやり取りを任せられます。同時廃止になる自己破産は、債権者集会が開かれないと裁判所が案内しています。どちらになるかは裁判所が判断します(破産法216条)。
手続きの違いを詳しく知りたいときは債務整理の種類を比較|任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の違いを、同時廃止と管財の分かれ目は自己破産の同時廃止と管財事件の違い|分かれ目と費用・期間を読んでください。
収入が途絶える間の生活費を確保する
債務整理を考える間も、生活費は続きます。次の制度は、うつ病で働けない人が確かめる価値があります。
傷病手当金(会社員などの健康保険):業務外の病気やけがの療養のために仕事に就けないとき、連続する3日間の待期を含めて4日以上休むと、4日目から支給されます(健康保険法99条)。1日の額は、直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2です。支給期間は、支給を始めた日から通算1年6か月です。給与が支払われている間は支給されず、給与が傷病手当金より少ないときは差額が出ます。退職後も、退職日の前日まで1年以上被保険者だったなど条件を満たせば継続して受けられます(同法104条)。傷病手当金を受ける権利は、差し押さえられません(同法61条)。国民健康保険には、会社員と同じ傷病手当金の仕組みが原則ないので、自営業の人は市区町村の窓口で確かめてください。
障害年金:障害基礎年金は、初診日に国民年金の加入期間中であること、障害認定日に1級か2級の状態であること、保険料の納付要件を満たすことの3つがそろったときに支給されます。納付要件は、初診日の前日に、初診日の前々月までの被保険者期間の3分の2以上が納付済みか免除であることが原則で、初診日が令和18年3月末日までで65歳未満なら、直近1年間に未納がなければよいという特例もあります。初診日に会社員など厚生年金の加入者だった人は、障害厚生年金(3級もあります)の対象にもなります。うつ病で対象になるかは、障害認定基準と主治医の診断で決まるため、年金事務所と主治医に相談します。
自立支援医療(精神通院医療):精神疾患で通院による精神医療を継続的に必要とする人の、通院の医療費の自己負担を軽くする制度です。申請の方法は、お住まいの自治体と主治医に聞いてください。
生活困窮者自立支援制度:市区町村の自立相談支援機関で、家計の見直し(家計改善支援)や、家賃の補助(住居確保給付金)などを相談できます。内容は生活費が足りないときの公的な相談先|家計改善支援と住居確保給付金にあります。病気で働けないときの給付の全体像は病気で借金が返せないとき|使える給付と返済の相談の仕方でまとめています。
連絡方法と家族の手伝いを、事務所に頼む
体調に合わせた進め方は、依頼先に頼んで初めて決まります。頼めることの例です。
- 連絡をメールやメッセージにしてもらう。電話は、体調が安定している時間帯に絞ってもらう
- 面談を短く分け、1回で決めることを減らしてもらう
- オンライン面談にしてもらう(面談が求められる理由は債務整理はオンライン面談でできる?面談が求められる理由と確かめ方で説明しています)
- 書類集めを家族に手伝ってもらい、通帳や督促状、契約書をまとめてもらう
- 面談に家族が同席してよいか、家族を連絡役にできるかを確かめる
契約や手続きの意思は本人に確かめられるのが通常なので、家族だけで依頼まで進められるかは、事務所ごとに確認します。
文例(事務所へ):「うつ病で通院していて、長い電話や面談がつらい日があります。連絡はなるべくメールでお願いできますか。面談は短く分けたり、オンラインにしたりできるかも教えてください。書類集めは家族に手伝ってもらう予定です。」
この文を相談の申込みの時点で送っておくと、受け入れてもらえる事務所かを早めに見分けられます。申込み後に不安を感じたら、別の事務所に相談し直してかまいません。
心の相談先
借金とうつ病が重なると、考えがまとまりにくく、眠れない日が続くことがあります。厚生労働省の「まもろうよ こころ」には、次のような相談先が並んでいます。
- 主治医、通院先の相談員
- 保健所、精神保健福祉センター
- こころの健康相談統一ダイヤル
- よりそいホットライン、#いのちSOS(24時間の電話相談)
電話番号と受付時間は、変わることがあるため、借金で死にたいと思ったとき|24時間つながる相談先と最初の一歩と借金で鬱になりそうなとき|眠れない・つらいときの心の相談先に最新の確認日つきでまとめています。借金の公的な相談窓口は借金の相談窓口はどこ?公的な窓口の番号・受付時間と選び方です。
前の記事の債務整理中に訴えられたら?裁判になる場合と事務所に伝えることは、裁判所から書類が届いた段階を扱い、次の個人間の借金も債務整理の対象?家族や友人への借金の扱いは、家族や友人への借金の扱いを扱います。
よくある質問
Q. うつ病で働けなくても、債務整理はできますか?
できます。自己破産の要件は支払不能であることで、収入が少なくても申し立てられます。一方、個人再生は将来も継続して収入を得る見込みが要件なので、休職中や無職の間は使えるか個別の確認が要ります。体調の見通しを含めて、弁護士・司法書士に伝えて選びます。
Q. 体調が悪くて面談や電話ができないとき、どうすればよいですか?
依頼先にその事情を伝えて、連絡をメールやメッセージに寄せられないか、面談を短く分けられないか、オンライン面談にできないかを頼みます。対応は事務所ごとに違うので、相談の申込みの時点で聞いておくと、後から困りません。
Q. 診断書は債務整理に必要ですか?
債務整理の手続きそのものは、診断書の提出を条文の要件にしていません。傷病手当金や障害年金の申請、休職の手続きでは、医師の証明が求められます。手続きの中で必要になるかは、依頼先と、申立先の裁判所の案内で確かめてください。
出典・参考にした公的な情報
- 貸金業法 第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民事再生法 第221条・第229条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 破産法 第40条・第216条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 健康保険法 第61条・第99条・第104条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 傷病手当金(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
- 障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
- 自立支援医療制度の概要(厚生労働省)
- 生活困窮者自立支援制度(厚生労働省)
- まもろうよ こころ(こころの相談窓口)(厚生労働省)
- 民事事件Q&A(破産の同時廃止・債権者集会)(裁判所)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。